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DigitalIllustration Lumania War Record Novel オリジナルノベル SF小説 ファンタジーノベル ルマニア戦記 ワードプレス

ルマニア○記/Lumania W○× Record #024

新キャラ登場!

新メカも登場!!



 #024

  Part1


 朝から快晴。

 打ち寄せる波もいたって穏やか。

 言うなれば比較的大型の軍用艦だから揺れなどさして気になることはないが、たまには外に出て日光浴くらいしたいものだ。

 なのに周りを金属の分厚い装甲板で囲まれた薄暗いアーマー格納庫の中で、息をつまらせながら待機しているのに若干の嫌気がさす若いネコ族の女子パイロットだった。

 油臭く湿った空気は肺に取り入れるのも億劫だ。

 どうせならもうみずからのアーマーに乗り込んでしまおうかと待機所からデッキに顔を出す。

 外に出るとなおさらに油と金属の匂いが色濃くなるのに眉をしかめながら、細くて長いキャットウォークを早足で音も立てずにするすると渡っていく。

「……!」

 見渡す道の途中で見知ったでかい影が立ちはだかるのが薄暗闇にもわかるが、邪魔だなと思いながらそのすぐ手前までつけた。

 ビクともしない影はこちらに見向きもしない。

 これをじっとその横顔を見上げてしばし無言でみつめるネコ族の女子だ。

 あいにくであちらは微動だにしないのだが……。

 相手はクマ族のこちらもまだ若い男で、それがのんきなさまでいつまでも突っ立ているのにやがてかすかなため息を漏らす。

 大抵が性格のおおざっぱなクマ族だからなのか、生まれつき鈍感なのか、仕方もなしにこちらから声をかけた。

 欲を言えばさっさと気が付いて道を開けてほしかったのだが。

 もはやいつものことながら。

「カノンさん。道、開けてくれない? こんな細い通路でそんなとこに突っ立ってられたら、邪魔でどうにもならんのよ。ね?」

 問うてもまるで無関心なさまに、相手がうすらとぼけているわけではなくてご機嫌に音楽か何かを聴いているのだと気づく。

 良く耳を澄ましてみればその口元からいささか調子っぱずれな鼻歌が聞こえるし、左右の耳もイヤホンで塞がれていた。

 こいつなめてるのか?

 内心でイラッとしながら、ちょんちょんと相手の肘のあたりを指先で小突く女の子だ。

 これにようやく相手に気が付いたらしい大柄なクマ族、それもかなりの肥満の部類に入るだろう太っちょのアーマーパイロットの青年は、そこではじめてちょっと意外そうな顔でこのネコ族のパイロットスーツを見下ろす。

 それでどうやらやっと認識してくれたものらしく。

 やっぱなめとるやん!

 見上げるネコ族の目つきが険しくなる。

「……おお、イワック、いたのか? 背が小さいし普段から気配がないからわからんかったのじゃ。で、なにをしておるんじゃ? そんなところにぼさっと突っ立って??」

 でかい大男が男にしてはちょっとクセのある高めの声でかなりのんきなさまでぬかしてくれたセリフに、またため息ついてだらだらと文句を垂れるネコ族のイワックだ。

「はあ、それはこっちのセリフなんよね! もう準待機から戦闘待機に変わっているんだから、わたしらパイロットはさっさと持ち場につかなきゃならんのよ。そもそもカノンさんのアーマーはこの下の一番デッキにあるんだから、そっちの通路を使えばいいってわたしいつも言ってるはずよね? あっちのほうが道幅も広いし!」

 責めるような目つきと言葉つきできつめに言ってやるが、相手の神経ことさら鈍感なクマ族はまるでひとごとみたいにえへらとかわしてくれる。まるで気にしたふうがないのが丸わかりだ。

 ネコ族のイライラゲージがまた一つ上がった。

「おお、悪いがこの下の通路はメンテのキョカスが使うからほぼ一方通行なんじゃ。あいつはおれよりもでかくて太っちょるから、これと鉢合わせたら引き返す意外に道がないんじゃ。ちょっと遠回りだけど確実なルートだから、それにこの高いところからの景色がおれはとっても好きなんじゃあ!」

「はあ? おかげでカノンさんの専用道になっとるがね! わたしが迷惑してるんよ、何度言ったらわかってくれるの? あと景色って、こんな薄暗くて殺風景なアーマーデッキじゃ、見るものなんてなんにもありゃしないがね。ほんとにあきれるくらいにのんきだよね? そんなんでこの先一緒に戦っていけるのか、ほんとに不安になってくるよっ……!」

 思わず嘆いてしまうネコ族の女子に、とことんマイペースのクマ族どんまい男子はどんとみずからの胸を叩いて大口叩く。

「ははん。心配ないんじゃ、イワックは心配性が過ぎる。ネコ族はほんに小心者ばかりじゃの! おれのようにゆったりかまえていないと、何かにつけて神経をすり減らして戦場では生き残っていけないのじゃむしろ。心配せんでもおまえの背中はこのおれがきっちりと守ってやるのじゃあ!」

「口先だけで終わる時があるからこわいんよ。ああもう、後衛よりも前衛のほうがより危険にさらされるし、致命打も受けやすいのもほんとに理解できてるんかね? このわたしが敵にやられて落とされちゃったら、次はカノンさんの番なんだよ?」

「その時はその時じゃあ! 地獄でまた会おうなんじゃ!」

「ああ、もうほんとに……! あのさ、せめてあの世にしてよ。天国とか贅沢言わないから! はあっ、もういいや、さっさと戦闘配置につこうよ。どいて。邪魔だから。はじめに出るのはでかくて足がのろいカノンさんのアーマーでしょ?」

 これ以上やりあったら頭の回路がショートしてしまうと内心のイライラを必死に押さえて不毛な立ち話を終わらせるのに、相手ものんきなさまで鷹揚にうなずいてくれる。

「おう。おまえの出撃ルートはきっちりとこのおれが確保しておいてやるんじゃ。ほんに腕が鳴るのう! バリバリの新型機を拝領して今日がようやくの実戦なんじゃから、このおれたちは。言ったらコンビでそろって初陣なんじゃな! 記念すべき?」

「初陣……なのかな? あんまり実感がないけど、慣れない実験機の演習死ぬほどやってきたから! それじゃとにかく頑張ろうね。あたしの背中、カノンさんに任せるよ。間違えて撃ったら許さないからね? 大事な時にいつもテンパるんだからさ」

「おわわ、化け猫のたたりは勘弁ねがうんじゃあ! イワックは本当に化けて出て来そうだからこわいんじゃ。でもその時はおれも死んでる可能性が高いから、やっぱり地獄で会うんじゃな? わざわざ化けて出なくてもばっちし会えるんじゃ!」

「だから地獄はやめようよ。あと縁起でも無いこと言わないで。わたしこんなところでさらさら死ぬ気ないし。もういいからとにかくがんばろ」

 しまいには肩を落として微妙な顔つきの相棒に、片や明るい笑顔でおう!と応ずるクマ族のカノンだ。それがくるりと大きな背中を向けてのっしのっしと通路を揺らして歩いて行く。

 でかい影が隠していたじぶんの機体へのタラップをようやくこの視界の中に取り戻して、そちらに向かいながら相棒のクマ族の背中に言葉をかけるネコ族だった。

「カノンさん! 耳のイヤホンちゃんと取りなよ! それ付けたまんまじゃ艦長に怒られるからね? 軍の規則で私物の持ち込みは禁止になってるでしょうに、アーマー内にはさ!」

 おう!と片腕上げて気楽に応ずる背中がそのまま暗闇に溶けるのを見送って、タラップをタッタと早足で降りるとその先でキャノピーの大きく開かれたみずからの機体にただちに身を滑り込ませるイワックだ。

 後からバタバタと忙しい足音が聞こえるのに、今頃になってメカニックたちが駆けつけてきたのかとこれを横目で見ながら、さっさとコクピットのキャノピーを閉じた。

 今の今までのんきにタバコだとかを吸っていたのだろうから、ヤニ臭い匂いをかがされるのはゴメンである。

 どうして男ってこんなんばっかりなんだろうと恨み言こぼしながら、出撃の時を待つネコ族の女子パイロットだった。


 Part2


 耳にガンガンと響くかまびすしいサイレンが、広いデッキ内に延々とこだまする。

 だが外部から分厚い装甲で隔離密閉されたアーマーのコクピットの中は、穏やかな静けさに包まれていた。

 ようやく気を落ち着けてみずからのパイロットシートに身をゆだねるネコ族の女子パイロットだ。

 そのイワックは、今は澄ました顔でただ目の前の大画面のモニターディスプレイを見つめていた。

 よくよく耳を澄ませばこのコクピットのキャノピー越しになにやらガヤガヤとした気配や声らしきも聞こえてきたが、もはや何もないものとして完全に無視する。

 どうせろくなものでもないのだろうから。

 良く見知った間柄のメカニックマンたちが無駄な気勢を吐いているだけに違いない。

 そういわゆる体育会系男子のノリで。

 正直、付き合ってやる気分じゃなかった。

 折しもそこで短い警告音が鳴って、アーマーの出撃シークエンスが開始されたことを知らされる彼女は、しごく落ち着いた心もちでディスプレイに映し出される景色のみを眺める。

 軍用艦としてはとかく特徴的なでっぷりとしたフォルムの中規模航空母艦は、このアーマー射出カタパルトが艦の中央にひとつだけ据えられており、まずはこの遮蔽されたアーマー・デッキの先端部分に大きな口がガポリと開いていくのがわかる。

 暗闇に太い光りの束が差し込み、画像を拡大すればその先に青い空と海がまぶしく広がるのがわかるだろう。

 それがつまりはアーマーの出撃時の発射口で、カタパルトはこの内部から外へとジェットコースターのレールのようにまっすぐ長くせり出すのだった。

 それに機体を預けて果ては強力なGを受けながら一瞬にして青空の彼方へとたたき出されるのだが、大気との摩擦抵抗で激震する機体の安定確保や減速なしでの最大戦速機動などはおよそ一朝一夕にできるものではない。

 新型の機体でようやく満足な出撃アプローチができるようになったイワックは、じぶんよりも大型のアーマーで今しもそれに臨もうとする相棒のクマ族の機体を無言で見つめていた。

 じぶんの乗る機体よりも下側のデッキに固定された全体がやけにゴツゴツとしたいびつなカタチのアーマーは、その機体各部の固定ボルトを外されて、まさしくデッキ中央のカタパルト射出台へとそのでかい身柄を移送されていくところである。

 出撃まではおよそ秒読み段階。

 発進コースクリア、機体、カタパルトともにオールグリーンのパイロットランプが表示されるのも横目で確認。

 まずは先行して出撃する同僚に、行ってらっしゃい!と心の中で激励するネコ族の細めた目元がだがわずかに見開かれる。

 直後、すっかり静けさに満ちていたはずコクピットに、その大型機のコクピットからの通信回線が開かれた。

 出撃間際なのに。

 それだから出し抜け耳朶を打つ甲高いハイトーンボイスに思わず面食らうネコ族の女の子だ。

「ああー、こちら、ガマ・ガーエルのカノン! おい、イワック、聞いておるか? なんだか静か過ぎて息が詰まるんじゃあ! ちょっとはしゃべってくれんかのう? でないと出撃をミスってしまうかもしれん、おれはこう見えて繊細な心の持ち主なんじゃ! とってもとってもデリケートなんじゃあ!!」

「はっ? 知らないよ! めちゃくちゃしゃべっとるじゃん! あのね、そんなんじゃ舌噛むよ? いいからさっさと行ってよ、後がつかえているんだからさ!!」

「そういういらちは戦場では孤立して往生するんじゃが! もっと気を楽にして臨まないと、実力の半分もだせんのじゃろう? 気が強くとも緊張しいなんじゃから、おかげで後ろから見てるおれもガチガチにテンパってしまうんじゃ! 射撃精度がだだ下がりなんじゃあ!! たのむ、おれを安心させてほしいのじゃ!」

「ほんとに知らないよ! そんなのカノンさんの勝手な都合じゃん、わたしにどげんしろっちゅうのよ? ああ、もうっ、ここで言い合っても仕方ないんだからさっさと行ってよ! 行って! でないといつまでたってもこのわたしがっ……!」

 出撃前からしょうもない言い争うになってしまう若気の至りの若者たちだった。

 だがすると不意の短い警告音が鳴って、これを仲裁するべくした第三者が忽然と現れる。

 真正面のディスプレイに四角く開いた窓枠にバストアップの大写しで現れた犬族の士官の姿に、ハッと緊張するイワックだ。

 落ち着いた真顔にかすかな笑みを浮かべるベテランの上官はこの戦艦の艦長で、詰まるとこで場を仕切る最高責任者である。

 これまでのやり取りがダダ漏れで筒抜けだったのがわかって、内心でバツが悪い思いに駆られる根が真面目なネコ族の准尉は、これに反射的に利き手で敬礼をしてしまう。

 空いているほうの手でさりげなくパネルを操作してこの見かけ渋い中年イヌ族の隣に同僚の若手パイロットのクマ族を並べてやるが、すると思ったとおりぼけっとしたさまで口が半開きのでぶちん丸メガネの少尉どのだった。

 おい、ちゃんとしろよ、デブ!

 内心でヤジって表面上は落ち着きはらった体裁を取りなす。

 そんなじぶんの内心を見透かしたかのようなかすかな苦笑いを目元と口元に浮かべる艦長のシブおじは、怒るでもなくむしろおどけたふうなやんわりした口調でスピーカーを震わせてくれた。

「……フフッ、ほんとに元気なぼうやたちねぇ? 失敬、ひとりおじょうちゃんもいたものかしら? で、あなたたち、出撃も何もまずは艦長であるこのわたしに挨拶するのがスジなんじゃないの? ブリッジの出撃命令も聞かずに出ていっちゃうつもりなのかしら? この状況もろくすっぽわからないまんま??」

「あっ、いやあ……!」

「ほうれ、だから言ったんじゃあ! 短気は損気じゃって!!」

「言ってないよ! カノンさんは黙ってて!! 艦長、お言葉ですが敵がこちらに向かってくるとの情報を得ての出撃だと聞いております。ならばなるべく迅速に出撃して、これを速やかに迎撃するのが得策なのではないかと考えられますが……!」

 大まじめに思ったことをまんま率直に言ってやるに、モニターの中の渋い中年士官はちょっと意外そうにこれを聞いてくれる。

「あらま、ほんとにいらちなのね? まあいいわ。あなたの言ってることもちろん間違いではないけど、急いてはことを仕損じるとも言うのよね。ふたりともちょっと深呼吸してお聞きなさい」

「はい……?」

 何やらもったいつけた相手の言葉に、きょとんとした目で見上げるネコ族の女子なのだが、対して相棒のクマ族などはすっとぼけたさまで生まれついての天然ぶりを発揮させる。

 ただちに相棒ににらみ付けられた。

「ならおれはもう出てしまってもいいじゃろうかのう? さっきからカタパルトがゴーサインを出しっぱなしなんじゃが?」

「カノンさん! 空気読んでよ! リスタートすればいいじゃんさっ、艦長の話を聞いてからでいいでしょうがっ!?」

「ふふ、まあそんなに大した話じゃないのだけどね。そう、このわたしからあなたたちに言うべきことは、ベストを尽くすこと、決してあきらめないこと、そしてどんな手を使ってでも生き延びることよ。あなたたちの代わりはどこにもいないんだから、ね? ちゃんとここに生きて戻ってこられたなら、それだけで後はもう何も望むことはないわ」

「はい??」

 てっきり迎撃するにあたっての作戦概要や敵アーマーの諸元などが指示されるのかと思いきや、なんだかやけにおっとりとした言いようでぼんやりしたオーダーである。

 これにはじめ目をパチパチとしばたたかせてしまうイワックだった。

 優しいまなざしのおじさんの隣で、同僚のクマ族もぽかんとしたありさまだ。

 言わんとしていることはわかるのだが、あんまり戦場を陣頭指揮する司令官の口から出たとは思えないゆるいお題目である。

「ま、平たく言っちゃえば、テキトーでいいから死なない程度に頑張って、今をどうにか乗り切りなさいってお話よ。戦場は誰しも命がけだけど、実際に命を落とすのは馬鹿らしいってこと。ね、この意味、あなたたちにもわかるでしょ?」

 果ては完全に肩の力の抜けたさまでひょうひょうとぶっちゃけ発言かますそれは大ベテランのイヌ族艦長だ。

 対してちょっと当惑したさまでこの目をひたすら白黒させるネコ族のパイロットだった。

「え? ちょ、なんですかその軍人らしからぬふざけたもの言いは? テキトーって、上官が言ったら一番ダメなワードでしょ! ハザマー艦長はいっつもそうやってちゃらんぽらんだけど、もっとまじめにやってくれないとわたしたちが困りますよっ、遊びで戦争してるわけじゃないがね! だってこどもの遠足とはものがちがうでしょうが!?」

「ま、遠足でひとは殺さないものね? 死ぬこともないし」

 日頃からとかくひょうひょうとしておどけた態度口ぶりがデフォルトの食えないおじさんに思わず噛みつくが、相手はニヒルな笑みで口元をニッとゆがませるばかり。

 カノンが天然発言するのもむなしく響いた。

「いいや、おれはそんなハザマー艦長のゆるいところとっても好きじゃあ、頭ごなしに言われるよりよっぽど腑に落ちるし、元気が湧いてくるんじゃが? 出撃はちゃんと母艦に返ってくるまでが出撃なんじゃ! イワックもそうは思うわんのか?」

「それは遠足のときに校長先生が生徒に向かって言うヤツだよ? ここは戦場なんだから、そんなゆるいノリじゃ乗り越えられるはずないんよ。もういいよ、さっさと行って、カノンさん!」

「おう、いいんじゃが? 何を不機嫌になっとるんじゃ?」

「いいから!」

 プイと横を向いて視線を逸らす同僚の女の子に、きょとんとしたさまでクマ族は艦長のイヌ族と画面越しに目を見合わせる。

 ひどい苦笑いで頭の帽子のツバを目元へと落とす艦長のハザマーは、片方の細めた目だけでふたりを見て意味深な口ぶりだ。

「ほんとにいらちなおじょうちゃんね。でも無理はしないで、欲張らずにやれるだけのことに努めるのよ? 今回はそれで十分。こちらの有効射程ギリギリいっぱいで迎撃機動に専念、決して深追いはしないこと……! ふたりともくれぐれも気をつけてね。それじゃあ、いってらっしゃい!」

「なっ……!?」

 家を出るこどもにおかんがいうことやがね!

 内心でもやもやがイライラに変わる渋い面のイワックに、今しもカタパルトを大空へと走らせる相棒のカノンが追い打ちする。

「よっし! そいじゃあ、カノン、ガマ・ガーエルで出るのじゃ! 頑張って元気に、行って来まあああ~~~すっ!!」

「ああもうっ、すっかり遠足になっとるがね! こっちはすぐ横でメカニックたちがどんちゃん騒ぎしてるし!! まじめなやつがひとりもいないがね!!」

「ふふふ、あなた、そんないらちだとケガするんじゃないの?」

「しません! それじゃあイワック、アマ・ガーエル、カノン機に引き続いて行ってまいります! とっとと出撃するがね!!」

 いつもより短いスパンで出撃する二機のアーマーコンビ。

 これを今はモニターではなく肉眼でブリッジからこの航跡を見やる艦長のハザマーだ。

 苦い笑いはそのままに、ふと視線を落としてふたりに問いかける。通信はとうに切れたままにだ。

「こんな不甲斐ない艦長さんでごめんなさいね。でもね、あなたたちの悪いようにはしないから。約束する。わたしはね、疲れてしまったのよ。あなたたちのような前途ある若者たちが戦場で力尽きていくのを見続けることに……! だから、そう――」

 手元の小型ディスプレイにいくつかの画像を映し出すイヌ族は、そこに虚無的な目線を投じてひそかな決意を吐露した。

「どんなにわずかな希望でも、それが決して許されないことであっても、それに賭けることにしたのよ。わたしはね? この意味のない長い戦いをここで終わらせるために。だから生き延びてちょうだい、今のこの時を、道は必ず、あるはずだから……!」

 静かに手元のディスプレイを閉じるハザマーは、それまでにない険しい視線で部下たちの消えて行った遠い空を見上げる。

 どこまでも晴れ渡る青い空に、刹那、二つのきら星がかすかなまたたきを見せたか?

 若者たちの戦いが今、はじまった――。


 Part3

 

プロット
 カノン、イワック登場。戦艦航空巡洋艦「ガーエル」
メカニック、ネコ族男イットス(相棒はイヌ族男、ハッター)、クマ族?男キョカス、ネコ族?男サーダイ

 臨戦態勢→出撃→海上で会敵(サラ、ニッシー)

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