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DigitalIllustration Lumania War Record Novel オリジナルノベル SF小説 ファンタジーノベル ルマニア戦記

ルマニア○記/Lumania W○× Record #023


#023

  Part1


 翌日、正午過ぎ――。

 第一小隊への出撃命令は、予期せぬタイミングで発令された。

 これと行く当てもなく本国を出航した大型巡洋艦は、今やしてどこにも歓迎されることもなく、ただ虚しく時間を過ごすのみかと思われていたのだが、人気ない砂漠で休めていたその羽根をふたたび大空へと羽ばたかせることになる。

 アーマー隊の緊急出撃で慌ただしくなるハンガー・デッキで、既にみずからの大型の機体のコクピットで戦いの準備につく若いクマ族の隊長だ。

 太いベルトでみずからの身体をがっちりとシートにくくりつけるベアランドは、いつでも出撃ができる臨戦態勢のままでブリッジに通信回線を開く。

「こちら第一小隊隊長、ベアランド。ブリッジのンクス艦長に通信求む! いいかい?」

 はっきりとマイクに向けて言ってやるのに、さしたる間もなくあちらからはやけに渋い老人の声で返事が返ってくる。

「……何だね? ベアランドくん」

 その返事とほぼ同時に目の前の大型ディスプレイに当人の顔がバストアップで映し出された。

 大ベテランの老年のスカンク族の艦長だ。

 それが真顔でこちらを見ている絵面に臆することもない若いクマ族のエースパイロットは、まっすぐに見つめながらもの申す。

「いくらなんでもいきなりすぎるんじゃないのかい? いきなり艦を離陸させた挙げ句、何の説明もないままに出撃だなんて? そもそもでどこに向かうのかも、標的が何なのかも知らされてないんだけど、ぼくたちは?」

 若干の呆れみたいなものがうかがえる表情と声つきで言ってやるに、真顔を少しも崩すこともないモニターの中の上官どのは、しれっとしたさまでまたもや不可解な言葉を返してくれた。

「ああ、それは今現在、検討中だ。おおよそで向かう先は決まっているのだが、もろもろの都合でこれを変更せざる負えない場合もある。パイロット諸君には手間をかけるが、それぞれ状況に合わせて最善の行動をしてほしい……!」

「え?」

 これには思わずきょとんとしてモニターの中のスカンク族をマジマジと見返してしまうクマ族の隊長だが、周囲のスピーカーからもおなじような反応の声が、次次とだだ漏れてきた。

「ほええ、決まっとらんのかい? でもそやったら、隊長、ぼくらどこで誰と戦えばええんですかぁ?」

「アホちゃう? わけわからへんやんけ!」

「ぶううっ! だったらなんでわざわざ離陸したんだぶう?」

 他の隊員たちからのもっともなブーイングに、ブリッジにまで聞こえてなければいいんだけどなと思ったのもつかの間、しっかりとそれについての反応が返ってきた。

 ただしこちらは艦長ではなく、通信士の若いイヌ族のそれだ。

「いやいや、みなさんお言葉ですがね、こちらとしてもこのままでは艦の補給もままならないし、潮時なのは確かなんですよ! 何より……その、アストリオン政府からの正式な要請でありますし、周辺の自治都市群からの強い要請でもあります!」

「え、それって、もうぼくらに用はないからとっとと消え失せてくれって、そういうことなのかい? 昨日の今日で?」

 ちょっと唖然とした隊長のクマ族の言葉に、また別の場所からリアクションが返ってきた。

 こちらはこのデッキフロアのコントロール・ルームから、いいトシのおじさんのクマ族のメカニックのそれだ。

「おいおい、つい先日、どこぞの街に出没した反乱軍の残党のアーマーどもを駆逐してやったのは、このおれたちだろう? 用済みだからって、はい、さよなら!は、あんまりなんじゃないのか? 文句言ってやれよ!」

 これもブリッジにダダ漏れなんじゃないのかと内心で思いながら、この意見自体はこちらにしているのだろうからあっけらかんと返してやる。

「誰に? まあ、でも用がないのはお互いさまなんだから、別にいいんじゃないのかな? こんな大食らいの戦艦、補給のことをマジメに考えたら、もっと資源が豊富で物流のいいどこかの港湾都市あたりにつけるのが、やっぱり妥当だと思えるし……」

 半ばから真顔で考え込むクマ族の隊長さんに、ふたたびブリッジの御大将から渋い調子のセリフが告げられてきた。

「無論、そのつもりではある。ただしこの行く先はかなり限られるのだが……!」

 重たい言葉の続きを、若いブリッジのクルーが引き継いだ。

「ああ、候補地としてはいくつかあるのだが、その最有力であり、この大陸の西岸域で一番大きな港街である、ベリファには直接つけることを拒否されている。そのためこの比較的近隣に所在する、いずれかの港湾を目指すことになる予定なのだが……了解、願えるだろうか、ベアランド少尉どの?」

 艦長や通信士ではない第三者の声に、長らく不在だったこの艦の副艦長どののイヌ族のそれだと気がついて、自然とその口元のあたりが苦くほころびる隊長だった。

 いろんなことを考えてしまう。

「そうか、大陸の西岸域は現政権に反旗をひるがえした新興勢力の本拠地があって、これと紛争が激化中だから、ヘタに刺激したくないんだよね? 確かにこんな大きな軍艦があからさまに出て来たら、敵も身構えるってもので! アストリオンとしても都合が悪いんだ? つまりは決め打ちなのかな、これって?」

 副艦がこれまでどこで何をしていたのか、いろいろと勘ぐってしまうが、そこはあえて聞かずにぼやかしておく。

 そもそも永世中立を謳うこの国がやすやすとこのよそ者のじぶんたちを受け入れたのは、何かしらの裏工作とさまざまな目論見があってのことなのは容易に予測ができた。

 それこそが本来の進撃ルートでは立ち寄ることなどなかったはずの土地なのだ……!

「とりあえずはこの中央大陸の北西方面に向けて、ぼくらはこの艦の護衛としてこれを警戒警護、エスコートすればいいってわけだ。それにつき敵は出るか出ないかわからないとして?」

 ざっくばらんに今回の出撃内容をまとめてやるに、ブリッジから通信士のイヌ族による補足説明がまたぬかりもなく入った。

「ただしですね? このアーマーによる戦闘は、本大陸、えー、つまりはアストリオン領空領土内ではなく、極力この外で、えー、つまるところ領海、できれば公海上でやってほしいとのことであります! えー、えー、できますでしょうか?」

 この顔を見なくてもかなり当惑しているのがわかるビーグル族のどこかうろたえたような言葉に、目がいよいよ丸くなるクマ族のエースパイロットだった。

「え、それ、いくらなんでも注文が過ぎるんじゃないのかい? 公海上って、そこに出るまでに遭遇しちゃったらどうにもならないし、だったらこの砂漠地帯でやり合ったほうが話が早いよ。誰にも迷惑かからないってあたり。敵がこっちの都合に合わせてくれるのなら別だけど?」

 周りのスピーカーがまたもざわめくのを気にかけながら、正面に映るスカンク族の艦長の顔を見やったところ、相変わらず真顔の老人は澄ました顔で言ってのけた。

「この艦の存在自体が迷惑だと認識されている、と言ってしまえば元も子もないのだが、わかるだろう。とにかく本艦は、これより最大戦速でこの大陸の北の公海上まで直進。その後に艦の安全を確保しつつ、受け入れ先の港湾都市に接岸する。以上だ」

「受け入れ先が見つからなかったら?」

「その時は、その時だ。案ずるより産むが易し、とにかくやってみるより他あるまい。諸君らの健闘を祈る」

「あーと、そっちの副艦さんはいったいどんな交渉をアストリオンのお偉いさんがたとやってきたんだい? さすがに、あっ!」

 かなり強引に話しを打ち切ろうとする艦長に思わず食い下がるアーマー隊の隊長だが、あいにくと通信自体が強引に断ち切られてしまった。

 目の前のウィンドウが真っ暗な砂嵐となり、変な間があいて、仕方も無しに周りのスピーカーに問いかけるベアランドだ。

「……てことらしいんだけど、みんなわかったかな? えー、とにかく大急ぎでこの大陸から出て、そこで場合に寄ってはアーマーバトルなんだって! この隊長としては、そんなのいないことを願うばかりだけど……!」

 周りからはなんとなく疲れたような声が届くが、気を取り直してコントロール・ルームに声をかけるベアランドだ。

「ま、てことで、ただちに出撃の準備を頼むよ! 今回は新顔さんが二名ほどまざっているから、そこらへんも気をつけてお願いするね! リドルに、イージュン!!」

 するとコントロール・ルームからはただちに了解の応答と共に、テキパキとしたアーマーの出撃シークエンスへとデッキ・オペレーションが移行される。

 自分の機体が格納されたハンガー・デッキの対面にあるデッキの大型の機体がロックを解除され、まずは出撃態勢へと移るのをはじめ物珍しげに眺めていた隊長だが、やがてムッとあやしげに眉をひそめることとなるのだった。

 喧噪にまみれたデッキがなおさらにやかましい怒号に満たされるのはこの直後のことだ。

 挙げ句、たまぎる悲鳴と罵詈雑言が交錯し……!

 おかげでこの後に続くはず隊長機の出撃は、この予定を大幅にオーバーすることとなる。

 のっけから波乱含みの展開で、クマ族が主力の飛行部隊はその先でまたさらなる波乱に見舞われることとなるのだった。



  Part2


 大型機専用のハンガー・デッキから解放された大型の機体は、そこからゆっくりと中央デッキの中心部である、機体射出チェンバーへと移動、その後に機体各部をしっかりと固定される。

 あとはこの機体が射出されるのを待つのみなのだが、そのアーマーのコクピットシートにがっちりと身体を固定されたまま、額にじっとりと大粒の汗を浮かべるパイロットだ。

 今日が初陣だという若手のクマ族のパイロット、ニッシーは挙動不審なさまでせわしなくその視線をうろつかせながら、やがてひどくうわずった声でデッキのコントロール・ルームへとおそるおそるに問いかけた。

 何故か半泣きだった。

「あ、あのっ、これって、なんか思ってたのとまるで違うんスけど? なんスか、おれのこのアーマー、カタパルトで出撃するんじゃないんですか? なんかすげー大仰なシステムに周りをがっちり固められちまってるんスけど??」 

 ただならぬ危機感を感じているのか、かなり焦ったさまで訴える新人くんに、だが正面のディスプレイにぬっと現れるベテランのクマ族のおやじは、冷め切った表情でにべもない返事だ。

 これになおのことクマ族の新人パイロットの顔が青ざめる。

「……は、見たまんまだろ? あー、ニッシーくん、あいにくときみの機体はでかすぎて通常のカタパルトシステムじゃどうにもならない。よって専用の射出ドライバーを使うことになるのだが、もうすでに技術的な面はクリアしているから、安心していい。そっちの大型機の隊長どのが身をもって証明してくれているからな。ただし機体、人員ともに多少の負荷はかかるから、せいぜい舌を噛まないように気をつけるんだぞ?」

「え、いやいや! 聞いてないんスけど? 射出ドライバーって、いわゆるマスドライバーみたいに強制的にモノを遠くにぶん投げるってことっスか? 技術的って、安全面は? いやいや、マジ、無理だって! こっちは中に人間乗ってるんだから! マジで死ぬって!!」

 かなり取り乱したさまでわめき立てる新人パイロットだ。

 するとコントロール・ルームからは、また別の落ち着いた声が届く。

 こちらもクマ族でじぶんよりも若いメンテナンスの補足説明なのだが、あいにくでまったくもって安心するには至らなかった。

「落ち着いてくださいっ、ニッシーさん! 確かに機体にかなりの負荷が掛かるかなり危険なドライブシステムで、パイロットの負担も相当なものなのですが、この出力さえ落とせば、そう無理もなく射出できるものと思われます! 加えてそちらは今回が初めての出撃射出となりますが、本来はちゃんと予行演習がしたかったです! なのでご武運を祈ります!!」

「なっ、おまえ、ちょっと待てよ! まさかの運頼みになってるんじゃねえのかっ、それって!? マジでないって、ちょっと社長! いっぺんやめさせてくれっ、このままだとおれたぶん死んじまうっ!! たったひとりしかいないこの平社員がっ!?」

 この場にはいないイヌ族の女社長に助けを求めるが、あいにくと別のデッキで出撃待機している相棒からの返事はなかった。

 代わりに聞こえてくるのは、メカニックのクマ族たちのやけに落ち着き払ったひとごとみたいなやり取りだ。

「イージュンさん、今回は大事を取って、出力30パーセントくらいで臨んだほうがいいと思うのですが、どうでしょうか?」

「もっといけんじゃね? 半分くらいよりちょい多めでいいだろう? あんまり大事にしても機体が慣れないし、いざって時に泡を食うことになりかねない。そっちはもう80パーセントとか余裕でやってんだろう? あんな完全な自殺行為をさ!」

「自殺行為言った! 自殺行為言ったあ!! ぎゃあっ、やだやだ! 降ろしてくれっ、おれまだやり残したことが山ほどあるんだっ! てかこんなところで無駄に死にたくない!!」

 しまいにはガチャガチャとシートベルトに手をかけ始めるニッシーだが、その後に続いた冷酷な老人の声に、完全に身体が凍り付く。

「ふん。どうでもいいだろう。とっとと放り出せ! そもそもわたしが設計したわたしのアーマーのための高速弾道射出システムだ。そんなゴミも同然のちんけなアーマーごとき、どうなろうが知ったことではない……!」

「……はい? なんスか? 今のむかつくジジイのセリフ! てめえこっち来てみろよっ、てめえが設計したとか言ったよな? このくされキチガイが!! てめえが造ったあのブサイクなアーマーと違って、こっちはデリケートなんだよ!! なんかあったらタダじゃおかねえからな!!」

「フッ……、アーマーがゴミなら、パイロットはクズだな? いい、とっとと撃ち出せ! 遠慮などいらない、空中で派手に爆散するくらいの出力でただちに放り出してしまえ!!」

 売り言葉に買い言葉でデッドヒートするいいトシの博士に、ちょっと引きかけるリドルは苦笑いで手元のスイッチを操作する。

「はあ、まあ、はじめは大事を取って、半分以下でいきたいと思います。ニッシーさんの精神衛生面も考慮して! とりあえずじゃあ、35パーくらいで?」

「50でいいだろう? あんまり新米を甘やかすもんじゃない」

「100で行け! わたしが許す!! ヤツの機体を跡形もないくらい木っ端みじんにしてやれ!!」

「てめえマジでぶっ殺す!! 表に出やがれ! あとおれを表に出して!! お願いだから無茶しないで!!」

 さまざまな怒号が飛び交うデッキに、ついにはまた第三者の声までが混じる。

「あー、どうでもいいけど、後がつっかえているから、みんな早くしてくれないかな? もう予定の時刻をだいぶオーバーしてるけど? このままだとアーマーの出撃を待たずして、このトライ・アゲイン自体がまんま海に出ちゃうんじゃないのかい?」

 呆れた感じのアーマー隊隊長のクマ族の言葉に、社長の女イヌ族の声までもが重なった。

「あんたいい加減にしなさいよ! あんたが出ないとこっちも出撃できないんだからね? 出撃オーダーちゃんと見てないの? あんたの機体はでかくてのろいから、そのぶん早くに出ないと交戦ポイントに乗り遅れるのよ! 戦況は刻々と変わるんだから、それじゃただの足手まといじゃない!」

「そ、そんなっ、あんまりだぜ! おれ初心者なんだから……」

 辛辣なセリフに部下のクマ族の若者は半泣きで訴えるものの、すかさずにした横からの横槍にまんまとうっちゃられる。

「申し訳ありません! 少尉どの! ですがトライ・アゲインが最大戦速に移るのはそちらのアーマー隊が出撃を終えた後になりますので、まだ猶予はあるものと思われます! どうか今しばらくお待ちくださいっ」

「つうか、出撃前に最大戦速なんかに移行されたら、このデッキの中が大嵐になってメチャクチャになっちまうだろう? デッキの扉とか全部どっかに飛んでいっちまって? あと吐き出したそのどんガメが加速したこの船に後ろからはね飛ばされちまうし。それこそが木っ端みじんに? てか、ブリッジからそろそろクレームが来るんじゃないか? とっとと出しちまえよ」

「ああっ、ちょっと、ちょっと待って! まだ心の準備が! あとそこのジジイ、ちゃんとその首洗って待ってやがれよ!!」

「いいっ、とっと出せ! その目障りなゴミをわたしの視界から遠ざけろ、出力の調整などはみじんも必要ない!! それっ!」

「あっ、ちょっと博士! 勝手にいじらないでください!! あ、今、なにを押しました? あ、出撃モード実行しちゃった! ニッシーさん、身体をしっかりとシートに預けて意識を飛ばされないように気をつけてください! 出力、あ……」

「あ? あってなに? ちょっと、ちょっ、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっ!?」

 若いメカニックの手元のディスプレイが表示する出力ゲージはじぶんが思っていたものよりもかなり高いものであったのだが、あえて口にはしなかった。

 もはや本人がその身でもって体感しているのだから……!

 心の中でごめんなさいと言いつつ、すぐに気持ちを切り替えて、次の段取りに移るリドルであった。


 Part3


 それまで人里離れた荒野に停泊していた重巡洋艦が緊急離陸の後、これが擁するアーマー部隊の飛行艇第一小隊の緊急発進!

 そのほとんどがクマ族で一部、イヌ族とブタ族が混ざる混成部隊は、その出だしだけつまづきはしたものの、おおむねは順調にこの母艦を飛び立ったものと思われた。

 口火を切った若いクマ族の新人パイロットに続いて、小隊隊長のこちらもまだ若手のクマ族が飛び立つのだが、その裏では、ちょっとした小競り合いがあったのをこの隊長は知らなかったか。 

 部下の社員、厳密には契約パイロットのクマ族のニッシーが、ひいひい言いながらも無事に飛び立ったことを確認。

 その後にみずからもこのアーマーを飛び立たせるべく発進準備に臨もうとする、雇い主の女社長だ。

 だがこの時、若いイヌ族の女子パイロットであるサラは、デッキの出撃カタパルトへの進入許可が、知らぬ間にレッドサインの不可で取り消された状態となるディスプレイ表示を、冷めたまなざしで眺めていた。

 そのためか機体にもロックがかかっていることを確認。

 それから今しもそのカタパルトを使用して艦から飛び立とうとしている赤い機体のアーマーを不可解げに見つめるのだった。

 確か発進順のオーダーとしては、相棒のクマ族が飛び立ってから、その次にじぶんの機体が発艦のはずだったのだが……?

 間違いは無い。

 手元のサブディスプレイにもはっきりとそのように表示されているだから。

 それだからムッとした不服げな目つき顔つきで、おまけセリフにもそれがわかるくらいの声のトーンで、当のベテランのクマ族が乗るアーマーに向けてもの申した。

 こういうところ、たとえ相手が目上でも引け目を感じたりはしない、至って勝ち気なやり手の起業家兼パイロットだ。

「あのう、次ってこのわたしのアーマーの発進のはずなんですけど? そっちは隊長のクマ族さんが出てからのはずなんでは?」

 なるべくつんけんしないように言ったつもりなのだが、その言葉の端々に不平不満があるのはしっかりと伝わったか?

 相手のおじさんパイロットはちょっと失笑気味のくぐもった笑いをマイクにこもらせて、さもおかしげに返してくれた。

「ほえ、なんや、お嬢ちゃんがやけにまごまごしてるから、先にいってもうてややんかと思ったんやがな? ちゃうかった? ぼくらの隊長さんも、もう出てもうてるし……!」

 いっかな悪びれるでもなくさっさとカタパルトに乗り込んで発進シークエンスに入る派手な赤いアーマーに、こちらも派手さでは負けず劣らずの全身ピンクの機体のアーマーの女主は、マイクに拾われないくらいのかすかな舌打ちしてどうしたものかと思案する。

 だがどうにも思いつかずにかすかに細い肩をすくめさせた。

 大きな戦艦の左右にあるメイン・カタパルトの管制は本来、ブリッジ・クルーが指揮するのだが、確か一度だけ見たことがあった、同じイヌ族のビーグル種のなにがしかは、今やすっかりと息をひそめて我関せずのありさまだ。

 これにもチッと舌打ちする彼女だが、やはりどうにもできずに相手のベテランパイロットを見送ることにした。

 ここで揉めるよりも、早くこの次ぎに出て先行している平社員のクマ族パイロットと合流することが先決だと考えたからだ。

 出撃を控えて、今は遠くの反対側の一番デッキに機体を回しているもうひとりのベテランパイロットのクマ族のオヤジが、通信回線越しに皮肉めいたヤジを飛ばしてきた。

 またも舌打ちするサラだ。

「ひゃは! いじわるしいなや? そんな若いお嬢ちゃんに、嫌われてまうで? でもさっさと出えへんかったんはそっちの責任やさかい、しゃあないんちゃうの? せやろ、なあ?」

「ふっ、そういうこっちゃ! じゃ、お先に。お嬢ちゃんはそないに無理せんとゆっくりきいや? あのボンボンの新人のパイロットくんと仲良うしてな! 若い子がそないに気い張らんと、難しいことはこのぼくらに任せてくれたらええさかいに……!」

 穏やかな物腰で、そのクセひとを小馬鹿にしてるのがありありとわかる物の言いようだ。

 これにはさすがにカチンと来て言い返そうとするのだが、低い笑いを残してカタパルトを高速発進させるクマ族たちだった。

「ちょっと、おじさんたち! あっ、行っちゃった、なによ、それってやり逃げなんじゃない? 若い女だからって、言いたいこと言ってくれちゃって。モラハラじゃん……!」

 思わず不満を漏らすのに、天井のスピーカーからおそるおそるしたイヌ族の士官の声が咳払いとともに降ってくる。

「おほんっ、あー、それではサラ准尉、発進準備はよろしいでしょうか? コースはすでにクリアなので、そちらのタイミングで発艦願います!」

「今やってるでしょう! ちょっと、あんた今の今までだんまり決め込んでおいて、今さらなんなのよ。ブリッジで聞いてたんでしょう? あと准尉って、わたし社長なんですけど?」

「あー、あー、おほん、おほんっ……」

 鋭い目つきで見上げて毒づいてやるに、天井からはひどく気まずげにした咳払いだけが虚しく響く。


 これにじぶんがやっていることがただの八つ当たりだと気付かされて、内心で強く舌打ちする女社長だった。

 向こうに悪気がないのはわかるのだが、どうしても言葉がきつくなってしまうのを抑えきれない。

 社長や社員では収まりが悪いので、軍務規定上、便宜的に士官クラスの階級をあてがわれるのは聞いていたが、いざこうして実際に耳にすると心地が良いものではなかった。

「わたしとヒラ(平社員)のあいつが同じ階級だってのも、引っかかるのよね? せめて少尉さんくらいにしてほしかったわ。でもそうなるとあのクマの隊長さんに並んじゃうんだ? さっきのおっさんたちは中尉だっけ? 階級あっちのほうが上じゃん! ほんとにわけがわからないわっ……」

 ぶつくさと文句を垂れながら、みずからの機体をカタパルト・システムに乗り上げ、これをロックする。

 機体を固定していたハンガーとのロック解放確認。

 その後に機体をデッキ後方まで後退させてそこから高速発進の態勢に移る。もはやブリッジからの応答がないのをいいことに、じぶんの好き勝手なタイミングで発進準備を進めるサラだ。

 薄暗いデッキ内にまっすぐな一本のレールとこれを照らすライトだけが浮かび上がり、ずっと先に見える外部へと解放されたデッキの射出口がディスプレイの中央に固定された。

 システム・オールグリーンの緑色の表示を横目で確認しては、さっさと手元のレバーを引き上げてカタパルトを発進させる女社長、もとい准尉どのだった。

「それじゃあ、さっさと行かせてもらうわよ! サラ・フリーラ・シャッチョス! ドンペリ・ピンク発進!!」

 派手なピンクの機体が轟音と共に青空を一直線に切り裂いてゆく!

 

 Part4


 気を失っていたのは、果たしてどのくらいのことなのか?

 うすらぼんやりした意識の中で、不意にどこからかかまびすしく鳴り響く警告音が脳内を揺さぶる。

 直後、ふっと目の前に広がる青一色の青空を映すディスプレイ画面にようやくこの焦点が合わさる若手のクマ族パイロット、ニッシーだった。

 ぼやっとしている間もなく警告音はさらに甲高くコクピット内にこだまする!

「ん、あ、あれ……? おれ、どうして……??」

 いまだに意識が判然としないが、さすがに惚けてばかりもいられない。

 反射的に目をパチパチとしばたたかせた。

 喪失していた意識と記憶を必死に呼び起こす。

 しまいには手元のレバーが勝手に左へと振れて、この機体も左へと大きく傾ぐのに大慌てでこれを両手の中に取り戻すのだ。

 反射的に右に切り返して水平を保とうとするが、あいにくで機体が言うことを聞いてくれない。またどこからかピピピッ!と警告音が鳴って、何かしらの注意喚起らしきをされてしまう。

 本人的にはわけがわからないのだが?

 内心でパニックになりかけながら、いつぞやのでかいクマ族のメカニックマンの言葉が、ぬっとばかりにこの脳裏に浮かび上がってきた。

 いわく、はじめに艦を出撃したらば、機体が安定すると同時にこのコースを大きく左右どちらかへと開けること。

 でなければ後続のクマ族の第一小隊隊長のバケモノじみたアーマーに問答無用ではね飛ばされるぞ、と……!

「うわっ、ヤバイヤバイ! もう来てんの? いやっ、おれそんな気ぃ失ってた? とにかく回避しなくちゃっ……あっ」

 機体の予期せぬ傾きがこの回避運動を自動でやってくれていたことに今になって思い当たるが、後続のアーマーがギリギリではじめの直線コースをかすめていったのはそれとほぼ同時だった。

 間一髪で大惨事を免れたようだ。

 思わず胸をなで下ろして、ディスプレイの中で一瞬にして小さい点になっていくそれは猛烈なスピードの友軍機の大型アーマーの後ろ姿を目をまん丸くして見送る新人パイロットくんだ。

 驚きにひどい呆れが混ざってか声がひっくり返っていた。

「速ええな! バカみたいなスピード出てんじゃん? おれもあんなんで飛び出して来たの? うっそ、マジかよ、ただの自殺行為じゃんか、おっかねえ!! て、この機体はどうなんだ?」

 機体のレーダーの索敵範囲からすっかり外れてこちらからは目視すらもできなくなった味方の隊長機はもはや置いておいて、とりあえずはじぶんの身の回りに意識を向ける。

 一時的な回避機動は解除されて、今はコントロールが手元に戻った操縦桿を握り直すと周囲のディスプレイと各種計器類に視線を流してゆく。

 どこにもこれと目立った異常はなし。

 手元のマルチディスプレイでパイロットのバイタルデータにも何らアラートが出てないことを確認。

 この身体にも機体にも先ほどの無理矢理な出撃による異常や不具合は検知されないことを確認して、またほっと大きく胸をなでおろす。

 ひとまず額の汗をぬぐって、この後に自分がなすべきことをあらためていちから思い起こすニッシーだ。

 ここらへんが実にとろくさいのがいかにも新人らしいが、こんなところを見られたら、あの口やかましい若手の女社長の相棒が黙ってやしないなと苦い顔つきになる。

 それでふっとこのあとの行動を思い出す平社員は、後ろの後部モニターを振り返って、そこに当の雇用主の姿を探していた。

 作戦中はふたりで戦闘行動をするためになるべく速やかに合流、目標のポイントへと進軍するはずなのだった。

 ただしこんな大きな機体だから簡単に見つけられて、放っておいてもあちらから来てくれるだろうことはわかりきっていたが、それっぽいモーションは取っておかないと今期のボーナスの査定に響くかなとレーダーの索敵モードをより広範囲に広げるサラリーマンだ。

 追いつかれるよりも先に相手を感知してこちらから通信回線を開くくらいのことはしてやりたい。
 
 でないとなにを言われるかわかったものじゃないのだから。

 そうして意識を正面モニターのレーダーサイトに集中するとすぐさま反応が出てくるのだが、思ったのとちょっと違うのにかすかに眉をひそめる灰色グマのでぶちんくんだ。

 母艦がいた方向から凄まじい勢いで距離を詰めてくるアーマーの反応は何故かふたつあり、それがあっと言う間に追いついておまけあっさりとこちらを追い抜かしてゆく。

 派手な真っ赤と真っ青な機体のアーマーはベテランのクマ族たちのそれで、先に追い越して行った隊長の後を追いかけているのだとわかったが、この時、開こうとしていた回線をむしろそっと閉ざすニッシーだ。

 相手はアーマーのヘッドのカメラをピカピカと光らせてこちらに何かしらの合図らしきを送っていたが、それにつき出会ってからこれまであんまりいいイメージを抱いていないビビリの新人パイロットは、あえて見なかったフリを決め込む。

 結果、無言でやり過ごした。

 あちらも急いでいる都合、これに何かしらの文句を言うべくもなく。

 すっかり正面のモニターの中で小さな点と点になるのを見送っていると、また背後から新たに近づいてくる機体があるのをレーダーが検知!

 今度こそはと正面のディスプレイに背面カメラの画像をまわし込むと、そこには見知らぬ緑色のぼろっちいアーマーが、やや低空を直進で進んでいるのが見て取れる。

 しばし微妙な顔つきで考えているうちに、それが若いブタ族の乗るものであるのが予測できるニッシーだ。

 おそらく間違いないだろう。

 名前がいまいち思い出せなかったが、無論、無視した。

 構ってやる義理はない。

 それきり変化のないコクピットの中でしばしのだんまり。

「…………???」

 発艦順のオーダーからしたらじぶんの次だったはず相棒の機体がいまだ確認できないのに内心ではたと首を傾げてしまう。

 だがその直後には、そんなことを悠長に考えている場合ではないのをひときわに大きな音量の警告音に気付かされる。

 それまでのどかな青一色だった画面が、不意に赤やら緑やらのアラートでやかましく塗りたくられていた。

 同時に味方ではない機体の情報がいくつもの警告とともに目の前でめまぐるしく展開される!

 これにまずは目を白黒させてひたすらにのけぞるクマ族だ。

 シロウト丸出しだった。

「うえっ、ちょっ、会敵!? こんなとこで? 待てって、どっから来たんだよ? 西側?? 敵は北にいるんだろ! 言ってたのとぜんぜん違うじゃん!! おおい社長っ、今どこにいるんだよ!?」

 完全にパニックになりかけてあたふたと操縦桿やら周りのスイッチやらを意味もなくなで回すが、これとはっきりした迎撃行動を起こすまでもなく、ただモニターの中の小さな点がアーマーのそれらしい色かたちを整えるのをマジマジと見つめてしまう。

 頭の中が真っ白になる新兵くんだ。

 まともな回避行動を起こす発想さえ浮かばない。

 本来なら致命的な初動ミスなのだが、この時ばかりはそれが功を奏したことをこの時の彼は知る由もなかった……!


 他方、単独で高空を進軍する機体めがけて一直線にみずからの機体のエンジンスロットを全開にしていたパイロット、まだ若いのらしいキツネ族の上級士官は、手元のモニターが表示するデータを一瞥するにつけかすかな舌打ちをする。

 目の前の大画面ディスプレイに映る機体を目視でそれと確認すると、口元に苦いほころびを刻んで視線をぷいと反らせた。

 もはやそれきり興味はないとでも言いたげ、この手元の操縦桿をぞんざいに左へと傾ける。

 正面に捉えていた機体がただちに右手のディスプレイへと流れるのもいっさい見もせずに、意識を青い空へとただ向ける。

 相手機がこれといった迎撃行動に出ないこともあって、完全にこれをないものとして片付けていた。

 すると多少のラグがあってその場に駆けつけた二機の後続たちが、ちょっと戸惑った感じで互いのカメラを見合わせて、その後この隊長機に食らいつくべくエンジンを再点火する。

 その内の赤い機体のベテランパイロットが通信を開いてくるのも、さして気にもとめずに高速機動型の愛機のジェットエンジンをふかすキツネ族だ。

 後ろからするタヌキ族のオヤジのしゃがれただみ声には適当にだけ相づち打った。

「おや、なんかいかにも敵っぽいのがいやすが、いいんですかい? ダンナ、無視しちまっても? こんなでけえのよ!」

 半笑いの声からするに、そう言ってる当人も大した興味はなさげだ。

 だからこちらもまったく気のないさまで吐き捨ててくれる。

「……よい。捨て置け。無駄弾よ。我が目的はひとつのみ。他はすべてくれてやる。貴様らの好きにすればよいだろう……」

「いやいや、それやってると完全に置いていかれちまうんで! あとそれで言ったらこのおれっちらの目的もこんなデカブツくんなんかじゃなしに、なあ、ごのじ(五の字)よう?」

「はあ、ほんとにでかいな? おまけに見たことないし、新型機か? ん? なんか言ったか、ぶんのじ(文の字)??」

 赤いアーマーのタヌキ族がしたり顔して同僚の青いアーマーのイタチ族に回線を振るが、こちらはこちらで物珍しげに敵とおぼしき機体を背後に眺めていた。

 やはりさしたる興味はないさまでだ。

「ちゃんと集中しろよ! これから楽しくなるんだ。なんたってこの赤と青のアーマーコンビの頂上決戦をやるんだからな!」

「?」

 あんまりピンと来てないふうな相棒は白けた間があくのに、威勢のいいタヌキおやじはツバ飛ばしてまくし立てる。

「だからダンナの狙ってるヤツにいつもくっついてるあの赤と青の機体、今になって思い出したんだが、あいつらってな、結構な有名人だろ?」

「赤と青? ああ、そういやいたな、いつも決まって横からうざがらみしてくるやつらだろ? このおれたちとなんでかおんなじカラーリングしてやがるなと思ったけど、それがなんなんだ?」

 首を傾げているらしいのんびりした相棒に、せっかちなでぶの中年オヤジはなおのことやかましく食らいつく。

「だから! 近頃さっぱり聞かないと思ってたんだが、東の空で敵なしとかほざいていたクマ族野郎のコンビどもだよ! それで間違いないだろう? いわく、赤い疾風のザニーと、青い迅雷のダッツてな! へへ、おもしれえじゃねえか、ひさかたぶりにこのブンブさまの腹と肩が鳴るってもんよ!!」

「腹が鳴るのは違くないか? あと腕だろ? ああ、そういやそんなやつらもいたっけかな? ふうん……てか、あの機体、今ここで見逃しても結局この先でやり合うじゃないのか、おれたちと??」

「そんなの他の奴らにやらせときゃいいんだよ!! 集中しろって! とにかくこのおれさまたち泣く子も黙る空の猛者、赤鬼のブンブと青鬼のゴッペに敵うものはいねえってのをあまねく大空に知らしめてやるんだからな!!」

「そう言ってるのはおれたちだけだろう? てか、おまえだけな。あと、いいのか、ダンナ、もう見えなくなっちまうぞ?」

「おっ、あ、ダンナ! そりゃないぜ! このおれの機体がドンガメなのを知ってるくせに、ほんとにキツネの若様はドSが過ぎるぜえ~~~~!!」

「いいから、さっさとエンジンふかせよ!」

 結果として目の前の大型機には目もくれずにさっさと戦域を離脱していく敵のアーマーたちだった。

 その先で激しい戦いがはじまるのは、もはや新米のニッシーの知る限りではない。

 こちらはこちらで結構な展開が待ち構えているのだから。

 しばらく目の前のディスプレイに釘づけで身体を凝固させいてたクマ族の新人パイロットは、レーダーの有効半径から三機の敵影が完全に消え去ると深くため息をついてどっと背後のシートにもたれかかる。

 顔面が冷や汗でびっしょりだが、息つく間もなくまた新たな警告音がコクピット内に鳴り響く。

 いい加減、心臓に悪いタイミング続きだった。

 それだから反射的にビクンと跳ね起きて視線を右往左往させるニッシーである。

「またかよ! 今度はなんだよっ!? ん、社長のアーマーか! 今さらかよっ、今までなにやってたんだよ、やい社長!!」

 やっと味方らしい味方が現れたことに泣き言を言う平社員だが、相手の直属の上司の機体からは冷たい返事がカウンター気味に返ってくる。

 甲高い女のイヌ族の声音がキン!とクマ族の男の耳朶を打つ。

「悪かったわね! こっちもいろいろあるのよ! まったく空気読めないおっさんたちに勝手にオーダー変えられて、挙げ句にブタ族ののろくさい補給機の護衛まで押しつけられて! 元はと言えばあんたがもたもたしてたことが原因なんだから、文句なんて言われる筋合いひとつもありゃしないわ!!」

「うひいっ、なんか怒ってる?? わ、悪かったよ! でもおれ新人なんだかんな? ちょっとは手加減してくれよ……!」

「そんな泣き言、この戦場で通用すると思っているの? 言っておくけどそんなボンクラ、一日だって生き延びていけやしないからね! さっさと態勢を立て直して、目標のポイントまでアーマーを走らせるわよ。出だしでしくじるなんてありえない。ちゃんと戦功を立てて周りのなめたヤツらを黙らせないと!!」

「あひいっ、やっぱり怒ってる? でもおれそんなテンションになれないぜっ、だって初陣だもん。まだこのアーマーにだって慣れてないし。初日は多めに見てもらわないと……」

「あんた、まさかコンビニのバイトの初日気分で戦場に出て来たの? ありえないわ。そのアーマーから降りてさっさと帰りなさいよ! わざわざ高い金を出して使えないバイトなんて雇った覚えはひとつもありゃしないわ!!」

「ひいいっ、絶対怒ってるぜ! おれそんなに悪いことした? わかった、わかった、わかりました! おおせの通りにするから、その機嫌悪いのどうにか直してくれよ、社長! これから命がけの戦いになるってのに、そんなんじゃテンションだだ下がりでほんとに生きた心地がしないぜっ……! わあ、待ってくれって! 置いていかないで!! おれ右も左もわからない新米なんだから!!」

「右か左かくらいはバイトだってわかるでしょう? イライラさせてるのあんたじゃん! いいこと、その機体にキズのひとつでもつけたら、全額あんたのボーナスからさっ引くからね! あとあたしの足を引っ張らないこと! いいわね、あんたは新米だけどその機体はバリバリの一級品なんだから、それに見合った働きをするのよ? できないなら給料減額!! 機体と待遇を死守しなさい!!」

「ひいいいいいいっ!? 待って、それは厳しすぎるって、あとマジで待って、待ってってば! 社長、コワイから置いていかないでえええっ!!!」

 とかくやかましいでこぼこパイロットコンビが会敵するのは、これからしばしした後のことになる。

 まこと今日が初出撃のニッシーからしたら、もはや忘れられないど派手な戦場デビューであった。


                次回に続く……!

 

 



 サラ ザニー ダッツ

 ニッシー ベアランド ザニーダッツ キュウビ部隊 サラ

 沿岸で会敵? 



#023 プロット

翌日、早朝、トライ・アゲイン緊急離陸。
アーマー隊、飛行部隊の緊急出撃命令。

出撃 第一小隊 ベアランド、ダッツ、ザニー、タルクス

   新加入組、サラ、ニッシー

 出撃間際、艦長のンクスと状況の説明。
  離陸理由、近隣の街からの要請。アストリオン政府からの要請。内陸ではなく、海沿いの港湾都市付近に着岸されたし。
ビグルス 補給の都合もあるからそうでないと不都合
ンクス アーマーも数がそろってきたから本格的な戦闘行動に移りたい
ベアランド めぼしいところは? 北東の港湾都市 ???
      新興勢力 ブルメガ? アゼルタが加勢して攻勢
      ジーロが応戦するも厳しい状況? タキノン?

 出撃 → ニッシー、大型機で強制射出型ドライバーにクレーム イヌ族の博士と大げんか 無理矢理射出される。
 第一小隊は出撃して キュウビ小隊と遭遇? 
    サラは出撃時に、ザニーとちょっとした小競り合い?

    サラとニッシーは新型機で初陣となるが、これにおなじく新型機で初陣となる、イワックとカノンの男女コンビと会敵する。航空巡洋艦「ガーエル」 たまたまトライ・アゲインが向かった先の公海上に停泊中の敵艦と遭遇?

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