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DRAGON TRIBE New Wave! ドラゴンキャラの〝新種〟登場!!

ヒマに任せてドラゴン族の新人くんを描いてみました♡ その名も「ライボ」くんです!
どうぞごひいきに(^^)

 ちょっとやりたいことがやりづらい状況にありまして、仕方もナシに出来ることをやってみたらこんなカンジになりました…

 なんかビミョーなんですかね? 色を何で塗ればいいのか考えあぐねています♡ さてはて(^^;) 以下に無料のダウンロードデータを公開! お気に召しましたらごひいきに♡♡

 さらにまたちょっとだけ描き込んだテイク2です♡

 ライボ・グレーパターン・ベタ塗り

 spoonでリクエストをもらった灰色のボディと赤い瞳のライボくんです(^^) ヒマを見て陰影だとかをつけたいですね!
 以下にダウンロードデータを添付します♡

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Lumania War Record Novel オリジナルノベル SF小説 キャラクターデザイン ファンタジーノベル メカニックデザイン ルマニア戦記 ワードプレス

ルマニア戦記/Lumania War Record #010

#010

「寄せキャラ」登場!

 ※「寄せキャラ」…実在の人物、多くはお笑い芸人さんなどのタレントさんをモデルにした、なのにまったく似ていないキャラクター群の総称。主役のメインキャラがオリジナルデザインなのに対しての、こちらはモデルありきのキャラクターたちです。
 似てない部分をどうにかキャラでごまかすべく、もとい、ノリで乗り切るべくみんなでがんばっています(^o^)

 「新メカ」も登場!

Part1

 空はどこまでも澄んで、穏やかだった。

 眼下に広がる海も、見渡す限りが青く穏やかに見える。

 その最果ての水平線が、空と交わる先でゆるいカーブを描いているのをそれと実感。ここがおよそ戦場とは思えないほどに、今は全てが静かに落ち着き払っていた。

 かくしてそんなのんびりとした雰囲気に釣られて、軽い鼻歌交じりに周囲の景色、ぐるりとみずからを取りまく大小のモニターを見回す犬族のパイロットだ。
 それはご機嫌なノリで意味も無く手元のコンソールパネルのスイッチをガチャガチャといじくり回す。

「ふーん、ふっふ、ふんふん、ふんのふんのふんっと…!」

 まったく意味のない動作の連続で、無意味な操作音がピッピとコクピット内に鳴り響く。シートベルトでがっちりと固定されたシートの背後から、細長いシッポの先がブンブンと振れていた。

 本当にご機嫌なさまだ。

 あんまり調子に乗って機体の推進制御レバーにも手が触れたらしい。微速前進で空中に安定していたはずの機体が突如、ビクッと姿勢を崩すのに、ちょっと慌てたさまで両手をレバーに戻して機体の水平を保つ。

 苦笑いでぺろりと赤い舌を出すビーグル種の犬族だ。

「おっと、あかんあかん! 調子に乗ってもうた。これからガチの戦闘やのに!!」

 ピッと不意に短い電子音が鳴って、同僚の機体からの通信、茶々が入った。すぐ斜め後ろをおなじく微速前進で追従する相棒の犬族のパイロットの、これまた調子のいいツッコミだ。

「どしたん? ずいぶんとご機嫌やけど、なんかええことあったんか? これからバトルやのに?? 浮かれとる場合ちゃうやろ」

「ああっ、せや、せやけどいいカンジやろ? これのどこが戦争なんだかわからへんぐらいに平和になっとるやん! ほな鼻歌のひとつも出てまうわ」

「今だけやろ? よそのエリアじゃもうバリバリ戦闘に入っとるらしいで。なんや新型の空飛ぶ戦艦が入ってきもうて、ごっついアーマーも投入されとるらしいやん!」

「せやな。この万年戦闘水域の中心、本島のロックスランドをあっさり一日で落としたんやったっけ? あないに苦労して占領したのにムカつくわあ! ほんまにどついたろか」

 苦笑いがさらに強くなる犬族、モーリィは正面のモニターの中で小さく区切られた窓の中の相棒に、皮肉っぽくみずからの右のほほのキバをニィッとむいてみせる。

 おなじく苦笑いの相棒、こちらもまだ若いのだろう毛足の長い特徴的な顔つきをした犬族のリーンは、茶目っ気のある笑みで返す。

「好きにしたらええやろ! それよかそろそろみたいやんな? 早速レーダーにひとつそれっぽい反応が入ってきとるやろ?」

「さよか! ほな、ぼちぼちいったろか!」
 

 ビピッ、ピッピッピッピ!

 正面から右手のモニターにバストアップの映像が移った相棒が言った通り、自機のアーマーのレーダーサイトに反応がひとつ引っかかったことが、今しもアラームの警告音(ビープ)で知らされる。

 こちらよりまたさらに上空の空におかしな反応がひとつ。

 正面のモニターに映し出されたその映像にみずからの突き出た鼻先をひくひくとひくつかせる犬族だ。はてと小首を傾げながら、怪訝なさまで独り言めいた言葉をつぶやく。

「あれぇ、なんやようわからんヤツがおるわあ? なんやあれ、やけにいかつい見てくれしとるけど、あんなんこっちのデータベースに載っておらへんやん? アンノウンやて!」

「みたいやんなあ? こっちもおんなじ、ノーデータや! 現在、諸元とこの想定される性能を解析中……あ、そやから詳しう解析するためにようモニターしてくれっちゅうとるぞ?」

「知らんわ! そんなのこっちの知ったこっちゃあらへん。なんで命がけの戦闘しとる最中にそないなことせなあかんねん! わしらまだ予備軍扱いで、正規には採用されとらへんのやさかい」

「そやんなあ、それがいきなりあないな新型の敵さんと会敵なんて、しんどいわあ! どないする? ま、アーマーがピッカピカの新型なんはこっちも一緒なんやがのう」

「はん、新型っちゅうてもこないなもんは実験段階の開発途上機やん。そやからわしらみたいなペーペーでも任されとるんやし、それやのにあっちはやけにいかつない? もうちょいズームで、うお、でかっ! めっちゃごっついやん!! なにあれぇ?」

「うわ、なんかきしょない? なんであないなでかいもんが平気で空飛んでんねん? わいらのアーマーのサイズの優に倍はありよるで? ほんまに何で飛んでんのや、ローターエンジン付いとるか? ジェットドライブやったら燃費悪すぎやろ!」

「なんか、飛んでるゆうよりも空に浮いてるカンジせえへん? マジできしょいわ、わけわからへん。マジでどないしょ」

「逃げるわけにもいかへんもんなあ? 仮にも新型機で出撃しといて。この「ドラゴンフライ」の性能も見とかなあかんやろ? なんか大人とこどもくらいも機体に体格差あるんやけど」

「ドラゴンフライて、トンボやったっけ? あっちからしたらこないなチャチな機体、まさしく「かとんぼ」にしか見えへんのちゃうか、まともな足もついとらへん中途半端なもんは? 足っちゅうか、こんなんただのほっそいほっそい棒やん!!」

「空飛ぶんには足なんてあっても邪魔なだけなんやろ? 空中じゃ歩かれへんのやさかい、そやったらそないなもんは、ないほうが身軽になって飛びやすいっちゅうわけで!」

「言いようやんな! まあええわ、よっしゃ、それじゃその身軽なん使こうてふたりで一発かましたろか! あっちはあんなんやから素早くなんか動かれへんのやろ? 見てくれおっかないだけで図体でかいだけのでくの坊や。ははん、だったら楽勝やん!」

 息の合った掛け合いで漫才みたいなやり取りを一息に決めて、モニターの中の敵影にこれと視線を定める犬族のモーリーだ。
 自分がリーダーだとばかりに盛んに意気を吐くが、これにちゃっかりしたお調子者らしい相方が、それはそれは好き勝手な言いようほざいてくれる。

「ふたりっちゅうか、まずはひとりでいっときぃ、じぶんが! そのあいだにこっちでしっかりモニターしとるさかい、存分にその新型の力を試してみぃ! そしたらついでにそれもモニターしたるから、なんや、これってまさに一挙両得やんな?」

「は? いやいやいや! 何を勝手を言うとんねん?」

 まるでひとを使いっ走りみたいにそそのかしてくれるのに慌てて抗議するのだが、相手はまるで聞く耳を持たない。

「ないないっ、あんないかついもんに単機で突っ込むなんて自殺行為やろ! ふたりで挟み撃ちするくらいでないと無理やて、わしひとりでまんまと返り討ちにあったらどないすんねん?」

「そん時はさっさとトンボ帰りやわ! ほなさいなら!!って、ドラゴンフライなだけに? うまいこと言うたやろ? ほな、まずはひとりでいっときぃ、遠慮せんでええから、ほら、あちらさんもあないに手持ち無沙汰なままでじぶんのこと待っとるでえ? せやから今がチャンスやて!!」

「なんのチャンスやねん? あほちゃうか?? むりむり、あかんあかん! 死んでまうて、見れば見るほど、まともちゃうやんか! あないなグロいバケモン……あ!」

「あ、感づかれたんちゃうんか? じぶんがさっさと行かへんさかい、とうとうあちらからご指名がかかったんやな。ほな、ひとりでいっときぃ」


「なんでやねん!! おおい、マジで来よったで! 完全にロックオンされとるがな! あほなこと言うとらんでさっさと応戦や! 漫才ちゃうんやからつまらんボケは通用せんで、うお、マジでごっついやん!! シャレにならんて!!」

「しんどいわあ~、じぶんほんまに手の掛かる子やんなぁ? しゃあない、後ろから援護したるさかい、前衛はまかせたで!」

「なんでやねん!!」

 コクピット内にやかましい警告音が鳴り響く。
 それを戦いのゴングと了解して、ただちみにみずからの正面の操縦桿を握りしめるビーグルだ。モニターの向こうの相棒に目配せして、ガチの戦闘に入ることを互いに確認!

 二機の新型機がおのおの左右に分かれて旋回上昇軌道に入る。

 未知の敵との遭遇。

 かくして息つくヒマもない銃弾とビームの応酬が前衛芸術さながら、青一色の空のキャンバスにくっきりと描き出される。

 「戦争」がはじまった。


Part2
 主人公登場!!

 主役のクマキャラ、若いクマ族のパイロットのベアランドです。初代から数えてこれでテイク4くらいですね!

若いメカニックマンの男の子、リドルははじめの見てくれがかなり雑だったので、下のキャラに顔だけリテイクしています。
 作者的にはそれなりにお気に入りです♡

 Part2

 今はまだ、静かな世界だ。

 空も、海も、果てしなく青く、ひたすらに広がるばかり。

 ここは大陸からはかなり離れた沖合の海洋だ。
 本来ならどこの国にも属さない中立の公海水域なのだが、今やそこは広範囲にわたって敵味方が入り乱れる戦場と化していた。

 元は岩山ばかりが目立つ小さな小島と、その周りをぐるりと取り囲む形で配置された、人工の島々、ギガ・フロート・プラットフォームで形成された、世に言うルマニアの『拡大領域』だ。

 端的に言ってしまえば、海に浮かべた正方形や長方形の巨大なプラットホーム、ギガ・フロート上にそれぞれ任意の構造物を建造した前線基地とその周辺施設群なのだが、今やこの半分が敵方の手に落ちているというのがその実のところである。

 いざ無理矢理に領有権を主張したところで、本国から遠く離れた離れ小島は、地続きでないだけに援護や補給がままならない。

 大陸西岸の属州の港湾で補給を終えて、すぐさまこの混乱した戦線に加勢した巨大な空飛ぶ船艦のはたらきで、この中枢の小島の要塞は見事に奪還したものの、これを中心に西と東で支配権が分かれるフロートの各施設をただちに攻略および守護!

 そこかしこに潜伏する敵を掃討するのがみずからの役目である若きクマ族のエースパイロットは、周囲の青一色の景色ばかりを映し出すモニターに視線を流しながら、何気なくしたひとりごとを口にする。


「う~ん、こうして見てみるに、どこにもこれと言った戦艦らしき影が見当たらないなあ……! でっかいのがこれっぽっちも。友軍もそうだし、敵軍の戦艦、潜水艦なのかな、どこにもそれらしい気配がないんだよねぇ。頼みのレーダーはどれもさっぱり無反応だし。どうしたもんだか……」

「はい? 戦艦、でありますか? 友軍となると、ジーロ・ザットン将軍のものでありましょうか? 確かどちらかのフロートに付けているらしいとは聞いておりますが? それと少尉どの、こちらのトライ・アゲインとおなじで、最新鋭の航空型巡洋艦だったと記憶しておりますが……」

 今は離れた母艦からの応答、通信機越しの見知ったメカニックマンからの返事に、ちょっと小首をかしげてまたこれに応じる。

「まあね? この戦域の指揮を任されてるトップの指揮官なんだから、もっと目立つところに陣取っていてほしいんだけど、切れ者で何考えてるかわからないところがあるからさ、あのおじさん♡ ぶっちゃけ悪いウワサもバンバン飛び交ってるからね! いざとなったら手段を選ばない、冷血艦長の悪党ジーロって!!」

「あはは、そうなのでありますか? 恐れ多くてじぶんの口からは何とも。ですがあちらも目立つ最新の大型戦艦なのですから、よほど高空を飛んでいない限りは目で視認ができないだなんてこともないものだと思われます。かろうじてレーダーの目はごまかせたとしても?」


「うん、ぼくもそんなにお間抜けさんではないからね? まさか海の中に潜っているだなんてことはないはずだから、やっぱり巧妙に隠れているんだよね。となると、あやしいのはいっそあの本島のロックスランドの入り組んだ岩礁地帯か、もしくは……!」

 やや考えあぐねるクマの少尉どのがそう言いかけたさなか、不意にピピピッ!と甲高い警告音がコクピット内に鳴り響く。

 レーダーに反応あり! つまりは敵と遭遇したことを示すものだった。これに通信機の向こうで息をのんだ気配があり、ちょっと緊張したさまの若いクマ族のメカニックマンの声がする。

 今現在、自機がいるのがわりかし高空なのと、周囲に敵影がなかったので妨害電波らしきもないらしく、遠くの母艦で留守番している若いクマ族のハイトーンな声色がきれいに聞こえていた。

「反応、ありましたか? はい、こちらでも確認しました! ギガ・アーマー、二機の模様です。状況からして少尉どのとおなじ飛行型タイプでありますね。あれ、でもこれって……」

 まだ実験開発段階の都合、こちらの機体状況をつぶさにリアルタイムでモニターしている機械小僧のちょっと戸惑ったさまに、釣られて苦笑いのベアランドも太い首をうなずかせてまた言う。

「うん。ノーデータ。『アンノウン』だって! いきなり未確認の機体と遭遇しちゃったよ! いわゆる新型機ってヤツだよね。まいったな、てか、新型で正体不明なのはこっちもおんなじなのかな? あれって見たところどちらも同型の機体だよね、なんかえらい見てくれしてるけど……!」

「えらい見てくれ、でありますか? こちらでは画像の解析がまだできていないのでわかりませんが、飛行タイプのアーマーならば比較的小型、軽量級なのでありましょうか??」

 メカニックマンの推測に小首をかしげて目の前のモニターをのぞき込むクマのパイロットは、何やらあいまいな返答だ。

「う~ん、そのどちらもだね! なんか中途半端な見てくれしてるよ。やけに? なんなんだろ、ボディと飛行ユニット、あれってロータードライブなのかな、今流行(はやり)のさ? そこだけそれなりしっかりしているんだけど、それ以外の手足がオマケみたいな感じでくっついてるよ。脚なんかあれってばただの『棒』なんじゃないのかな??」

「はい? 棒、でありますか?? いやはや、まったくわかりません。少尉どのっ、新型機ならばなるべくこの性能と仕様をモニターするべきなのでしょうが、随伴するサポートの機体がいない今の状況ではいささか難しいものがあります。こちらでなるべく解析トレースしますので、無理のない機体運用をお願いします。そのバンブギン、いえ、ランタンもこの性能試験の真っ最中でありますので!」

「わかってるよ! とにかくいざ会敵したからには真っ向からやり合わなけりゃならないんだから、おのずとデータも入ってくるさ! 相手がひ弱な見た目だからって、遠目からビームの一発で終わらせようだなんて横着はしないから。それじゃこの子の運用データもろくすっぽ取れないしね?」


「了解! 敵影、どちらも動きに変化ありませんが、こちらには気づいているものと思われます。いかがいたしますか?」

「どうするって、こちらから仕掛けるしかないんだろう、この場合は? さいわいあちらさんの頭上を押さえているからやりやすいよ♡ それじゃあ行ってみようか、そうれっ……!!」

 言うなり躊躇なく手元の操縦桿を思い切りに押し倒す少尉どのだ。それによりアーマーとしてはかなり大型なみずからの機体が頭から前のめりに空中をダイブ! こちらよりは低空を飛んでいる二機の敵機めがけて一気に突撃する体勢に入る。

 戦いがはじまった。

 さすがに空中での格闘戦はまだ慣れていないので、機体に装備されたビームカノンを相手めがけて一斉射!!

 この頭上からの不意の攻撃にあって、相手機はどちらも泡を食った感じでひょろひょろっとそれぞれが回避機動に入る。
 ほんとうにひ弱なカトンボみたいなありさまだった。
 ちょっと拍子抜けしたクマのパイロットは、目をまん丸くしてそんな相手のありさまをしげしげと見入る。


「なんだい、あんまり統制が取れてない感じだな、どっちも? ひょっとしてまだペーペーの新人くんだったりして?? あんまり攻め気を感じないんだけど、ちょっとおどしたらあっさりと逃げ出したりするのかな……? まあいいや、とにかくやることやるだけだよね!」

 そんな考えているさなかにも、頭上のスピーカーからはすかさずに若いメカニックマンによるのサポートが入る。

「少尉どのっ、敵機、二手に分かれました! さては挟み撃ちするつもりなのでしょうか? ですがそのランタンに装備されたカノンはほぼ全ての方位に向けて射撃が可能なので、どうか落ち着いて対処願います!!」


「はいはいっ、わかってるよ! 誰に言っているんだい? 余計な茶々は入れないでいいから、黙って相手のモニターに専念しておいでよ。こっちは心配ご無用! ぼくとこのランタンにお任せだね!! とにかく慣れるだけ慣れないと、相手がガンガン攻め込むタイプじゃないみたいだから、まずは距離を取っての打ち合いに専念するよ。両手のハンドカノンの威力をできるだけ発揮させるから、そっちもちゃんとモニターしておいておくれよ!」

「了解!!」

 自機の周りをぐるりと取り囲んで、互いに一定の距離を置いたまま時計回りに旋回する二機のアーマーに、対して機体の両腕に装備されたハンドカノンをぬかりなく構えて冷静に狙いを定めるベアランドだ。

 相手はやはり警戒しているものらしく、あちらからはいまだ仕掛けてくる様子がない。通常のそれよりも大型で、異様な見てくれしたこちらのさまに多少なりとも動揺しているのかもしれないと思うクマの少尉どのだ。さてはまんまと萎縮している感じか。

「ああん、やっぱりやる気が感じられないなあ? そうかい、だったらこっちからガンガン攻めさせてもらうよっ!!」

 2対1と数では劣勢だが、決してこの分は悪くないとみずからの腕前と機体の性能にそれなりの自負がある大柄なクマ族は、ペロリと舌なめずりして自分から見て右手にあるモニターの中の機体にこの意識を集中する。

 まずは一機ずつ、着実に対処するつもりで利き手のレバーのトリガーをゆっくりと引き絞った。
 直後、赤い複数の閃光弾が青空にまっすぐの軌跡を描いて走り抜ける! その先には標的となった見慣れない灰色のアーマーが、複雑な軌道を描いてこちらもただちに回避機動に転じる。
 ひとの手に追い立てられる、それこそ虫の蚊もさながらにだ。

 全弾回避! ハズレだった。

 それなりに狙いを定めたつもりのクマの少尉は、チッと小さな舌打ちして見かけ通りの身軽な機体を恨めしげに見やる。
 運動性能はかなりのものらしい。やはりそんなに簡単にはいかないかと、どこか余裕ぶっていた気持ちをグッと引き締めた。

※以下、挿絵の作製の段階ごとに更新したものをのっけていきます(^^) これまでは随時に画像を差し替えていたのですが、試しにですね♡

 もとの雑な構図の下書きに、もうちょっと具体的なイメージを書き込みました。でもまだまだざっくりしてますね!

 さらに描き込み♡ ちょっとわかるようになってきたでしょうか? これをさらに具体的に描き込みできればいいのですが、最終的な着地点は決まっていまいちびみょーなところに収まるのがシロートの悲しい性です(^_^;)

 とりあえず下絵は完了? 色まで付けられるかはビミョーです。べた塗りくらいはできるのか?? 色つけの課程も随時に公開していく予定です。ちなみに作画の課程はツイキャスとかで無音で公開していたりするので、興味がありましたら♡

 主役のクマキャラ、ベアランドだけベタ塗りで色を付けてみました(^^) 余裕があったらもうちょっと加工してそれっぽくしてみたいのですが、かなりビミョー、たぶん単純なベタ塗りでおわってしまいそうです。ちなみにインスタライブでやりました♡

 全体べた塗りしました(^^) これで合っているのかどうか作者ながらにビミョーです(^_^;) これより先に加工するかはまだ未定ですね…!


 他方、ベアランドからの猛攻に追い立てられる哀れなカトンボの立場のアーマーパイロット、見た目はとかくメジャーな犬種の犬族のモーリィは、悲鳴を上げてジタバタわめきまくる。
 狭いコクピット内に警告音と鳴き声がやかましく交錯する。
 端から見たらばまったく訳がわからないありさまだった。

「おわわわわっ、あかんあかんあかんあかん! なんでそないにぎょうさんビームばっか撃ちまくってくんねん!? しかもこのわしにだけ!! 不公平やろっ、あほんだら! あっちの相方のほうにも何発か見舞ったれや!!」

「なんでやねんっ! そっちでなんとかしいや!!」

 モニターの真ん中にでんと居座るでかい機体に向けて思わず口走ったがなり文句に、相棒の犬族からすかさず苦笑い気味のガヤが入る。
 現在、大型の敵のアーマーを挟んで対極に位置するこちらと同型のアーマーは、ひとりだけ我関せずのひょうひょうとしたありさまでのんきに空を飛んでいるのを苦々しげににらみつけるビーグルだ。ひん曲がった口元からうなり声がもれた。

「うぬうううっ、そやったらちょっとはじぶんも援護しいや! なんでわしだけこんないにガンガン派手にビーム当てられやならへんのや!? まだ当たってへんけど!! でもこないにきつうやられたら反撃もままならへんやろ!! おわあっ!?」

 言っているさなかにも、相手からは盛大なビームのシャワーがひっきりなしにこれでもかと送られてくる。とんでもない大出力のハイパワーエンジンを搭載していることをまざまざと見せつけられる思いの犬族だった。

 通信機越しの相棒がまたもや驚きのガヤを発する。
 いたってのんきな言いようがこれまたしゃくに障るビーグルだ。

「あちゃちゃ、マジでシャレにならへんのちゃう? こっちの射程圏内の外からでも余裕のパワーがありそうやん! おまけに三発四発、同時に見舞ってきよるもんなあ!? あんなんじぶんようよけきれとるわ!!」

「感心しとる場合ちゃう! マジで蜂の巣にされてまうやん!! どないしょっ、ちゅうか、じぶんも相手の背後(バック)取ってるんやから反撃せいや!! なんでわしだけひとりでこないないかついバケモンの相手をさせられにゃならんねん!!?」

 もっともな訴えに、仲間の犬族はやはりしれっとしたさまで応じてくれる。もはやかなりすっとぼけたものの言いようでだ。

「無理やろ。あいにくこっちの射程圏内の外っかわに敵さんおるんやから? 撃っても届かへんて。危なくて近寄れへんやろ。新品のアーマーを傷だらけにしてもうたら怒られそうやしなあ!」

「何言うとんねん! 戦争やぞ、ガチの!! ちゅうても確かにあぶのうて近寄れへんか! このアーマーの装備じゃミドルレンジのハンドガンがせいぜいやけど、あっちはバリバリ、ロングレンジのキャノンの威力かましてるやん! マジ反則やて!!」

 今や逃げ惑うばかりのまさしくカトンボのアーマーだ。
 味方からのまともな援護も望めないままに、絶望的な逃避行を続けている。敗色は濃厚だ。それを見て全てを悟ったかのごとく、相棒の犬族がしれっと問うてくる。

「どないする? さっさとシッポ巻いて逃げてまうか? 敵さんどんくさい見た目しとるし、スピードやったらこっちが上みたいやんか、そやったらいくらか援護したるで??」

「マジか!? じぶんすごいな!! そういうところ、ほんまに尊敬してまうわ!! でも一発も見舞わないまんまに逃げ出すんいうんはあかんやろ? 取り上げられてまうで、この新品の新型アーマー! どれだけ使いもんになるかわからへんのやけど?」

「じゃあ、やれるだけやってもうて、さっさとバックれんのがええんちゃうか? 射程圏外からでも無駄ダマ、バリバリ撃ってまうノリで? あちらさんはそれほど本気な感じがせえへんから、いざ背中見せて逃げ出しても追っかけてこうへんのちゃう??」

 もはや身もフタもない言いようにしまいにはうんざりするモーリィだが、内心ではそれが正解かと判じてもいるらしい。

「納得いかへんわあ、理不尽ここにきわまれりっちゅう感じやん? いざ新型で出撃したら、あないにわけのわからへん新型に鉢合わせするなんちゅうんは! なんかわしだけ目の敵にしとるし!!」


 完全にさじを投げた調子の相棒の意見にいやいやで同調する、こちらもまだ新人のパイロットだ。機転と経験で現状を打開するよりも逃げるが勝ちと相手機との距離を取ることに専念する。

 攻撃はもはや二の次だ。

 かろうじて敵の背後を取っている相棒の機体が形ばかりの援護射撃をくれたらば、それを合図に即座にこの場をとんずらするべく、前屈みでモニターの中の大型の緑色した機体を注視する。

 対してこれを迎え撃つクマ族の若いエースパイロットは、数で勝るはずの相手がそのくせ逃げ腰なのをはっきりと見て取って、とうとう呆れたさまの物言いだ。

「あらら、これじゃ勝負にならないね? 相手さん、完全にやる気がありゃしないよ、逃げてばっかりでろくすっぽ撃ってこないもん! こんなんじゃ敵のアーマーのモニターどころかこっちの性能試験もままならないや。どうしたもんだか……」

 乗り気がしないさまではたと考えあぐねるのに、こちらも若いクマ族のメカニックがスピーカー越しにもそれとわかる、いささか戸惑い加減で言ってくれる。

「少尉どの! あまり戦いを長引かせればこちらの機体の機密を敵軍に無駄にさらすことにもなりかねません。距離を置いての戦いはこちらも得意とするところではありますが、できるなら一気に間を詰めての早期の決着を考えたほうがよいのでは? 片方が墜ちればもう片方には逃げられる可能性が高いのですが…!」

「ああ、まあそれは仕方がないよ。ぼくもホシを稼ぐばかりが能ではないからね! この機体は確かに万能で性能が高いけど、だからって殺戮兵器じゃないんだから…!! これってただのきれい事かな? ま、それじゃ、見ててごらん!」

 どうやら何事か決意したさまで左手のモニターの中のメカニックマンにチラリとだけ目配せすると、いざ正面に向き直って高く意気を発するクマ族だ。

「さあてお立ち会いっ、初見の相手はみんなこぞって度肝を抜かれること受け合いだよ! このランタンの攻撃パターンの多彩さをぞんぶんに思い知らせてやるさ、それじゃ狙いをしっかりと定めまして……ん、いくぞ!!」

 モニターのど真ん中に捉えたくだんの敵アーマーにしっかりとロックオンしたことを確認するなり、そこにまっすぐに突き出したみずからのアーマーの右手と、すかさず怒号を発して利き手のトリガーを思いっ切りに引き絞る!!

「食らえっ、ロケットパアアアアアアアアーーーンチ!!!」


 かくして戦場は大混乱の様相を呈するのだった。

 相手のひっきりなしのビーム攻撃からほうほうの体で逃げ回る犬族だが、不意に何かしらの嫌な気配を察するなり、コクピット内に鳴り響く警告音にびっくりしてこの背後を振り返る。

 バックに配置された中型のモニターには少し距離を置いてこちらを追いかける大型の飛行アーマーが、そこでなにやらしでかしているのを激しいライトの明滅とともに知らせてくれる。

 ビームではない、何かが急接近しているのがわかった。

 かくしてそれが相手の腕から繰り出された、それはそれはどでかいゲンコツのグーパンチ、まさしく『ロケット・パンチ』だと見て取るや、この全身がひいいっと総毛立つビーグルだ。

「ななななっ、なんそれ!? うそやろっ、あかんやつやん!! マンガちゃうんやから、ロケット・パンチなんて反則過ぎるやろ!!」


 まっすぐにこちらめがけて飛んでくるでかい右手首、巨大な鋼鉄のカタマリに恐れおののくモーリィは、必死にペダルを踏み込んで機体を急旋回させる。追尾式だったらアウトだが、そこまでマンガではないことを心の底から願った。スピーカーからさすがにこちらもちょっと慌てたさまの相棒の声がする。

「なんや、そないなビックリ機能があったんかいな! ドッキリやん! 離れてて正解やったわ!! でもうまいことよけられたみたいやで? あっさり通り過ぎてるやんか、おまけにカウンターのチャンスやったりして!!」

「簡単にいうなや! でもそやったらこのスキに一発食らわしたるわ! じぶんもよう援護せいよっ、ん、なんやっ、あわわわわわわわわわわわっ!?」

 ぐるりと機体を旋回させてどうにか立て直した視界の先に浮かぶ謎のアーマーめがけて、すかさず手持ちのハンドガンを狙おうとしたところ、またしても激しいビープ音に見舞われる!

 なにもないはずの背後からの不意の警告に、ギョッとして振り返るビーグルの顔に絶望の影が走る。


 どうにかやり過ごしたと思ったはずの巨大なグーパンチからのしつこいビームの一斉射撃だ。完全に裏をかかれていた。

 これをよける間もなく機体に激しい振動を感じて肝が冷える。

 機体を襲う激しい揺れに背後に備えたフライトユニットが一部被弾したこと、画面に激しいノイズが走るのに頭部のカメラも被弾したことを一瞬にして理解すると、右手に装備したハンドガンを宙に投げ出して機体を急降下、海に墜ちるくらいの覚悟でその場からの緊急離脱をはかる!!

 命よりも大事なものはないとそれだけが頭の中にあった。

「ひいっ、そんなん反則やんか! よけたパンチから攻撃しよるなんて、卑怯すぎるやろこのあかんたれ!! 助けてくれっ!」

「おう、そやったら多少は稼いでやるからさっさと機体を立て直しい! まだキズは浅いやろ!! 基地までならギリギリ帰れるはずやっ、相手の注意を引いてやるさかい、ん、こっちに来よったで、ホシには興味がないんちゅうんかい、ええ根性やの!!」

「おおきにっ、おいっ、死ぬんやないぞ! 枕元に立たれてもしんどいわっ!! おわっ、また行きよったで、今度は左手のロケット・パンチやん!!」

 意気が合った犬族のコンビは口やかましい掛け合いがますますヒートアップする。いつもひょうひょうとしていたはずの相棒がいつになく熱いさまで口からツバ飛ばしていた。

「そないにワンパターンな攻撃を何度も食らうかいっ、追尾式でないならそないに出所がはっきりしとるテレフォンパンチなんて当たらへんてっ! よいしっょ、よけたで!! 背後から食らわされる前に一発見舞ったる!! そうれや!!」

「おうっ、やったやん! て、まるで効いてへんやん!! 当たってるよな、今のそのハンドガンの弾? あ、ちゅうかまさかあの敵さん、バリアっちゅうやつまで備えとるんか!?」

 意気盛んに食らいつく相棒の奮闘ぶりを目を丸くして見つめるビーグルの目つきが途端に怪しげな半眼のそれになる。
 旗色が悪いのはどう見ても変わらないようだ。

「くうっ、まだまだあるで! 胸のキャノンはハンドガンと威力がよう変わらへんから、この頭のレーザー食らわしたる!!」

「そないなもん効果あるんか??」

 他方、終始距離を置いてまるでやる気がなかったはずの敵のアーマーが俄然やる気を出して食らいついてくるさまに、ここに来てちょっとだけ感心するベアランドだが、いかんせんこの戦力差はどうにもならないなと内心で肩をすくめていた。 

「ああん、これはいよいよもって弱いモノいじめになってきちゃったね? モチベーションが下がることおびただしいよ! ん、てかあのアーマーの頭で赤くピカピカ光ってるのって、いわゆるレーザーなのかな??」


 やる気だけはあるようで、そのクセさっぱり空回りしている相手の機体のさまを不可思議に見やるが、それならばとこちらも手元の操縦桿を引き寄せてモニターの中のターゲット・スコープに狙いを付ける。

「なんか弱々しいけど、実は対人用だなんて言いやしないよね? 対アーマーだったらこのくらいの威力はないと! それ!!」

 いかつい大型アーマーのクマの頭部を模したような不細工なヘッドの左右の耳、もとい近接射撃用のビームカノンが激しく火を噴く!
 これには大慌てで機体を急降下させる敵の飛行型アーマーだ。

「あかんわ! まるでお話にならへんっ、こんなん大人と子供の力比べやんかっ、まるっきり!!」

「おうっ、もうええで! ええからさっさと逃げてまえっ、こないな化け物とやりあう義理なんてわしらみたいな安月給の非正規雇用にはあらへんわっ! バリバリ給料もろてる正規軍のひとらにやってもらお!!」

「ほんまやんなあ! あやうく死んでまうところやったわ、ちゅうか、シッポ巻いて逃げるっちゅうんわこういうことを言うんやんな! ほな、さいなら!!」

「おう、もう二度と会わへんで!!」

 ふたりの犬族は捨て台詞を吐くなりに最大戦速で戦域からの離脱、脇目も振らずに空の彼方へと消えていく。ものの10分にも満たない戦いは呆気のない幕切れを迎えた。

「あらら、逃げられちゃったよ! なんかすばしっこさだけは人並み以上だったね? 火力はそうでもないけど、このランタンでなければちょっと手こずるのかな? ま、何はともあれどっちもいいパイロットだよ、このぼくの見立てによるならば♡」

 逃げ去る敵のアーマーたちを見送りながら苦笑交じりにホッと息をつくクマ族の青年パイロットだ。これにはきはきとした口調のメカニックマンが通信機越しにねぎらいの言葉をかけてくれる。

「おつとめ、ご苦労さまでした! 少尉どの。被弾は確認しておりませんが、どうぞお気を付けてお帰りください。星は取れませんでしたがとてもいいデータが取れたものと思われます。おいしいお飲み物を用意しておきますので、寄り道などはなさいませんように」

「うん、ありがとう。とびっきりに冷えたおいしいカフェオレでも用意しておくれよ。たっぷりとしたとっても甘いヤツをね! それじゃ、これよりベアランド機、母艦のトライアゲインに向けて無事に帰還しますっと! めでたしめでたしだね♡」

 広く晴れ渡る青空のした、全身緑色のでっぷりと不細工な見てくれした大型アーマーが悠然とその帰路につく。

 それまで戦いがあったのが嘘のような穏やかなさまでだ。

 果たしてそれはほんのつかの間、嵐の前の静けさのごとくしたかりそめの平穏であったか。

 Part3

 母艦であるトライ・アゲインに帰還したクマ族の少尉、ベアランドを待ち受けていたのはくだんの同じクマ族の青年メカニックマンのリドル伍長であった。

 アーマーのコクピットハッチを開けるなり、そこにすかさず明るい笑顔で出迎えてくれる若い専属チーフメカニックに、こちらも明るい笑顔で応じるエースパイロットだ。

 ハッチから半身を乗り出した顔の前にスッと突き出された飲み物入りのボトルを反射的に利き手で受け取って、コクピットから全身を抜き出すとそれをそのままグビグビと一息に飲み干すでかいクマさんである。

「おっ、ありがとさん! んっ、んっ、んんっ、ん! ぷはあ、おいしいね! リドルの煎れるカフェオレは絶品だよ♡ お砂糖の加減も実にいいあんばいだしね!」

「はっ、ありがとうございます! 任務、ご苦労様でありました。あとはこちらですべて引き継ぎますので、何かこれと気になった点はありましたでしょうか? あとンクス艦長より、後でブリッジに上がってくるようにとの要請がありました。今後のことについてのお知らせがあるとのことで?」


「ありがとう! そうかい、おおよそはこれから合流する予定の増援部隊についてなんだろうけど、楽しみだね♡ それじゃ早速顔を出してこようかな? ん、まだシーサーの機体は戻ってないんだ? あの勝手にリニューアルされちゃったヤツ??」

 飲み干したボトルをまた受け取り直すクマの青年機械工は、見上げる大柄なクマのパイロットにまたはきはきとした返答を返す。

「はい! ウルフハウンド少尉どのは本艦の周囲を索敵警戒中、ついでに機体の稼働性能実験も兼ねたモニターの真っ最中だと思われます。あいにくこの担当はじぶんではなくビーガル副主任なので、詳しくはわからないのですが……!」

 了解するクマの隊長さんは苦笑い気味にうなずく。

「ああ、あのでかいクマのおやじさんね! シーサーとはそりが合わないみたいだけど、じきに仲良くなれるんじゃないのかな。なんたってリドルとおんなじ、あのブルースのおやっさんのお弟子さんだったて話だから、腕は確かなんだしね♡ シーサーもそんなに分からず屋じゃありやしないさ!」 

「はい! じぶんもそのように思います。それではこの場はこのじぶんが引き継ぎますので、ベアランド少尉どのはメディカルルームでお休みになってください。チェックは必ず受けるようにとのこちらは軍医どのの要請でありすので。じぶんが怒られてしまいます」

「ああ、あの陽気なおデブのおじちゃん先生か! おんなじクマ族相手だと力の加減がまるでやってもらないでちょっと痛かったりするんだよな。ま、そっちには後で行くって言っておいてよ、先に肝心のブリッジ、あの強面のスカンクの艦長さまのほうを済ませてくるからさ! それじゃあとはよろしくね♡」

「了解!!」

  最新鋭の大型戦艦の船底に位置するアーマーのハンガーデッキから、この最上階に相当するブリッジ、本船を指揮する責任者である艦長がいる第一艦橋まで歩いてたどり着くのはかなりの骨だ。階段なら優に数百段とあり、タラップなら気が遠くなるような頭上を見上げてこれをひたすらよじのぼらねばならない。

 よってショートカットとなるこのデッキ部から艦橋まで直通の専用エレベーターでそこに向かうクマ族のパイロットだった。
 これを使えるのはごく限られた一部のクルーのみだ。
 パイロットなら正、副隊長以上、メンテナンスの人員では艦橋から許可が降りねば原則利用禁止。

 高速エレベーターはものの十秒足らずでおよそ100メートルの高低差を駆け抜けてくれる。

 音もなく開いた扉の先には、広い通路ごしの真正面に艦橋への大きな専用気密シールド隔壁、大きく「01」と数字の描かれた両開きのスライドドアがあった。

 人気のない通路を大股の三歩で横断。


 するとあらかじめ登録してあった本人の生体認証でその到着を感知したドアが耳障りでない程度のおごそかな音を立てて左右へと開かれていく…!
 わざわざこんな音がするのは振り返らずとも艦橋への出入りがあったことを察知させるための措置なのだろうと思いながら、ずかずかとこれまた大股で中へと踏み込むクマ族の隊長さんだ。

 戦闘態勢の解かれた平時のブリッジ内は明るくて平穏な空気に満たされていたが、いつもなら入るなりに方々から掛けられてくるクルーたちの挨拶がないのにふと首をかしげるベアランドだ。
 みんな息を潜めているのか、誰もこちらを振り返らずにみずからの職務に専念、しているように見せかけてその実、この注意はどこかあさってのほうに向いているようにも見える…??

 なおさら首を傾げさせるクマ族だが、あたりを一度見渡してそこでまっすぐ正面に捉えたものにしごく納得がいく。


「ああ、なるほどね…! うちのボスが例のワケあり艦長さんと通信中なのか。なんか不穏な空気かもしてるけど、さては何を話してるのかね?」

 その場でぴたりと足を止めて頭の上のふたつの耳をそばだてるベアランドだ。不用意に話しかけて会話を中断させるより、盗み聞きしてやろうとにんまり顔で気配を押し殺す。

 艦長席にどっかりと陣取った椅子からはみ出した大きなシッポが特徴的なスカンク族の老年のベテラン艦長は、ついぞこちらを振り返ることはなかったが、それが見上げる正面の大型スクリーンの中で大写しとなる相手の艦長職らしき中年の犬族は、こちらをちらとだけ一瞥してくれたようだ。


 さては感づいているものか?

 相変わらず抜け目がなくていやらしいおじさんだな!と内心で舌を巻く。

 自然と苦笑いでしばしの沈黙からやがてスカンクの艦長がもの申すのに周りのクルー同様、黙ってこれにじっと耳を傾けた。

「……しかしだな、当該戦域の指揮を任されている責任者がいまだ雲隠れしたままと言うのは、現場の指揮にも関わるものだろう? 新型の戦艦戦力を温存したいのはわからないでもないが、指揮官としてはその姿を示してしかるべきものだよ……!」

 どこか浮かないさまの口ぶりしたベテランだ。
 そうたしなめるようにして頭上のモニターへと問いかける。
 そこに顔面度アップで大写しの白い毛並みの犬族は、こちらもいささか暗い顔つきして視線をどこかあさってへと向けて返すのだった。

「いやあ、こちらもいろいろと理由(わけ)ありでして……! 姿を見せたいのはやまやまなのですが、肝心のアーマー部隊がろくすっぽ稼働できないありさまで。面目ない。先生、もとい、ンクス艦長の応援をいただいてまことに感謝することしきりです。ついでに優秀なアーマー部隊も少し分けていただけたらば、感謝感激雨あられなのでありますが……?」

 ひょうひょうとした口ぶりでおまけのらりくらりとした言い訳をモニターのスピーカー越しに垂れ流してくれる犬族だ。
 言葉ほどには申し訳なくも感謝しているようにも思われない。
 それを察しているらしいこちらのスカンク族も冷めた調子でまた返す。背後で聞くクマ族、ベアランドは思わず吹き出しそうになるが、どうにかこらえて艦長席の影ごしに正面モニターの切れ者艦長のしれっとした顔つきをのぞいていた。


「パイロットを選り好みしすぎなのだろう、しょせんキミは? みずからができるからと言って、それを他者にまで求めてばかりいては誰もついては来られまい。加えてそう、己の本心をこれと明かさないとなればなおさらだ……」

「いやあ、なんでもお見通しなんですなあ、こいつはまいった! 確かに返す言葉もありません。艦はこれを本拠地としているから隠していたのですが、心強い援軍があるならば今後は堂々と顔を出せるでしょう。話じゃ、ほかにも援軍はあるようだし?」

「うむ。キミの古くからの戦友であったよな? ならばアーマーの補充はそちらに頼めばよいのではないか? あいにくこちらにはその余力がない」


「はあ、しかしながら同輩には極力、借りをつくりたくないのでありますが。あいつはがめつい。食欲から性欲から、何かと欲張りなのはよくご存知でしょう? そのせいもあってかこのクルーもクセが強いヤツらばかりだし」

 淡々とした会話の中にどこかピリピリとした空気が漂う……。

「ふうーん、あのおじさんもこっちに出張って来るんだ? なんだか騒がしくなりそうだな♡」

 話の流れから誰のことなのかおおよそで想像がつくクマ族の隊長さんは、したり顔してこのまあるい頭をうなずかせる。
 そろそろ出てもいいもんかなとタイミングを見計らった。

「腕のいいパイロットといいアーマーはできればセットで保持したいものです。戦場では何かと不足しがちなものではありますが。わたしは部下が無駄に命を落とすことがないようにこのあたりには特段に気を遣っておりまして、そのせいで今回のような不足の事態を招いたのはまことに遺憾であります。そのあたり、折り入って頼みがあったのですが、今はとどめておきます。いらんクレームを付けて来そうなくせ者がいるようなので……!」

 あ、やっぱりバレてる……!

 モニターの中の犬族の艦長さんが何食わぬさまして、そのクセしっかりとこちらに視線を向けているのに苦笑いが一層濃くなる大型クマ族だ。するとやっぱりこれを察知していたらしいスカンクがこちらを見もせずに言ってくれる。

「出てきたまえ、ベアランド君。この彼はキミも旧知の仲だろう? そちらに増援として行く必要もあるかもしれない、今のうちに顔合わせをしておいたほうが話がスムーズにゆくだろう」

「おっ、さすがはせんせい! よくわかってらっしゃる。おい、出てこいよでかグマ! じゃなくてベアランド、だったか?」

 でかグマ……!

 ひさしぶりに耳にする呼び名だった。
 これを口にするのは頭上の有名軍人さま以外にはいない。
 かくてふたりに促されて仕方なしに顔を出すそれは大柄な熊族の隊長さんだ。苦笑いして真っ向からモニターの中の艦長職と向き合った。



「あはは♡ こいつはまいったな、ぼくのこと覚えててくれたんだ、教官どの? 悪漢ジーロ、もとい、ジーロ・ザットン大佐どの? 性格ぐれてる鬼教官どのが、現場に復帰されたとは聞いてはいたんだけど。まあ、あんまりいいウワサは聞かないよね!」

「おかげさんでな? 生意気な生徒に好き勝手言われて、そのままおめおめと引き下がるほどにはひとができていないんだ、このぼくは。言うだけのことがあるものか、きちんとこの目で拝ませてもらいたいもんだし。そちらさまはとっても優秀な戦績を納めているらしいな?」

 最後のは皮肉なんだろうと受け流しながら、苦笑いで応じる。

「それはどうだか? ご想像にお任せするよ。だからってまさかこのぼくをトレードしようだなんて言いやしないよね、腹の内がさっぱり読めないこのやり手の艦長さんときたら?」

「ふん、それほどとぼけてもいないさ。どうせならもっと従順で扱いやすいヤツのほうがいい。おまえさんのようなやることなすことおおざっぱで力任せなクマ族よりは、そうさな、慎重でありながら機敏でかつ鼻の効く、ま、このおれのような犬族あたりがベストなんだろうな」

「?」


 何か含むところがありそうな言いように、隣の艦長席のスカンクとちょっとだけ目を見合わせるクマ族だ。
 小首をかしげながらにぼそりと小声で隣に声を掛ける。

「犬族? ああ、そういやそんな新人くんたちがじきにこっちに来るんだっけ? このぼくの部隊に配属される予定の??」

「うむ。今日中に合流の予定だが。まったく抜け目がないことだ。機密情報をどこで聞きつけてくるものやら…!」

「フフ、まんまと横取りされないよに気をつけないとね! まずは新人くんたちをしっかりと歓迎してあげないと」

「そのあたりはキミに一任する


「了解♡」

 そんなしてふたりでごにょごにょとやっていたら、モニターの向こうの犬族が何やら浮かない顔してしれっと言ってくれる。

「ああ、まあそのあたりのことは後々に。その前にそちらの隊長どのには新人くんたちを引き連れて、一度こちらに顔を出してもらいたいもんだ。よろしいですよね、先生? こちらも丸裸でこの艦を敵にさらすわけにもいかない都合……」

「丸裸?」

 どういうことなんだと右手の艦長席のンクスに改めて目を向けるが、大ベテランの艦長はさてと肩をすくめさせるのみだった。
 そこにフッと鼻先で笑うみたいなノイズを残して白い犬族がおもむろに敬礼してくれる。

「では! 久しぶりの再会、まことにうれしく感慨深く思います。とりあえずそっちのパイロットも含めて。互いの健闘と勝利を祈りまして、今回の通信を終わらせていただきます。あと、アーマー部隊はすぐにでも遣わせていただきたいものであります。でないとこちらの身動きがとれませんので……では」

 何やら好き勝手なことをひとしきりほざいて相手の犬族の艦長からの通信は一方的に閉ざされることとなる。
 しばしの沈黙の後、クマ族の隊長はおおきく左右の肩をすくめさせる。

「まったく相変わらずだよね、あのおじさん! いいトシなんだからもうちょっと丸くなってもいいもんなのに」

「キミのひとのことは言えないのではないか? まあ、ある意味打って付けなのかもしれないが……」

 こちらも多分に含むところがありそうな物言いのキャプテンに、当のチーフパイロットはあっけらんかと応じてくれる。

「何が? そう言えば艦長はあのおじさんの直属の上官だったりするんだよね、その昔は? だったらぼくって孫弟子あたりにあたるんだ? あんまり自覚がないんだけど」

「なくてよろしい。今の話の流れでもう伝えるべきことは伝わったはずだ。それにつき何か質問はあるかね?」

 真顔で問うてくるンクスに、のんびりしたクマの隊長さんはさあと頭を傾げさせる。

「まあ、例の新人くんたちはこっちで引き受けちゃっていいんだよね? ブリッジにもしょっ引いて来いって言うんなら、連れてくるけど、いざ現場方の最高責任者さまがお相手とあっては、きっと震え上がっちゃうんじゃないのかな♡」


「その必要はない。すべてキミに一任する。言ったとおりだ」

 まったくしゃれっ気のない冷めた顔の艦長に内心で肩をすくめるクマさんだが、折しもそこで静まり返っていた周りのオペレーター陣にちょっとした動きがあったようだ。

 不意の電子音とともにいくらかの応答を交えて、中でも特に見覚えのある犬族の男がすぐさまこちらに振り返って報告を入れる。

「艦長、増援部隊、ビーグルの新型が二機、まもなく艦に合流するとのことであります! 受け入れは二番デッキでよろしいでしょうか?」

「うむ。両機とも、大いに歓迎すると伝えてくれ」


「お、新型のビーグルか! それって例のアレだよね? 何かと問題ありってうわさの♡ ちょっと見るのが楽しみだな、もちろん新人のパイロットくんたちもだけど! それじゃ早速、ハンガーにとんぼ返りして出迎えに行ってくるとするよ」

「ああ、アーマー単体の長旅だったのだからまずは休ませてやるといい。部屋は用意してあるはずだ。あとキミも、ちゃんと休養を取ることだ。パイロットとしてはこれもまた重要な責務ではあるのだからな?」

「了解♡」

 くるりときびすを返してブリッジを後にするアーマー部隊隊長だった。艦長からの忠告に軽く右手を挙げて答えながら、さてこれから忙しくなるぞっ!と舌なめずりしてズカズカと来た道を戻っていく。
 やがて艦に合流することになる増援部隊のありさまに想定以上の驚きがあることをまだ知らない彼だったが、波乱に満ちた戦いの予感は心のどこかにはもうすでにあったのかもしれない。


 以下、#011へ続く…!



 


Part3の流れ、プロット
ベアランド、母艦トライアゲインに帰還。
リドルの出迎え。
ウルフハウンドはまだ出撃中。くだり~
ベアランド、ブリッジに上がる。
艦長、ンクス、戦域統括官のジーロと通信中。
ベアランド、艦長と会話。
援軍の説明。
#011へ~…


 





 ドラゴンフライの兵装
 ミドルレンジのハンドガン
 ショートブレード
 胸部装備 実弾カノン
 頭部装備 レーザーカノン



状況
 ベアランド ランタンのコクピット内から
 リドルと交信
 ジーロ・ザットン ダッツとザニー
 モーリィ、リーンと交戦この

記事は随時に更新されます(^o^) 応援よろしく!

プロット

モーリー リーン 登場
ベアランド隊と会敵



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おデブなクマのブゥさん♡ 新規イラスト第二弾!

おデブなクマさんサーファーズ! ブゥとビフのコンビで鮮烈デビュー!! 無料の画像DLデータも公開します(^o^)

 前回の記事で作成したブゥさんのサーファースタイルに、おデブなクマさんシリーズのビフも飛び込み参加させました♡
 デブデブサーファーコンビの爆誕です(^^)/

 ボディやボードのロゴを取っ払った、シンプルバージョンです。イラストソフトがあればお好きなロゴを入れることもできます♡ 塗り絵にも(^^)/ ダウンロードデータは以下より↓

 さらにロゴを入れた完全(?)バージョン! 画像の下から無料の画像データがダウンロードできます(^^)

 とりあえずベタ塗りしました(^o^)

 ベタ塗りパターン① オーソドックスなカラーリングです。

記事は随時に更新されます(^^)

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おデブなクマのブゥさん♥ 新作イラストリリース!

おデブなクマのブゥさんこと、Bear Booのイラストを新しくいたずらにはじめちゃいました(^o^) とりあえず夏っぽいヤツですねw

 とりあえず夏っぽいヤツで、サーファーのスタイルなのですが、いわゆる前回シリーズのLGBTQイメージの展開もするかどうか思案中です(>_<) イラストは無料でDL可能な画像データとして公開予定! ご自身の利用目的の範囲での健全なご利用をお願いします<(_ _)> 当該画像の著作権は譲渡不可です。

サーファースタイル・ブゥさん・線画

サーファースタイル・ブゥさん・ロゴ入り線画 塗り絵にもなります!

サーファースタイル・ブゥさん・ロゴ入りベタ塗り シンプル・カラー①

記事とイラストは随時に更新されます♥ イラリクOK!

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ルマニア戦記/Lumania War Record #009

#009

Part1

 ハンガーデッキでのすったもんだから、およそ二時間後――。

 スカンク族のベテラン艦長から、内密の話があると密かに招集をかけられていたアーマー部隊・正隊長のベアランドだ。

 それだから今は艦の艦橋(ブリッジ)もその真下にある、第一ブリーフィングルームで相棒のオオカミ族、メカニックの若いクマ族らと共にこれを待ち受ける。

 軍でも最大規模の新造戦艦だ。

 おまけ艦内でも一番の広さの会議室内には、およそ100人くらいは収容できるだろうテーブルと椅子があったのだが、そこに腰掛けるでもなく三人だけでぽつんとその場に立ち尽くしていた。

 ややもすれば、今は無人の壇上に、小柄な初老の紳士然とした本艦艦長どのが現れるはずだ。

 無機質な灰色の壁に掲げられたデジタルとアナログ式の時計は、どちらも約束の時間を少し過ぎていることを指し示していた。そちらにちらりとだけ視線をやって、ちょっと苦笑い気味に茶化した言葉を発する青年パイロットだ。

「あらら、約束の時間になっちゃったよ。やっぱりこんなでっかい軍艦の艦長さんともなると、いろいろと忙しいもんなんだな? こっちもこんなラフな格好できちゃったけど、別にかまわないよね♡」

 朝の荒くれた現場に顔出しした都合、はじめはしっかりと着込んでいたはずのパイロットスーツを、今は簡易式の状態に軽量化させているのを指しながら、隣でやや仏頂面のオオカミの同僚、ウルフハウンドに問いかける。
 すると朝っぱらのゴタゴタからまだ不機嫌面の灰色オオカミは、そんなしたり顔したクマにどうでもよさげに返した。

「構わねえだろ。俺だっておんなじ格好だし、身軽さにこだわる犬族のワン公どもなんてな、みんなアーマーに乗り込む時だってこのまんまがザラなんだぜ? 言うヤツに言わせれば、このスーツ自体がもう時代遅れのシロモノだなんて言うくらいだしな」

「ああ、よその戦艦じゃ、今時はみんなそれなりこだわって専用のスーツを仕立てているって言うもんね? 艦長さんの趣味嗜好とかでさ?」

 脳天気に笑う隊長に、またこの傍らの若いクマ族が目を丸くして言葉を発する。

「そうなのでありますか? 国や地域によってそれぞれ特色があるのは知っていましたが、おなじルマニアの軍の内部でもそんな違いが? でも自分としては、アーマーに搭乗する時はしっかりとした保護パーツを付けることをおすすめします!」

「ああ、これのいかつい胸当てと肩のパーツがこんな風に外れるなんて、はじめ知らなかったもんね。あ、でもそういうリドルこそ、そんなチャチなノーマルのスーツじゃなくて、ちゃんとしたパイロット向けのやつを仕立ててもらわないと! 補給機とは言え戦場には出るんだから、そこらへんはね?」

「あ、いえ、じぶんはあくまでただのメカニックでありますので、このままで……」

 細身で体力にいささか自信がないからか、途端に遠慮して頭を引っ込めるのに、体力自慢のでかい図体のクマの脇から、痩せたオオカミがのぞき込むようにして大きな口を開く。


「とか言いながら、おまえさん、しっかりとホシを取っているんだろう? 立派なパイロットじゃねえか! だったら身なりもそれなりにしておけよ、そのほうが何かと箔が付くだろう」

「いえっ……」

 すると何やらやけに浮かない顔のメカニックに不可思議そうなオオカミの副隊長だが、あいだに挟まれたクマの隊長はかすかに肩をすくめさせるのみだ。

「ふうむ、ちょっと考えなくちゃいけないんだろうな……! おっと、ようやく艦長どののお出ましだ! てか、ひとりきりなんだね。こんなに見てくれでっかい軍艦なんだから、副官のひとりくらいいてもいいはずなのにさ?」


 ベテランの艦長が無言で会議室の壇上に上がるのを見ながら不思議そうなベアランドのセリフには、この横からオオカミが若干揶揄したような調子で返す。

「ふん、よもや艦長がスカンクじゃ、誰も怖がってこの横に立ちたがるヤツがいないじゃねえのか? 犬族なんてみんな逃げ出すだろう。俺もまっぴらだしな!」

「そんな……! あれって世間でも名の知れた軍人さんじゃないか? 確かに鼻が利く人間はあんまり相性良くなさそうだけど、だからってね。あっ、でも確かここのブリッジのオペレーター、いかつい防毒マスクを身につけていたのがいたけど、あれって犬族だったっけ??」

 ひそひそ話をしていたのが、どうやらあちらにも聞こえていたらしい。かすかに咳払いして何食わぬ顔のスカンクの艦長どのだ。

「んっ、待たせて済まない。今はなにぶんにひとりだけなので、何かと手間を食ってな。そう、本来は犬族の優秀な副官がいるのだが、今はあいにくとよそでいろいろと調整中なのだ。いろいろと根回しというものをだな。ところできみたち、そんなに距離を取らないで、もっと近くに来たらどうなんだ?」

 暗に言い含めた言葉付きにまたこの肩をすくめる隊長さんだ。
 隣のオオカミが絶対にここから動かないと全身で拒否しているのにまた肩をすくめて、仕方もなしに曖昧な返答を返した。

「ま、どうかこのままで。お気を悪くしたなら謝るから。わざわざぼくらだけ呼んで話すってことは、それなりの機密事項なんだろうけど、なんとなく予想はつくしね? おおざっぱな今後のスケジュール、こんなカンジだから覚悟してくれって??」


 上官に対するにはいささかゆるくておまけ鷹揚な態度をしたでかいクマに、それを気にするでもない小柄なスカンクのおやじさんは背後のひときわおおきなシッポを一振りすると真顔で返す。

「ふむ。察しがいいな? そこまでわかっているなら手間は取らせない。なにかと機密が多い本艦ではあるから、この動向をあまり声高にアナウンスするわけにもいかないのだ。今は最小限度の人間で共有するだけでよしとして。だがベアランド隊長、私が招いたのはきみとウルフハウンド副隊長のみで、そこの若いクマ族くんまでは呼んだ覚えはないものだが……」

「ああ、この子は多めに見てあげてよ。こう見えてぼくらとおんなじ戦場に立つパイロットでもあるし! メカニックの頭を張る都合、今後のことは極力知っておいたほうがいいはずだから。大丈夫、信用できるのはこちらできちんと保障するから」

 でかい隊長の隣で身を小さくするクマのメカニックマンだが、もう片方のオオカミの副隊長は無言でうなずいてくれる。
 これに初老の艦長どのもまた無言でうなずいた。

「良かろう。では手短に話す。説明は一度しかしないので心して聞いてくれ。まず本艦の今後の予定、この進路についてなのだが……」

 言いながらスカンク族が背後に視線を巡らせるのに、自然とそちらに視線をうながされる三人だ。背後にはおおきなスクリーンがあって、真っ白だったそこに見慣れた大陸のある一部地域の拡大マップらしきが映し出される。

「今わたしたちがいるのが、このルマニア大陸西岸の第三軍港なのだが、本日中にここから南へと艦を発進させる。本格的な作戦行動に移るためにな」

「この艦が建造されていたのが、第七軍港だよね、おなじく西岸の? もろもろの都合で一度は北上したわけだけど、目的地はまったくの反対方向だったんだ。てことは……!」

 納得したさまのクマ族がくれる意味深な目付きに、真顔でうなずく艦長はさらに重々しげにこの言葉をつなぐ。


「大陸外での特務作戦だ。本艦、トライ・アゲインは中央大海、セントラル・オーシャンを南西寄りに南下、その先の第三大陸・アストリオンへと向かう。作戦の詳細は後日改めて通達するが、心しておいて欲しい。だがその前に、やるべきことがある」

「? アストリオンか、いわゆる『南の大陸』ってやつだよね? 本格的な軍事作戦をよそでまで展開するのはあまり乗り気になれないけど、直接『西の大陸』に行かないのだけはホッとしたよ。でも南に下るのには、それってちょっとした関門があるよね」


 相手の言わんとすることおおよそで了解した顔でも顔つきどこかビミョーなさまのベアランドに、隣からウルフハウンドがこちらもおおよそ納得したさまで言ってくれる。

「海上の拡大領地、『ギガ・フロンティア』ってヤツか? 海の上に無断でやたらでかいフロートベースをいくつも建造したのはいいもの、返ってごちゃついて今では敵さんのいい隠れ蓑になっちまってるっていう、あれだろ?」 

「過去の苦い経験から、軍事施設を人里離れた海上に建設したまではいいものの、四方を海に囲まれた要塞はデメリットばかりが目立つのだろう。かなりの苦戦を強いられているらしい」

「つまりはいざ考えなしの拡大路線がまんまと破綻しちゃってるいい例なんだろう? 放棄しちゃったら敵の前線基地にされちゃうし、いっそ海の底に沈めちゃえばいいんじゃないのかな?」

 歯に衣着せぬ言いようには、少しだけ眉をひそめる艦長だ。
 これにでかいクマの隊長が野放図な放言かましてくれる。
 いよいよスカンクの顔色が曇った。

「気安く言ってくれるな。そんなに簡単に沈められるような規模ではないのだぞ? それがいくつも海上に点在する、ある意味で本格的な戦闘行動向けの大規模演習地域だ」

「演習、じゃなくて、実戦だろ? なるほど、つまりはそこでこの艦のならし運転も兼ねての実戦行動をやらかすんだ。いざ南の大陸に向かうまでの演習を兼ねて? ぼくらパイロットやクルーの練度を上げるにはさも打って付けなのかね♡」

「うむ。ちなみにそちらでは人員の補充、アーマーの補強も予定している。次期主力機と目される汎用型の新型機種だ。パイロットの詳細はじきに隊長であるベアランドくんらのもとに届くだろう。目にしておいてほしい」

「期待できるのかね? 実戦での運用実績がおぼつかない新型機ばかりになっちまうんじゃねえのか、この艦のアーマーってヤツは??」

 いぶかしげに首をひねるオオカミ族に、ふたりのクマ族がのほほんとしたさまで応じる。

「さあ、これとセットでやって来る、パイロットくんたちの腕に期待ってところかな?」


「じぶんとしてもとても興味があります! 次期主力機は、確か完全飛行型の機体とのことですので。現行主力機のビーグル・ファイブの後継機だとかで?」

「ああ、そんな話だったっけ? いや、そっちはもっぱらビーガルのおじちゃんたちだとかが受け持つことになるんだろうけど。リドルはこっちのお世話で手一杯だろう?」

「とりあえずはここまでだが、質問があるなら答えよう。ないなら、解散だ。全員、ご苦労だった」

 かいつまんだ説明だけで終わった極秘のミーティングだ。
 しごくあっさりと会の閉幕を告げる艦長どのに、三人のクルーたちは無言で敬礼を返す。

 その日の夕刻、軍港を出発した巡洋艦は、沖合で大空へと浮上。夕闇の中を悠然と南へと向けて旅立つのだった。


 次回、#010へ続く…!

※まだ執筆途上です。随時に更新されます。(予定)


プロット
 ブリーフィングルーム ベアランド ウルフハウンド リドル       → ンクス艦長 今後の予定~ 
 ギガフロート フロンティア ロックランド
 アストリオン(南の大陸)

 

カテゴリー
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ルマニア戦記/Lumania War Record #008

#008

 「寄せキャラ」登場!

Part1

 大陸西岸の某地方国家の港に立ち寄った新造戦艦は、そこで別行動を取っていた仲間と合流、これを迎え入れることになる。

 無事に戦友との再会を果たすベアランドたちとウルフハウンドだが、その喜びもつかの間、喜ばしくない現実とも向き合わなければならなかった。地方の前線基地を共に旅立った僚機がいずれもこの途上で脱落、どうにか母艦へとたどり着いたのは新型機の副隊長ただひとりだけであったのだ。

 国境のギリギリを、相当に険しい道のりだったのだろう。

 半ば予想はできていたことだとクールな口ぶりで言うオオカミ族に、あまり深くは聞かないまま、内心では仲間達の無事を願うクマの小隊長だ。命があればまた巡り会うこともあるだろう。

 何はともあれ、まともなアーマーが若いメカニックのクマ族の旧型機を含めて、たった三機しかないのはいかにも致命的だ。

 パイロットも含めて早急な増強を申し出るも、あまりかんばしい顔はしてくれないスカンク族の有名ベテラン艦長である。
 このあたり、オオカミの相棒に説明するのも気が引ける隊長だ。犬族の上位種とも言うべきオオカミに取って、やはりスカンクは身近にいてほしくはない厄介な性質と習性の種族だろう。
 ブリッジクルーの犬族がしっかりと首に防毒マスクを付けていたのを今さらながらに思い出して苦笑いするベアランドだ。

 そして問題は、まだほかにもあった。


 巨大な戦艦の内部で、多種多様な種族が一同に介する社会では多種多様なあつれきやものの考え方の相違が発生する。
 軍隊のような複雑な階級制度と職種が交わる場ではなおさら。
 かくしてそれが、この翌日にははっきりとしたカタチで勃発することになる。


 強敵ひしめく激しい戦の最前線のさなか、まだ若きパイロットたちの前途は実に多難なのであった。


Part2

 巨大な空飛ぶ戦艦、空母級の船底に位置するアーマーの整備区画(デッキ)は、生まれつきに大柄なクマ族の男をもってしても、天井を見上げるのも辺りを見渡すのもホネなくらいに広大であり、そこはいつでもやかましい騒音で満たされている。

 最後尾のエンジン区画とも隣り合わせなのも手伝ってか、重たくて低い震動がひっきりなしに足下を伝わるような中を、今はそれにも負けない怒号がガンガンと響き渡っていた。
 それはまたあたりの喧噪にも伝わって異様な熱気のごときものを空気にはらませた。

 せっかくいい気持ちで寝ていたところを血相を変えた若い整備士にせき立てられて、のんびりした大股で現場に顔を出したクマのパイロットは、ちょっと困り顔でこの一角にできたひとだかりを眺める。

 ケンカがおっぱじまっているのかと思いきや、殺気立つ気配と周りの好奇心旺盛なギャラリーの顔つきや雰囲気から察するに、まだどちらも手を出すまでには至っていないらしい。

 どうせなら終わらせてくれてたらよかったのに……!

 辺りがうるさいからとそんな内心の思いをため息交じりに吐露してしまう茶色いクマの隊長さんだ。
 そんな良からぬ独り言を知ってか知らずか、この背後で慌てふためくリドルが、ベアランドの背中を無理矢理でも押して進ませる。華奢な身体つきでけなげなさまに苦笑いがより強くなる。

 正直、面倒くさかったが、チームメイトと世話になるメカニックマンのいざこざともなると隊長としてほっておく訳にはいかないものだ。またため息ついてみずから一歩を進ませた。

「あ~らら、もうはじまっちゃったのね! まったくうちのオオカミくんたら何かって言うとケンカっぱやいんだから。ぼくたちみたいなギガ・アーマーのパイロットが、自分がのっかるアーマーの整備をしてくれるメカニックマンともめたって、いいことなんて何もありゃしないのに……!」

「しょっ、少尉どのっ、早く! 相手はこの艦で一番のベテランで実力のあるメカニックどのであります!! おまけに見上げるくらいに大きなクマ族で腕力もありそうだし!?」

「はいはい。てか、この艦で一番のメカニックは現状、このぼくのランタンを任されてるきみだろ? 泣く子も黙る名メカニック、かのブルースのおやっさんの最後の愛弟子でもあるんだから♡ だったらここはきみが仲裁するのがスジってもんだよ」

「むむっ、無理であります!! ウルフハウンド少尉どのはめちゃくちゃ殺気だってるし、殺されてしまうであります!!」

「はは、かもね? うわ、ギャラリーがすごいや、どれどれ、ちょっとごめんよ、どいたどいた、さっさと通して……邪魔だな! もうっ、いいからみんなあっちに行っておいでよ! 巻き込まれたらぜったいケガするんだからさ?」

 かねてよりエースの呼び声高いオオカミのパイロットと、実質この場を取り仕切るベテランのクマのメカニックの一騎打ちだ。
 このまたとない見世物を見逃すまいとぎゅうぎゅうにひしめく有象無象たちのスクラムを、力ずくで無理矢理にでもひっぺがしてズカズカと輪の中に入り込む。


 すると衆人環視の人垣の真ん中には、元から見知った人影とつい最近に知り合った顔がお互いにひどく苦み走った表情でにらみ合っているのがわかる。
 どちらも視線を外さないが、殺人光線みたいなのがバチバチと空気中でショートしているのが目に見えるような険悪さだった。

「あ~らら、こいつはまた、えらい剣幕でにらみ合っちゃってるね! 朝っぱらから何をそんなに怒ることがあるんだか??」

「そ、それが、その……!」

 あわわと困惑する若いクマ族を振り返るに、その視線の先にあったものを見て、ただちにそれと理解する隊長さんだ。

「ああ、なるほど、そういうことね! シーサーのアーマー、ギャングだったけ? 見たところボディの一部がカスタムされちやってるけど、さてはそれで機嫌をそこねちゃったんだ♡ まあ、この先を考えたら仕方ないっちゃあ、仕方ないんだけど……!」


 いがみ合うふたりの男たち越しに見上げた、目の前の巨大なハンガーデッキに格納される、大型ロボット兵器のありさま。
 これを見るなりしきりと納得するベアランドに、その横で所在なげな若いクマのメカニックが声をひそめてまた言う。

「はい! 海上での作戦を考慮して、そちら仕様のパーツに脚部を換装、フルカスタムしたのですが、ウルフハウンド少尉どのはこれを聞いていないとご立腹で……!」

 ひどい困り顔で見上げる青年に、こちらもまだ若いクマのパイロットはひどく白けた表情でこれを見返した。

「だからって腹を立ててもね? というか、リドル、きみは聞いてなかったのかい? ぼくら新型アーマーの専属で、言えばチーフメカニックともなるきみがさ? だとしたら、そっちのほうが問題じゃないかと思うけども……」

「ああっ、それは……!」

 しどろもどろで言葉に詰まるリドルに、さてはここにも問題があるなと内心で考えあぐねるベアランドだ。
 目の前で鼻息荒くしたクマのベテラン整備士は、見た目まだ若く経験の浅いだろうこの同僚のメカニックをそもそもかろんじているような節が見られるのが、傍目にも明らかだった。
 内心で大きなため息ついて、仕方もなしに一触即発の現場に最後の一歩を踏み出す。


「はいはい! やめたやめた、おふたりさん! ギャラリーに囲まれて完全に見世物になっちゃってるじゃないか? シーサー、落ち着きなよ、何も悪いことなんてひとつもありはしないだろう? きみのその、ギャング、だったけ?? 見た感じ前よりも立派になったじゃないか♡」

「ちっ、ギャングスター、略してギャングだよ。いいや、冗談はよしてくれ! こいつのどこが立派っだて言うんだよ、大将? こんな不細工でぶっとい脚を付けられて、走るどころか歩くのだって一苦労だ! おまけにこの俺さまの了解を得ないままに、よくもこんなふざけた改造を、おい機械小僧、おまえは関わっていないんだよな?」

「あっ、はっ、はいっ、少尉どの……!」

 荒くれるオオカミににらまれて生まれつき華奢なクマ族は、とうとう身体のでかいベアランドの背中に隠れてしまう。
 やれやれと肩をすくめる隊長だ。
 そこにベテランの大柄で恰幅のいいクマが食ってかかる。
 内心のため息が尽きない隊長さんだ。

「冗談じゃない! そいつはこっちの台詞だよ。どいつもこいつもふざけやがって、まずそのギャングってのも、紛らわしいったらありゃしないや。いいかい、こいつの正式名称はハウンドだろう。我らがルマニア軍を代表するビーグルシリーズの上位機種が、なんでそんな下品な名前で呼ばれにゃならないんだ? あとぼくがやったことに間違いなんて一つもありゃしない」

「うわ、よく見たらこのぼくよりもデカいんじゃないかい、このクマさん??」


 のしかかってくるような圧迫感と鼻息の荒さにちょっとだけ引いてしまうベアランドだが、まさしく野生の熊さながらの迫力とボリューム感たっぷり! オヤジのメカニックはその見た目にはあまりそぐわない饒舌な口ぶりでここぞと嘆き節をがなり散らしてくれる。

「聞いてくれ、隊長さん、このバカ! もとい、この副隊長のパイロットどのは、アーマーで海の上を走るとか言いやがったんだぜ? よりにもよって海の上をだ! 聞いたことがない、重たくバカでかいギガ・アーマーで大波荒れ狂う海の上をドカスカ走ろうだなんて!? 無理だね! 絶対に! 賭けてもいい!!」

 真っ赤に上気した顔で牙をむくオヤジに、これとおなじクマ族のパイロットもややたじろいでしまうくらいだ。
 そのくらいに怒りと殺気に満ちあふれたメカニックマンだった。ここが戦場の最前線だというのが改めて身にしみる。
 後ろで若いメカニックがひいっと悲鳴を発するが、先が思いやられて自然と天を仰いでしまう。


「ああ、まあ、なるほどね! 言い分はわかるんだけど、じぶんの命を任せた機体を無断でいじられるのは、やっぱり気分がいいものじゃないのはわかるだろう? んん、だからほら、ここはお互い様ってことで、納めてくれないかな? だめならケンカ両成敗ってことでこのぼくがふたりをぶん殴ってもいいんだけど、それだとケガするだけ損だろう? シーサー、そんな顔しない! ほんとに殴るよ? ね、えっと、イー……、ビーガル、曹長?」

 牙をむいてうなる同僚のオオカミ族には、あっちに行ってくれとこちらも牙をむいてしっしと追い散らす隊長だ。
 渋々で踵を返す灰色オオカミは舌打ちしながらギャラリーを掻き分けみずからの機体、銀色の大型ロボットへと歩いていく。
 とどのつまりで機体の状態を確かめるべくだ。
 本心ではわかっているくせに、本当に素直じゃないなとその背中と太くて立派なしっぽを見送るベアランドだが、すぐにも残るクマのオヤジへと向き直った。


 若い隊長の仲裁で修羅場を無事にやり過ごした中年の整備工は、ちょっとどっちらけたさまであさっての方角向くと、改めて正面へと向き直る。気まずげな表情で、大きな頭をぺこっと上下させていくぶんかトーンを落とした口ぶりで言うのだった。

「ああ、ベアランド隊長、すまなかったね。年甲斐もなくついかっとなって、昔よりはだいぶ落ち着いたんだが、若くて威勢のいいやつを前にするとどうしても……! いざケンカになったら勝てやしないのはわかっているんだ。あんたには謝っておくよ。それと名乗るのはこれで二度目だけど、念のために。イージュン・ビーガルだよ。ビーガルと呼んでくれ。あとそっちの小さくなってくる若造君もね!」

「若造、ね! いろいろと楽しくなりそうだ。大丈夫なのかね?」



 





 

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ルマニア戦記 #003

第一話 「実験機で初出撃!」

#003

 航空高度、およそ500メートル。
 手元の高度計ではそのように計測される、そこそこの低空飛行で機体が安定するのを確認する。
 頑丈なシートに太いベルトでみずからの身体をくくりつけた大柄なクマ族のパイロットは、しごく納得のいったそぶりでうなずいていた。

「ふうん。まあ、それなりに機体は仕上がっているのかな? 今のとこおかしな機体のブレや無駄なエンジンのうなりもしないし、すこぶる安定してるみたいだ。さすがに本国肝入りの新型実験機なだけのことはあって……! なるほどね、ならいざ本番の実戦って時もかくありたいもんだよな♡」

『……はい! というか、もう既に実戦ではありますが? ベアランド少尉どの! そちらはもうじき通常の通信回線可能域から抜けてしまいますので、非常時の通信は本国の衛星を介した秘匿回線にて願います。敵国側からの妨害電波の余波ですでに雑音、入っておりますか??』

 ただの独り言の感想に、すかさずして打てば響く小気味のいい返答だ。
 そんな回線越しの若い整備士の声には全幅の信頼と共にはっきりと応答するエースパイロットどのだった。

「わかってる! 大丈夫、信頼してるよ、コイツの性能と優秀なメカニックの腕前をね? あんまり無茶しないでくれとは言われてるけど、多少は無理しないと機体性能の試験にはならないから、まあ、そのあたりはさ……! せいぜい腕まくりして無事の帰還を願ってておくれよ♡」

「はっ、それはもちろんであります! ですが何度も申し上げますように、そちらの機体はまだ組み上がったばかりのあくまで実験機ではありますので……」

※↑挿し絵は一代前のデザインの主人公です(^^;)
 この第一話は全編以前のデザインで、第二話以降から最新版の主役のキャラデザインがお目見えします♡ ちなみにこちらもヒマがあれば随時に更新予定です♪

 既に通信回線が限界なのか、あるいはまだあどけなさの残る若いクマくんの言葉尻が濁っているのか、しばしの沈黙が起こる。
 だが普段から慌てず騒がず、何事にも鷹揚な態度と口ぶりのベアランドはまるで気にせずにひとりでしげしげとこの身の回りを見回した。
 全てが新品で鼻孔を刺激するほど真新しい匂いのこもるコクピットは、どこにも染みのひとつとありはしない。

「はあ、ほんとに安定してるよな? これが初めての稼働試験とは思えないくらいにものすごく乗り心地ってものがいいよ。このシートもこのでかい身体に合わせて無理のないサイズだし、あの狭苦しい量産型のコクピットとは打って変わった居住性だよな! ははん、快適快適!!」

 東の地平から顔を出す日の出に背中を照らされる機体は、さながら空中に仁王立ちして静止しているかのように地上からは見えるのだろう。
 実際にはそれなりの速度で西へ進んでいるのだが、背後にジェットの噴煙らしきもたなびかせないロボットは空にぼんやりと浮かぶ雲のようなありさまだ。

「フロート・フライト・システムだったけ? 従来のジェット・フライヤーとは一線を画しているとは聞いていたけど、さっぱりわけがわからないや! 通常のアーマーが標準装備する重力キャンセラーとはまた別ものとは言うけど、これってつまりは完全に機体の重量を相殺しちゃってるんだよね? ひょっとしたらこの質量とかも??」

 しきりと太い首を傾げてひとりごとめいたことを漏らそうとも、あいにくともう整備士からの応答はない。
 思いあまってついには自身も一緒に乗り込もうとしたのを寸前で押しとどめてつまみ出したのを今となっては少し残念に思いながら、いよいよ実戦の時が近いことを意識した。
 折しもそこに聞きなじんだ同僚のなじるような叱咤が飛び込んでくる。

「ごちゃごちゃうっせえよ! こちとらもう戦場なんだから、今はてめえの目の前だけに集中しやがれ!! 薄気味が悪いことそんなのんびりと空に浮かんでるだけじゃ、こけおどしにもなりゃしねえぜ? 後から譲ってくれなんてお願いされても敵機撃墜の星マークはくれてやらねえぞっ、どらっ、それじゃさっさとお先に失礼させてもうぜっ! こちとらノロマなクマ助の援護なんてはなっから期待しちゃいないんだ! あばよっ!!」

 一匹オオカミとは良くも言ったもので、まるで協調性のかけらもない相棒だ。
 この相変わらず口やかましいオオカミのがなりに耳がキンとなるクマだった。
 ひとしきり好き勝手なことをほざいたら地面を駆ける人型のロボット兵器、ギガ・アーマーの速度を前のめりにして上げていくその後ろ姿を高くから見下ろしてはかすかに肩をすくめてしまう。
 あちらの機体の管制アドバイザーとしてコンビを組んでいたはずの前線基地のブルドックは、さてはどんな顔をしていることやらだ。

「あらら、行っちゃった……! まったくせっかちさんなんだから♡ あれじゃ援護なんてできたもんじゃありゃしないよ、でも機体性能と戦況からするには、サポートに徹したほうが合理的なんだよな? この土手カボチャの新型ロボくんは……ん!」

 ……ビッピピ!


 現実に戦場に入ったことを告げる警告音が出し抜けに短く鳴り響く……!
 加えてただちに正面の大型モニターにいくつかのマーキングが赤く灯って、敵軍側の戦闘機がこちらに向かってくることを表示してくれる。
 いわゆるジェットフライヤーと類別される航空機タイプのものだった。
 おおざっぱに言えばロボットと称されるこちらとはまるで別カテゴリーのものなのだが、だからと言ってそうそう油断できたものではない。
 もっぱらのロボット兵器と通常兵器における戦いのセオリー通りならば、地対空で地面を駆ける相棒のギガ・アーマーを空から総攻撃したいところなのだろうが、あいにくとおなじ空中にこんな目立つものがのさばっているあたり、あちらはこの思惑が大いにはずれているのだろうか?
 五個のマーカーが足下の地面には脇目も振らずにまっすぐこちら目がけているのに内心であらら♪と舌なめずりするクマさんだ。


「おやおや、のんびりしてる間もないな。さてはこっちのほうがよっぽど目立つのかね? 今日が初お披露目でみんな物珍しさにびっくりしてるのかも知れないけど、あいにくとびっくりするのはこれからさ……! 悪いが手加減はしてやらないからね!!」

 初めて相対した時のそのあまりの異様さにギョッとした自分だが、それは敵陣営側にしても同様だろう。
 機体の性能面ではあらがいようがない新型のロボット兵器目がけて遠目から先制攻撃しかけてくる!
 対してモニターの中の小さなマーカーを拡大してそれらがどんなタイプの航空兵器か見定めるベアランドは冷静に手元の操縦桿を握りしめた。

「重装型ヘリコが3に、高機動フライヤーが2か! いきなりミサイルはキツイけど、果たしてコイツのコレが実体弾にもれっきとした効果があるか見るにはいい機会だな? どうれっと……!!」

 はじめは小さな点でしかなかった敵影が見る見る内にその色形を高精細モニターの中ではっきりとさせる。
 音速を超えるスピードで迫り来る二機の戦闘機がこちらの左右をかすめるように飛び去って行った!
 これらが伴うソニックブームの爆音はけたたましいはずだが、分厚い何重もの装甲に囲まれたこのコクピットまでは届かない。
 かすかな空気の振動を手元の操縦桿に伝えたくらいだろうか?
 飛び去り際にミサイルを2~3発、激しい機銃掃射と共に見舞ってくれる有人機だが、この機体にまで被害が及ぶことはなかった。
 代わりに周囲にいくつもの爆発を巻き起こす。
 この手前側で距離を取る大型の攻撃ヘリたちは、おなじく機銃とミサイルによる波状攻撃をたたみかけるものの、高速で飛来する鋼鉄の弓矢はだがしかし当ののんびりと空に浮かぶだけの鉄の巨人を撃ち抜くにはいたらず、あえなくどれもがその寸前ではじかれたかのような爆発を繰り返した。
 そのたびにまぶしいフラッシュとかすかな空気の揺れを伝えるが、それらを真顔でただまっすぐに見つめるクマのパイロットは少しもうろたえずに軽く受け流した。
 周囲のモニターは平常通りのオールグリーン。
 やはり機体に被害を受けたアラートも鳴らないのにひとしきり納得する。
 正面のモニターは爆煙越しの敵影をしっかりと捉えたままだ。そこにかすかにノイズが走るのになおさらしたり顔してご機嫌なうなりを発する。

「う~ん、なかなかいいカンジだな! はじめて聞いた時はちょっと眉唾ものだったんだけど、ちゃんと稼働してるよ、このフィールドシェルター、だったけ? 要はこの機体の主動力であるジェネレーターで発生させた強力な電磁フィールド、つまりはバリアってヤツなんだよな??」

 通常よりも一回りは大型の機体の胸部、ここに突き出す形で先端部に据えられた大型の電磁力場発生器による不可視のシールドの効果に満足顔でうなずいては、こうして実弾を防げたんだから最新アーマーのビームカノンもいけるだろうとにんまりとほくそ笑む。

 どうにもお気楽なさまだが、おまけにまったくの受け身で反撃をしない状況で剛毅なことこの上ないクマ助だ。
 おかげで相手との距離が縮まるばかりだが、それもある種の計算だったか?
 飛び去った背後の戦闘機を振り返りながら手元のパネルにすばやくこの利き手を走らせる!

「ようし、それじゃ今度はこっちの番だよな! 一度過ぎ去ってからすかさずにターンして背後からのバックアタック、挟み撃ちにしようってんだろうけど、あいにくこっちは後ろもバッチリいけるんだ! そおらっ!!」

 機首を回頭して今しも機体を反転させるべくした態勢の敵機にまばゆいオレンジの光が襲いかかる!
 大型の機体に無数に搭載したカノンが火を噴いたのだ。
 新型のアーマーでもごく希な最新装備をベアランドの機体はこれでもかとその身の内に抱え込んでいる。
 前後左右、異様に膨らんだ下半身の土手カボチャと見まがうスカート状の装甲には大小いくつもの発射口が口を開き、今か今かと眼光鋭く光りを放っていた。
 かくして背後のそれらからふたつずつ走った閃光は狙い違わず敵機を撃墜。
 ただちに爆煙まとわせて地面にたたき伏せることとあいなる。
 直後、空中にばさりとただようパラシュートにはもう目もくれずに正面に向き直る大グマは、残る三機の武装ヘリにもターゲットを定める。
 もはや手元のトリガーを引けばいいだけだった。
 そんな中で機銃掃射がやかましい敵機に向けて言い放つ。

「そっちのヤツらはみんな無人機なんだろ? さっきから攻撃がやたらと単調だもんな! だったらいいや、ちょっとコイツの性能を試させてもらうよ!


 腹部に装備した大型粒子砲を一斉射すれば済むものを、あえてその他の機体装備で迎撃してくれる。
 そのゴツイ腕やブサイクな頭部にもキャノンのたぐいは搭載されていた。
 それらをひととおり試射するべく狙いを定めていく。
 正面にバリアを張ったままでは腹部のメインキャノンは威力を低減されてしまうので、接近戦においては必須の攻撃スキルだ。
 決着が付くまで3分とかからなかった。

「う~ん、両腕のアームカノンは腹部のサブカノンと同等くらいかな? ちょっと狙いを付けるのが難しいけど、慣れればそれなりには……! ああっ、ん、ん、この!!」

 最後の一機を蜂の巣にしてトドメを刺しながら、ちょっとさえない顔つきで愚痴っぽいことを言うエースパイロットだ。

「ああれれっ……なんだい、アタマのビームスプレッダーとレーザーカノンってのは見かけ倒しで実際は威嚇射撃くらいにしかならないんだな? こんなのよっぽど接近戦でもないと致命打になりやしないや!! いやはや、本番の対アーマーの前に試せて良かったよ。それじゃ……」

 いざ友軍の口やかましいオオカミの同僚機の援護に向かおうと視線を向けると、戦況はおおかたで決着がついていることを知る。
 敵軍はすでに撤退を開始、敵影らしきは目で見える範囲にはひとつも残っていなかった。
 戦況を伝える手元のモニターには同僚の戦果、敵軍アーマーの撃破数が3とある。
 それがご丁寧なことに機種類別も表示されているのに舌を巻くクマだった。


「あらら、すっかり先を越されちゃったな……! ま、かまわないんだけど♪ えーと、トカゲが二機に、その上級のオロチがイチか……!! これってどれもロートルの旧型機だよな? こんな場末の戦場だからうなずけなくもないけど、あんまり機体の性能差があったら試験運用にもならないような??」

 通信を開けば血気盛んなオオカミが何事か好き勝手なことをほざきそうだが、あんまり自慢ができたものでもないとどっちらけた顔つきする。
 すっかり静かになったコクピット内でどうしたものかと太い首を傾げるベアランドだが、その丸い耳にピンと短い電子音がまとわりついた。

「んっ……??」

 機体のセンサーが敵影なき空に何事かを捉えたのか、短いアラームが中途半端に鳴り響く。
 すぐに静かになるのだが、背後で白々と夜が明ける中、遠く西の地平はまだ暗い。
 そこにかすかな違和感を感じ取るクマだった。

「へぇ、なんだい、オンボロばっかりと思わせて、ずいぶんと勘のいいヤツがいるみたいだな……!」

 空中の機体を東へと反転させながら、背後の地平線に向けて意味深な目つきと口ぶりをするクマのパイロットだ。
 かくしてベアランド、ウルフハンド両少尉の新型機による初陣はめでたく勝利の内に幕を下ろすのだった。


 無事に前線基地に帰投したのは、それからおよそ一時間後のことであった。
 すっかりと夜が明けてまぶしい朝日に照らされるぼろい格納庫に目立ったキズのひとつとない新品の機体で潜り込む。
 ゆっくりと時間をかけて来たからボディを冷ます必要もないくらいだ。
 そうして既に待ち受けていた整備士の若いクマ族に誘導されるがままに一番デッキのハンガーではなくて、その手前の一段高いベッドに仰向けで機体を寝かしつける。
 コクピットのハッチを開くとそこからのっそりと身体を出して、大きく伸びをしてから機体の上を小走りに地面へと降り立った。
 見かけでかい図体が意外と機敏なさまで、痩せたクマ族の青年の前につける。
 若い整備士、リドルは敬礼してこれを迎えた。
 軽く敬礼して返すベアランドは背後のみずからの相棒に目線を向けながらに言う。

「おやおや、こんなふうにおねんねさせないといけないのかい? このぼくの土手カボチャくんは?」


「ハッ、ああ、あいにくとこちらには専用のハンガーがありませんので、この状態でないとこちらの整備が……! 将来的にこれが正式配属されるという新型戦艦には、それ用の専用デッキがあると思われますので、それまでは。なにはともあれ、無事のご帰還、まことにおめでとうございます!!」

「まあ、相手が相手だったからね? 正直、肩慣らしにもならなかったけど、無理矢理相手をしてもらったよ♡」

「新型機、このバンブギンの乗り心地はどうでありましたか?」

「はは、もちろん、整備士くんの腕がいいから抜群だったよ! 各種の機体装備も問題なく使えたし? すごいよな、特に胸部に搭載した不可視シールド、バリアだっけ?? こんなにデカいだけあって載っけてるエンジンのパワーがハンパじゃないもんな!!」

「あはは、いえ正直、最新型の装備過ぎてこちらでは手に余るくらいなのですが……! 実戦データはこちらで採取してルマニア本国への解析に回します。なにかこれと要望がありましたら……」

「ああ、うん。まあそうだな、装備に実体弾の兵装がないのがちょっと気に掛かるかな~? う~ん、ここで言ってもどうにもしようがないし、お金がかかる装備をてんこ盛りにしてもらってわがままかもしれないけどさ。見た目が派手なビーム兵器はおどしにも使えるけど、それだけだといざそっち向きの対策取られた時に面倒だろう??」

 じぶんよりも一回りも二回りもでかいクマの率直な意見に、これを真顔で聞く若いクマの機械工は難しい顔ではたと思案する。

「はあ、つまりは敵側もこちらと同様のシールドを装備してでありますか? バンブギンと同等のジェネレーターやシールド発生器はそうそう作れそうにありませんが、戦艦クラスならばなくもないんでしょうか? じぶんにはうまくお答えができませんが……」

「いや、いいんだ。いずれ必要に応じてだよな♡ それはそうと、このぼくのもうひとりの相棒、おっかないオオカミくんはどうしてるのかな? ちょっと言いたいことがあるんだけど……」


「はい? ウルフハウンド少尉どのでありますか? それでしたら……」

 メカニックの視線にならって背後を振り返ったその先に、通常のハンガーデッキにしっかりと収まった新型機と、その足下に見慣れたオオカミ族のパイロットの姿を見て取るクマだ。

「ああ、いたいた! なんだいすっかりおとなしくなって、せっかくの初陣で戦果も上げたんだから、もっとご機嫌になっていいんじゃないかい?」

「うるせえな……! やかましいしかめっツラのオヤジのせいでそんな気分すっかり吹き飛んじまったよ。たかが場末の前線基地の整備士のぶんざいでごちゃごちゃ文句垂れてきやがって……」

 渋いツラのオオカミはなおのこと不機嫌面でそっぽを向く。

「あれれ、なんだいもうおやじさんにしぼられちゃったの、こってりと? 旧型とは言え三機もアーマー撃破したのに! でもなるほどね~、みんな思うことはおんなじなんだなあ」

「うるせえよ! てめえはただのんびりと宙に浮いてただけじゃねえか! そんなヤツに言われることなんてこれっぱかしもありやしねえっ」

「ふふん、仕事はちゃんとしたよ♡ あいにくアーマーじゃないけど、フライヤー、五機撃墜♪」

「けっ、敵さんのアーマーを撃破してこそのアーマー乗りだろうが! それで援護しただなんてな口が裂けても言うんじゃねえぞっ、あとくだらねえ文句や冷やかしもだっ!!」

「つまりはひとりで突っ走って先行しすぎってことかい? いやはやほんとうのことだと思うけどもね?? あれじゃ援護のしようもないし、いざ相手に待ち伏せとかされたら……ああ、ちょっとは聞きなよ! 行っちゃった」


 さてはうるさがたのブルドックのオヤジに耳にタコができるほどに言われていたのだろう。
 そっぽを向いたままどこぞかへとさっさと歩いていく相棒に、肩をすくめてこれを見送る同僚のクマだ。
 おなじくどっちらけた表情の若い弟子が声をひそめる。

「さきほどうちの師匠からこっぴどく言われてひどい言い合いになってましたから。どちらもカンカンでした……!」

「あらら。そりゃこっちまで巻き添え食らわないように気をつけないとね! うん、それじゃひとっ風呂浴びてくるから、コイツのことよろしく頼むよ。ひとりで見るのかい?」

 いたずらっぽく目を見張らせるパイロットの兄貴に、弟分のクマくんははっきりとした物言いで返した。

「おかげさまで目立った外装の破損もありませんので! 何よりこのバンブギンのメンテナンスは自分に一任されております!!」

「さすがは愛弟子♡ でもあんまりムリはするんじゃないよ? バンブギン……か!」

 はじめしたり顔して了解しながら、何事か考え込む大柄なクマ族はやがてまたしきりとしたり顔する。
 その横できょとんとしたさまの整備士には笑って言うのだった。


「?」

「ああ、決めたよ。コイツの呼び方! 悪いけど、もっといい名前を思いついちゃったから」

 なおきょとんとしたさまの若いクマ族の少年に、おなじく若いクマ族の青年はなおさら明るく言い放つ。

「ランタン! そうとも、土手カボチャじゃあんまりだもんな? ね、どうだい、コイツにピッタリの名前だろう??」

「ランタン……提灯(ちょうちん)でありますか? ああ、なるほど」

 言われてすぐさまカボチャの提灯を思い浮かべてまさしくぴったりだと大いに納得する整備士に、パイロットは大きくウィンクしてうなずくのだった。

「じゃ、そういうことで♡ ということでお前もこれからよろしくな! ランタン!!」

 果たして歴史にその名を残すであろうでかグマとお化けカボチャのコンビが、今ここにめでたく誕生したのであった……!!

 ※次回に続く…!

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ルマニア戦記 #002

第一話 「実験機で初出撃!」

#002

 かつての建国からこれまで長い歴史があり、今ではそのほぼ半分を占める国有面積の広さから、一般に『ルマニア』と呼ばれる東の大陸。

 その内陸中央に王都を構える、若いパイロット達が生まれ育った巨大な王権国家からすれば、影では属州とも呼ばれる北西の辺境に位置する小国はかなりの田舎に違いなかった。

 おまけにその最前線の基地の外れも外れに位置するオンボロな予備格納庫はよそから見たらまさしく廃墟も同然だ。


 しかしながら今やもろもろの都合でこの屋上階に寝泊まりしている、すっかりよそ者扱いの士官候補生達は、更衣室を出た廊下の突き当たり、そこから壁伝いに続く長い階段をひたすらまっすぐに降りて行く。

 そうしてまた出くわした突き当たりをいつもなら右手の屋内にあるアーマーのハンガーデッキに向かうはずが、今日ばかりはこの左手、屋外へとつながるドアのノブを掴んでおもむろにこれをひねるのだ。

 ギイィッ……とさび付いたドアがきしむ音を立てて、そこから外界へと一歩踏み出せば、目の前でうっそうとしげる林の向こうに朝日が明るく昇るのが見て取れた。

 森の向こうに拓けた海岸線からかすかに吹き寄せる潮風を鼻の頭に感じて、くすぐったく思う大柄なクマ族のエースパイロットは、その場で大きく深呼吸するといつもの呑気な口ぶりする。


「んんっ……はあ、いい朝だな! いつぞやみたいなおかしな異臭騒ぎももうないし? 新型機で出撃するにはうってつけのお日柄だよ。なんだか今日はいいことありそうだ!」

「ケッ! なにを悠長なことを言ってやがるんだよ? 本来なら夜中にこっそりやってることを白昼堂々やらかそうってんだから、リスクのほうが付きものだろう! おまけにこんな快晴じゃ重要機密満載の新型をわざわざ真っ裸で敵さんにお披露目してやるようなもんだぜっ……ま、悪い気はしねえがよ? たっぷりとわからせてやれるんだ、このオレさまの腕っ節と新型機の実力を!!」

 背後に目をやるとただちに不機嫌面で見上げるオオカミの同僚の毒づきに、もう慣れっこの相棒はしたり顔してうなずく。

「はいはい! それじゃまずはご対面だよな? 長らく待ちわびた我らが愛しの新型機ちゃんたちと♡ 確か格納庫の前に集合だから、あっちに行けばいいのかな? ん、おっと、あそこにいるのって……!」

 たとえ基地の外れでも基本、敵国がある西側向きに発進路が造られるのはどの格納庫でも同じだ。

 南の裏口から出て来た都合、回れ右して大股で高い外壁沿いに進んで行くと、その先のまだ宵の暗さが残る西の空を背景にして忽然とひとりの青年が待ち構えるのがわかる。

 見知った顔でまだ表情に少なからぬ幼さが残る若者は、見るから華奢でやせっぽちでも胸を張ったきりっとした立ち姿の敬礼でみずからの上官である二人のパイロットらを出迎えた。

 きびきびとした歯切れのいい口調で朝の冷えた空気を震わせる。


「ハッ! おはようございますっ、ベアランド准尉どの、ウルフハウンド准尉どの! お待ちしておりました!! おふたりの機体はすでにどちらも準備が整っております、どうぞこちらへ……あっ」

 じぶんと同じ大型のクマ族とは言いながら、ずいぶんと頼りない見てくれの痩せた少年機械工兵を見下ろすマッチョなでかグマのパイロットだ。

 こちらへ赴任してからかれこれ半年あまり、もう慣れ親しんだ仲でもあり、とかく親しげな笑みで返す。

「いいからいいから、そんな固くなりなさんな、リドル! お迎えご苦労さん。昨日は一晩中大変だったんだろう、おやっさんと? だったらもっと楽にしてなよ、ここからはこのぼくたちが気を張る番なんだから! ……あれ、どうしたの?」

「あっ、てなんだよ? 機械小僧?? まさか何かしら気になることがあるってのか、本国から来たオレらのアーマーによ。見た目が頼りなくてもいざ機械のことにかけちゃこっちはとっくに信用してるんだ、今さらヘタな隠し事なんざ言いっこなしだぜ!」

 後ろから長い鼻面の顔を出すオオカミもやや不審げに問うのに、ちょっと慌てたそぶりの男子は改めてふたりのバイロットに対して最敬礼する。

「いえっ、失礼しました! すっかり失念しておりましたっ、申し訳ありません! 本日付けでどちらも一階級昇進されておりますので、正しくは、ベアランド少尉どの、ならびにウルフハウンド少尉どの、でありました!! 昇級、そして新型機の到着と併せてまことにおめでとうございます!」

「……え、そうだったっけ? ふ~ん、まあ別にいいよ、そんなの。あんまり気にしたことないし♡ 今のところ隊員がふたりしかいないへっぽこ部隊で、すっかりお荷物扱いされてるぼくらだもんね!」

「まあな、オレもどうでも構わねえよ、お飾りみたいな形式張った呼び名なんてな。それよか肝心のアーマーはしっかり組み上がっているんだよな?」

 気を張ったセリフをすっかり肩ですかされてしまう。

 思わず苦笑いになるメカニックはみずからも固かった身体の力を抜いて、落ち着いた年相応の口ぶりとなる。


「あははっ、はい、それはもちろん! 最終点検は親方が了解済みでありますので。どちらもすぐに起動できます。早くご覧に入れたいので、どうぞこちらへ!」

 ふたりのパイロットを視線で背後へと招いてみずからは早足で駆けっていくのに、一瞬互いの目を見合わせて建物の真正面へと向き直る新米の士官たちだ。

 荒れ放題の滑走路を大股で踏みならしては西の空をバックに、いつもなら大きく開け放たれた間口が今だけはサビだらけのシャッターで閉ざされたオンボロ格納庫と対峙する。

「う~ん、見れば見るほどオンボロだよな? こんなボロっちい格納庫にピカピカの新型のアーマーが配備されてるだなんて、まさか神様だって思いも寄らないってもんだよ」


「は、どうだかな? わりかし敵さんにも情報は筒抜けだったりすんじゃねえのか?? いつぞやの幽霊騒ぎが収まって、てっきりそれまで無人化してた対岸の前線基地の取り合いになると思いきや、あっちはそんなの目もくれずにこっちに攻め込んできてるんだろ? ろくな補給路の確保もないままによ。こっちのアーマー隊が手薄なのもいいこと、やつら少数部隊をひっきりなしに出したり引っ込めたりして、いざ基地を攻め落とすってほどでもないんだぜっ……やる気があるやらねえのやら!」

 どこかそっぽを向きながらの独り言じみたオオカミ、ウルフハウンドの物言いにちらりと視線を下ろす大柄なクマ、ベアランドは少しだけ思案顔して肩をすくめる。

「つまりはこっちの出方を見ているってのかい? なるほどね♡ わからなくはないけど、あっちにもあちらさんなりの都合があるのかも知れないよな? はっはあ、そうか、だったらなおさらワクワクしてきちゃったよ……!!」

「はっ??」


 怪訝な視線で見上げるしかめ面にまた肩をすくめる脳天気なクマは意味深な笑みを浮かべると、おまけいたずらっぽくパチリと片目をつむったりする。

 そうして視線でみずからの正面、巨大な廃屋と化した予備倉庫を示すのだった。

 若い機械整備士の背中越しに今しも大きな音を立ててシャッターが上がるのをそろって注目する。

 西の空はまだほんのりとしか明るくなかったが、屋内の照明が煌煌とたかれていたから見晴らしは良かった。

 奥に大きな人型をしたシルエットがあるのが気配としてわかるが、その手前、まずはやけに小柄な人影を見つけてそちらに目がいってしまうふたりの新米パイロットだ。

「おっ、おやっさん……! 相変わらずのしかめ面だな! あれが真顔なんだっけ? なんか怒ってるみたいに見えるけど、いやいや、内心は喜んでいるんだよな??」

「オレが知るかよ! 土台、あんなブサイクなむくれっ面じゃ判別するのはハナから無理だろ? とりあえず怒られるような筋合いはないぜ、今んとこはよ」

 すっかりどっちらけたさまで茶化すクマに、白け顔のオオカミも苦い口ぶりで返すばかりだ。

 するとそれを背中で聞いていた若い弟子のメカニックが親方にビシッと敬礼しながらも小声で返してきた。

「もちろん、怒ってません! きっと親方としても感慨がひとしおなんですよ……昨日は徹夜だったし! あと、あらかじめ言っておきますが、壊さないでくださいね? いきなり初陣で無茶とか、おふたりとも??」

 どこかこわごわとした口ぶりで視線をそろりと巡らせてくる、まだ若いながらも有能な整備士に、なおさら白けたさまのふたりのパイロットはどうにも微妙な反応で視線をあちこちにやるばかりだ。

 あんまり思わしくない空とぼけた顔つきそぶりに、付き合いまだ短いながらも相手の性格性質だとかを骨身に染みて思い知らされていたリドルと呼ばれるクマ族は、げんなりしたさまで肩を落とすのだった。

「はあっ、お願いですからね? 今のこちらの整備状況じゃ正直、小破以上の破損はもはや回復不能だと思われますから……! ちなみにそれに関しましてはうちの親方もまったくの同意見です」

「そいつはまた……! ほんと、ワクワクが止まらないよな?」


「たくっ、根性で直せよ! ん、おい、あのおやっさん、よもやこっちの声が聞こえてやがるのか? えらい勢いで睨んでやがるぜ!!」

 あいにくまだシャッターが上がりきらないから内側の全体像がどんなものだかわからない。

 しかしながらガタガタとした騒音混じりの中にもこの真ん中にでんと構えて仁王立ちした小柄な犬族のおやじだ。

 そのもういい年齢をした熟練の機械工がしゃがれた渋い声を張り上げる。

 おっかない顔つきもさることながら、見かけが小さかろうと腹から絞り出した一喝で相手を圧倒するだけの底知れぬ迫力みたいなものがあっただろう。

 この前線基地でも指折りの手練れにして、過去には大陸大海を股に掛けた数々の伝説を誇るという整備士界の巨匠の第一声は、やはり怒っているようなそれはけたたましいだみ声なのだった。

「おおい、やいこらっ、このボンクラども! シャキッとしやがれ!! おめえらが待ちに待った新鋭機のお目見えだろうがっ、そんなふぬけたツラで拝めるようなシロモノじゃありゃしねえぞ!!」


 朝っぱらから耳にキンキンと響くお叱りに思わず苦笑いのクマだ。

 隣のオオカミは小さく舌打ちしている。

「あらら、徹夜していてそのテンションはさすがに……!」

 たとえ相手が基地の最高責任者であってもみずからのとぼけたスタンスを崩すことがない天然キャラのクマ助ながら、その背後にあった巨大な人影が全貌をあらわにするにつれて有無もなくこの視線がそちらへと吸い寄せられる。

 いつもの軽口を叩きかけたはずが、思わずごくりと息ごと飲み込んでしまった。

「こいつはまた、思っていたよりもデカいな! えらい迫力とボリュームがあるように見えるけど、ちゃんと動くのかね? あとそれに……」


 三人そろって頭上を見上げて、いざ目にしたものの異様なまでの出で立ちに言葉を無くしてしまう。

 はじめの想像とは似ても似つかないくらいに既存のアーマーとはまるで別物の見てくれだ。

 左右に二体並んだ大型ロボの、特に右手に立っている物が……!

 ある程度のあらましはあらかじめに聞かされていたから、つまりはこれがじぶんの乗機なのだろうと判断するクマ、ベアランドはちょっと言葉に詰まりながらに思ったことをまんま天然で口走った。

「う~ん、なんかさ、えらくブサイクだよな? もうちょっとこう、カッコ良くは出来なかったのかね? ものすごい悪者みたいな面構えなんだけど、このぼくの新型のアーマーちゃんてば??」

 半分嘆きじみた率直な感想に、すぐ横合いから舌打ち混じりのツッコミが入った。

「ブサイクも何もてめえにそっくりだろうが! いいじゃねえか、あのくらい不気味な面構えのほうが相手に対して威嚇できるし、新開発の新型だって存分にアピールできるぜ? いいか悪いかは別としてよ」

「ははっ、はじめは従来機とおなじ犬型のヘッドだったのらしいのですが、もろもろの都合でクマ型(?)のアタマに設計し直したらしいです。もちろん実験機ですから後後においてはどうなるかわかりませんが……」

 若い整備士の取り繕うような言葉に、おまけ前からはしわがれ声がぶっちゃけた私見を投じてくれた。

※↑挿し絵は一代前のデザインの主人公です(^^;)
 この第一話は以前のデザインで、第二話以降から最新版の主役のキャラデザインがお目見え♡ こちらもヒマがあれば随時に更新予定です♪

「ふん、いっそおめえさんをモデルにしたんじゃねえのか? さほどブサイクってこともあるまいよ、ビーグルのヘッドにゃ乗り切らない機能が満載だから、あんなへちゃむくれたツラになるんだが、むしろ愛着が湧くってもんだろう!」

「んんっ……ぼくってばあんなにブサイクかい??」

「てめえのツラ鏡で見たことねえのかよ? はんっ、それよかこのオレ様のギャングはいい面構えしてるよな! 量産型のビーグルなんぞとは比べものにならないってぐらいにいかしたスタイルしてやがるぜ!!」

 肩を落とすクマにはいっそ冷たい口調で吐き捨てるオオカミの同僚だ。

 そうしてみずからが搭乗するもう一体のロボットをしげしげと見上げながら、いかにも納得したさまで言うのだった。

 するとその横合いからまた若いクマ族の整備士がやや不思議そうな顔つきでウルフハウンドに聞き返す。

「ギャング? この『ハウンド』のことでありますか?? ああはい、確かに現行の主力量産機のビーグルを元に大幅に発展改良させた機体ではありますが……」

「いいんだよ! 猟犬だなんてやぼったい名前で呼ぶにはもったいねえ機体だろ? コイツは今日から晴れてこのオレ様の相棒、その名も『ギャングスター』に決定だ!!」

「は、はあっ……」

 ちょっと戸惑った顔のメカニックに、おんなじクマ族のパイロットが苦めの笑いでウィンクする。

「ま、いいんじゃないのかい? なんかカッコいいし♡ そうか、だったらぼくは何て呼べばいいのかな、このブサイクちゃんのこと……!」

「あん、名前ならちゃんとあるだろう? その、ほれ、なんつったか??」

 小さな歩幅で歩み寄るブルドックのオヤジがいかめしいツラを傾げさせるのに、弟子の痩せっぽちがただちに補足する。

「はっ、こちらの機体の正式名は『バンブギン』であります! まあ、おそらくはこのボディの特殊な形状がいかにもそれらしいところから、なのでしょうか??」


 大柄なボディの特に前にも左右にも突きだしたそれは特徴的な土手っ腹を指しながら言葉には納得顔のでかいクマだ。

「ああ、つまりは〝カボチャのお化け〟なのかい?? なるほどね、要はパンプキンからもじったんだろうけど、確かにそんなふうに見えなくもないし! でもなんかかわいげがないなぁ……」

 やはり冴えない様で見上げていたら、いきなりハンガーの奥のあたりでやかましい警告音が鳴り出した。

 同時に黄色いライトもそこかしこで点滅し出す。

 さっさと出撃しろという本部からの通達なのだと察してそれぞれみずからの足を踏み出すパイロットたちだ。

 かくして感動のご対面はごく短い内に終わり、そこから目の回るようなスピードで出撃となる。

  ※次回に続く…! 

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