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ルマニア○記/Lumania W○× Record #025

#025

 Part1

 ブッヴヴヴーン……!

 常時薄暗く、周りをディスプレイや計器類でびっしりと埋め尽くされた狭苦しいコクピットの中で、低くくぐもったエンジン音がこの背後から伝わる

 搭乗者であるクマ族用に大きめにあつらえれられたパイロットシート越しにかすかな振動も伝わってきた。

 するとこれだけで今現在のこの機体の調子がどんなものだか、それと察するパイロットだ。

 口元にはかすかに余裕の笑みがある。

 まだ開発途上の域をでない新型の大型アーマーは、だがこれがすこぶるつきに快調でひとつも機体警戒アラートを発することなく沖合の洋上から目指す大陸の北岸へと進路を進める。

 この母艦である中型級空母から出撃して、しばらくはすんなりと視界の開けた高空を進むことができた。

 沖合から中央大陸の海岸線を広く眺める景色を見下ろすみずからのアーマーのコクピットで、ちょっと緊張した面持ちでディスプレイを見つめるクマ族の新人パイロットだ。

 一言も発さずに目の前のモニターや計器類を見つめていると、不意に短いアラームがして右手のモニターに意識を向ける。

 ほぼ同じタイミングで、左手側のモニターには見慣れた赤い機影がその機体の一部を映り込ましてくるのが視界の端に見て取れる。

 まずは先行して出撃したじぶんに、後続のアーマーパイロットがややもせずに追いついて通信回線を開くのだった。

「カノンさん、注意して! ここはもう戦闘空域だよ。そんな大きな機体でボケッとしてると流れ弾を食らっちゃうから!!」

「おうっ、言われなくともわかっておるんじゃ! ここからももう目視ができるじゃろう? あっちの高空で激しいアーマー同士の空中戦が大空一杯に繰り広げられておるのじゃっ……!!」

 みずからの機体の映すレーダーサイトには敵味方複数のアーマーを示す赤や青色の点が複雑な軌跡を描いて交錯している。正面からやや左の空域で目にもとまらぬ高速の回避軌道が青一色のキャンバスに幾筋も描き込まれていた。

 ごくりと生唾を飲むクマ族の少尉、カノンである。

 ちょっとビビったさまでぼんやりとした感想を述べていた。

「あ、あの中におれたちも混じるんじゃのう? まだ新型のこの慣れない機体で、ちゃんと付いていけるんじゃろうか??」

 いささか緊張感にとぼしい本音に右手のスピーカーから相方の甲高い声音が入る。

「カノンさん、わたしたちはあの中には混じらんよ。そういう通達が入っているの、知らないの? 精鋭ぞろいのキュウビ部隊には、いついかなる場合においてもいっさい、この手出しは無用って、そういう話じゃったでしょうに。艦長にもそう言われてるし……!」

「そ、そうじゃった! この相手もやたらに手強いからヘタに近寄ると無駄にケガをするんじゃったか? 確かにあの大型の機体、なにやら普通じゃない迫力があるんじゃ。こうして改めて画面越しに見てみるに……」

 ぽっちゃりクマ族のメガネ男子は困惑顔で目の前の大型ディスプレイが映し出す映像に見入るが、中でも拡大表示したある特定の大型のアーマーに困惑したさまでなおのこと凝視する。

「〝グリーン・デビル〟……じゃったか? おれのこのガマよりもでかいんじゃろうか? とんでもない出力がありそうじゃ!」

「そっちはどうでもいいよ! わたしたちはわたしたちのやるべきことをやらないと。新手が来た! ほぼ真正面!!」