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「オフィシャル・ゾンビ」15

オフィシャル・ゾンビ
ーOfficial Zombieー

オフィシャル・ゾンビ 15

※↓鬼沢や日下部たちが突入したビルのフロアマップです。
  オフィスビル「ベンチャーズ・ヒルズ」フロアマップ

※「ニコニコ生放送」で創作ライブやってま~す♡

オフィシャル・ゾンビ 15


 かつての世間においては、あくまで空想上の存在としての正体もなく動き回る死体のことを〝ゾンビ〟と称したのだろう。

 しかしながら昨今では、これがおよそ現実のものとして実在し、かつまたいくつもの異なる視点と違った意味合いが重なるものとして認識されつつあるのだった。

 端的に言ってしまうのならば、それは怪物、バケモノなのか?

 いつからか、人間でありながら、ひとならざるちから(能力)を持つものすべてをそれと称するようになったこの世界である。

 だからこそ、それはただの絵空事ではなくて厳然たる事実として、今この時もいくつかの人間ならざるもの、〝亜人種〟たちの目の前に立ちはだかるのだ。

 そして真実、図らずもその渦中にその身を置くことととなったお笑い芸人たちが、ここにいた――。




  有無もなく開け放たれた鉄製の扉の奥には、そこにはおよそ思いも寄らないような現実が待ち構えていた。

 そこにみずからの足を踏み入れるタヌキ――世間的には人気お笑いタレントとして知られる鬼沢は、まずギョッとして目にしたその部屋のそれはただごとではないありさまにひたすら唖然となる。

 先頭に立つ見てくれクマの日下部は、だがこれにいささかも動ずることなく冷静に辺りを見回すのだが、この背中であわあわとしたセリフをぶちまける、それは動揺すること著しいタヌキだ。

「あれ、なんだ、ここは明かりが付いているんだな? でもなんか暗くないか? 前来た時はもっと明るかったはずだぞ、この部屋! それになんか雰囲気もやけに怪しい、てか、あからさまにおかしなことになってないか?? ぜったいヤバイだろう!!」

 ドアをくぐってまずでかいクマの背中越しに辺りをきょろきょろと見回して、次にこの隣にまで進み出るタヌキは、やがて照明が灯る天井を見上げると、いぶかしげにこの表情を曇らせる。

 険しい顔の鼻先をヒクヒクとひくつかせながら、身体中の毛が逆立っているのを自分でもそれと意識していた。

「ん、なんだ、あれ? 天井のあたりに黒いモヤモヤみたいなのが掛かっているじゃん! しかも全体にびっしりと! もやなのか、かすみなのか、怪しすぎるぞ、絶対におかしい!! なんか吸ったらやばい毒ガスとかじゃないのか!?」

 だから部屋が暗いのかと納得してまたあたりにこわごわとした視線を向ける鬼沢に、対するでかいクマ、もとい日下部がしれっとしたさまで応じる。

「はい。邪気がいよいよ濃くなって、この肉眼でもはっきりと確認できるくらいになってきたんですね……! 確かに普通の人間が吸ったら何かしらの実害があるんでしょうか。これは部屋の扉をきっちりと閉めておかないといけませんね?」

「あんなの絶対にヤバイだろ! 俺も吸いたくないもんっ、なんか雰囲気悪すぎて息苦しくなってきたよ、こんなの見るのはじめてだ! 前はとっても活気があったのに、今はひとが死んだみたいに静かだし、誰もいないのか? そうだ、こんな悪い空気の場所にひとなんかいられないだろ??」

 戦々恐々として身体を震わせる鬼沢に、だがオフィシャルのゾンビのアンバサダーとしての経験が長い日下部は、あくまで平然たるさまだ。

 おまけなにほどでもないとうそぶいてくれる。

「でも本当に濃い瘴気は、もっと真っ黒くて、むしろ天井ではなくてこの床に落ちてたまるんですよ? 知りませんでしたか?」

「知らない!! 知るわけないじゃんっ、瘴気ってなんだよ!? ほんとにおかしなことに巻き込まれちゃってるじゃん、俺!! この先どうなるんだよ? まさか本気でここの社長さんとバトルなんかするわけ? このカッコで!?」

 しまいには頭を抱えて身もだえるタヌキに、隣でひどく白けたさまのクマだったが、そこにやがてまた背後からのっそりと出てくる気配が、場にそぐわないようなのんびりした言葉を発した。

 ちなみに気配はふたつあった。

「なんや、今さら? 鬼沢くん、そないなさまじゃこの先やっていけへんで? もう戦いの最中やさかい、ちゃんと集中せな!」

 出てくるなりにそう関西弁で注意されて、自然とそちらに顔を向けるタヌキの表情がただちにぴきりと固まった。

「えっ、誰? なんかヘンなのがいるっ!? コワイコワイっ、日下部、なんか見るからに怪しいヤツがいるぞ!! いつの間にどこから出て来たんだよ、こんなブサイクなバケモノ!?」

 相手の姿を見るなり飛び上がって驚く鬼沢に、当の本人、バケモノ呼ばわりされた何者かがただちに不機嫌にこの声を荒げる。

「誰がバケモノやっ!! 見てわかるやろ、バイソンの東田や! ちょっと見てくれが変わったからゆうてそないにビビることあらへんやろ、そこに相方もおるんやで? あとそないなふざけた見てくれしてるきみに言われたないて!!」

「あ、バイソンさん? わ、もう1匹いる! おんなじようなヤツが!? て、こっちが東田さんなら、そっちのは相方の津川さん?? これってあのバイソンさんたちが変身した姿なの? マジで? なんか思ってたのと全然違うんですけど!!」


 もともとの身体つきの違いか?

 ゾンビと化してもあちらのほうがやはり背丈が低く、おまけじぶんたちとは似ても似つかない種類のいかついお化けと化したベテラン漫才コンビを、心底、おっかなびっくりに見つめるタヌキだった。

 およそ想定外もはなはだしいその見てくれに、内心どころか思い切り面食らってしまう。ブルブル震える太いシッポが背後でピンと立ち上がっていた。

 かくして鬼沢のようなタヌキやクマのような哺乳類系のケモノのたぐいとは、まったく別のカテゴリーに族する動物の特徴があらわな正体をさらすおじさん芸人たちだ。

 それだからかこの後輩芸人の露骨なまでの驚きようにあって、ややむくれたさまでモノを申すのだった。

「まったく、失礼な子やな! こないにキュートな見てくれのゾンビさん、他にはそうそうおらへんやろ? かと言うてこのほっこりほのぼのとした見た目にダマされると痛い目みるで?」

「ほんまやんな! あのコバヤの兄さんあたりと比べたら天と地ほども見てくれちゃうやんけ? こないに控え目でかつ重厚感がありながら、そこはかとないかわいげがあっておまけおとなしい見てくれのゾンビなんちゅうもん、わいら以外にはどこにもいてへんて!!」

「うう、確かに、いないような、いるような、どうにもコメントしがたい姿だけど、ゾンビってのは何でもありなのか??」

 そんな左右から詰められてうっとたじろぐ鬼沢に、横で冷めたまなざしで両者を見つめていた日下部だが、それからやはり落ち着きはらった声音で言うにはだ。

「さあ……? 確かに驚きですけど、これはこれでありなんじゃゃないですか? それに良くよく見たら、なんか愛嬌あるし」

「どこが! 気持ち悪いだけだろ? あ、じゃなくて、独特なんだよなあ……! なんかどこかで見たことあるような気もするし? そうだよ、昔から有名な、これって、つまりはアレなのか??」

 ベテランの先輩芸人コンビが化けたゾンビ、得体の知れない見てくれした存在を上から下までねめ回して、はじめなんか言いづらそうに言いよどむタヌキだが、意を決してズバリと言うのだ。

「カッパ! そうだ、あの河童なんだよな? 見た目の特徴からしたらば! ふたりしてこんなどでかい甲羅までご丁寧に背負っちゃって、ほんとにいたんだなあ、カッパって……!!」

 ひとりで納得する後輩芸人にベテランが一斉に食らいついた。

「どこがカッパやねん! おいこのくされダヌキ、よう見てみい、こないに立派な見てくれのカッパがどこの世界におる?」

「堪忍してえや! オニちゃん、わしら頭に皿なんて載っけておらへんやんけ? せやのうてもあんなひょろっひょろの貧弱なもんと一緒にされたないわ! 川にもおらへんし、この手に水かきなんちゅうもんもあらへんのやでぇ?」

「え、ちがうの?? でもそれ以外で言ったら……!」

 ひどく困惑した顔を日下部に向けるのに、だがしかし日頃からテンションが低いクマときたらば、きょとんとしたさまでこの太い首を傾げさせるばかりだ。

 なおさら困惑したさまのタヌキがまた仕方もなしに、目の前のなんだか良くわからないおかしなキャラ感が満載の先輩ゾンビたちを怪しげに見つめながらに言った。

「仮にカッパでないとしても、どっかよその国の版権キャラで、もうとっくにいたよな? こんなヤツ?? カメと何かが無理矢理に合体しちゃったみたいな、ヘンテコな生き物!! 確か、ニンジャ、ナンタラーズみたいな?? カメのくせに人間の言葉をしゃべって、やたらに素早くて、おまけに格闘技が得意なんだっけ??」

 何やらひどいぶっちゃけ発言だ。

 するとこれには言われた当のカメもどきたちが、ただちに聞き捨てがならないと全力でそれを否定する。

「ちゃうちゃう! そないなもんと一緒にせんといてや! あっちは忍者とカメ、せやけどこっちはカメはカメでも、リクガメとウミガメ! おまけに力士、由緒正しいお相撲さんとのコラボやさかい!! その証拠にこないにぶっといまわしをはいとるんやで、そやったらまったくの別もんやろ?」

「コラボっちゅうか、じぶんでもわけがわからへんのやけどな? でも手裏剣やら武器やらをつこうたりはせえへんで? そこはあくまで男らしゅうした素手の突っ張りとこの身体を張った体当たり、ぶちかましっちゅうんかの? まさしく力とちからのぶつかり合いや!!」

「ほんとにただの相撲取りじゃん! いや、でもいいのかな? なんだかんだ言い分けしてても、発想自体は完全にまるパクリじゃんこんなの!! 後で訴えらたりしない??」

「まあ、あほらしすぎて誰も相手にしてくれないんじゃないんですか? そもそもが? もっと言ってしまえば、おれたち普通のひとたちからは見えないんだから……」

 すぐ横を見ればこれまたひどいぶっちゃけ発言にあって、タヌキがひたすら目をまん丸くする。

「著作権とか完全無視なんだな! そんなのがまかり通っちゃうんだ、は~ん。でも俺、油断してたらちょっと笑っちゃうかも、こんなの、だってバイソンとか言ってるのに……!!」

 若干吹き出し加減にそれとなくふたりのゾンビ、カメの化身みたいなのを見る鬼沢は、目が合うなりにさっとこの顔を逸らす。

 憮然とした表情の先輩方を置いておいて、そこで改めてあたりの様子をうかがった。

「はあ、なんかここってすごい雰囲気が悪いのに、そのクセ何も起きないんだよな? 誰もいないのかな? さっきから何かしらちょろちょろと視界の端に見切れてはいるんだけど……?」

 ここはこの会社の社員専用のトレーニングルームであり、それ用のごついトレーニングマシーンがところ狭しとたくさん並んでいるのだが、なのにこれと言ってひとの姿が見当たらない。

 おかしな気配みたいなものはそれとなく感じてはいるのだが?

 首を傾げるタヌキに、クマがそれとなく耳打ちする。

「良く周りを見てください。ちゃんといるでしょう? これと言った敵意は感じないでしょうけど、油断はしないでくださいね」

「えっ……? ああ、やっぱりいるのか? て、なんだ??」

 視界を塞ぐいかついトレーニングマシーン越しにちらほらと見え隠れするのが、やはり人影なのだと理解する鬼沢だが、それをよくよく見てみるにつけ、またしてもぶったまげてしまう。

「なんだよっ、あれ! マジでゾンビみたいなのがいるぞ? てか、ゾンビじゃん!! 死人みたいな顔つきしたヤツが前のめりにおかしな動き方して、しかもあっちにもこっちにもたくさんいるっ!!!」

 うわっと全身総毛立つタヌキに、パッと見は全身オレンジがかった黄色の体色のリクガメ、もとい、バイソンの東田らしきが真顔で言ってくれる。

「ゾンビちゃうやろ。格好からするにはここの社員さんやないんか? みんなここの悪い空気に当てられて正気をなくしてもうて、あないなことになっとるんやろ。近づかなければこれと害はないんやが、感づかれたら確実に襲われるっちゅう、なるほど、見ようによってはゾンビやんな?」

「噛みつかれたりするんかの? ちゅうてもゾンビになるわけやないから、ただの正体をなくしてもうた人間、いわゆる狂人やな! どないする? けっこうおるで??」

 全身が真緑をしたこちらはウミガメがひと、さながら力士に取り憑いたみたいないかれた見てくれのバイソンの津川らしきが、こちらもひょうひょうと言ってのける。

 対してゾンビのアンバサダー経験の浅い鬼沢、タヌキは困惑もここにきわまったさまで声を震わせるばかりだ。

「どうすんのっ? こんなのどうにも収集がつかないじゃん! 確かにあの格好はここの保障会社の社員さんたちだれけど、ガタイがいいし、見た顔がいくつかあるし!! でもっ……」

 知人とまではいかないまでも、見知った顔の人間があんなひどいありさまになっているのと、これと己が正面切って相対しなければならない異常事態……!

 普段は平和なテレビタレントとして生活している身には、どうにも心の平静が保てない小心者だった。

 日下部、現在はでかい図体のクマが平然と言ってのける。

「障害になるのならば排除しなければなりません。相手が誰であれ、致し方がないことですから。多少のケガはやむを得ないとして、意図的に殺したりしなければとりあえずOKです」

「そういうこっちゃ! 鬼沢くんのはなしじゃ相手さんはプロのガードマンっちゅうから、ちから加減を誤ったりしなければ死んだりはせえへんのやろ? 気配を感知したものには自動的に襲いかかる、言い変えればあちらは対して思考能力がないんやから、簡単なもんや」

「えっ、でもそんな、ただの人間をこの姿でやっちゃうの? いいや、ダメだろ、テレビタレントがそんなことしちゃ!?」

 全身でのけぞるタヌキに、二本足で立つミドリガメ、もといウミガメもどきの津川が言った。

「今はタレントちゃうやんけ? そうやったとしても、あちらさんがほっといてくれへんで、話が通じへんし、もうこっちに気づいておるようやし? せや、オニちゃんがわあわあ盛んにわめきよるからまんまとひとりこっちに来ておるやん、どないする?」

「どうって、わわ、ほんとにこっちに来た! マジでゾンビみたいでおっかないんだけど、どうするの? あ、完全にイッちゃってるよ、顔つきが!! あんなの人殺しの顔だ!!」

 半ばパニックになってその場から思わず一歩後ずさる鬼沢の横から、逆に前へと一歩大きく踏み出す影があった。

 リクガメもどきの東田だ。

「しゃあないのう。せやったらここはこのぼくらの出番やろ。鬼沢くんにはいいところを残しておいてやるよって、よう見とき、見本を見せたるさかい、ほれ、こうやるんや!!」

 すぐそこまでおぼつかない足取りで近づくゾンビ、もとい生気がない糸の切れた操り人形みたいなさまの保障会社のガードマンに向けて、言うなり右のストレートを容赦なくお見舞いするリクガメと相撲取りの掛け合わせの亜人種だ。

 これをまともに真正面で食らった相手は、言葉もなく背後へと吹き飛ぶ! そうしてあわや壁に激突するかと思いきや、この手前のトレーニングマシーンの一台に背中から叩きつけられて、そこであえなくがっくりとうなだれるのだ。

 完全に行動不能に陥ったさまを見届けて、一丁上がりと利き手でガッツポーズする東田だ。

 これに泡を食った鬼沢がまたしても裏返ったわめき声を発してしまう。それがゾンビと化した周囲の人間たちを呼び寄せることになるのはすっかり失念している芸人さんだ。

「わあっ、ほんとにやっちゃった!! 死んでない? こんなのいいのか?? 俺たちタレントだぞ!? 日下部っ……!」

「いいんですよ。これが今のおれたちのお仕事ですから。問題ありません。多少は乱暴なことをしてもこの場は許されます。よっぽど現状回復が難しいようなことにでもならない限りは……」

 言いながらそれとなく先輩芸人のバイソンたちを見るクマのアンバサダーだが、あいにくと当のカメのゾンビたちはやる気も満々だった。

 凜々しい横顔を見せて、ふたりの後輩芸人たちに言ってくれる東田だ。その見た目はリクガメの甲羅を背負った相撲取りだが。

「せやからここはぼくらに任せて先に行きいや、後から必ず追いつくさかいに! こういうゴミゴミした障害物だらけの場所でも、ぼくらやったら関係ないさかいに。ほな、行こうか……!」

「おう、アレやるんか? 早速やな! ちょいと目が回ってあれなんやけど、アレやったら一網打尽にしてやれるさかい」

「えっ、何? なんか勝ってに盛り上がってるけど、なんかやるの? あと俺たちどうしたらいいの?? わけがわからないよ!!」

 慌てふためくタヌキの前で息の合った掛け合いを見せるカメたちはなにやら示し合わせてさらなる意気込みを全身にまとわせる。ほんとに意味がわからなかった。

 

ノベルとイラストは随時に更新されます!

プロット①
 ドラゴン警備保障、入り口~
 クマとタヌキにゾンビ化した日下部と鬼沢がバイソンと合流の後、目的の警備会社に乗り込む。
 暗くて人気が無い状態。受付、受付嬢が邪気にやられて倒れているのに慌てる鬼沢だが、あとの三人は知らん顔。
 営業の接客室も同様でみんな倒れているが、そこには触れずに先へと進む。

→トレーニングルーム~バトル開始!
 トレーニングルームには警備員たちが邪気に毒されて正体をなくした状態で待ち構える。これにいつの間にか変身、ゾンビ化していたバイソンの津川と東田が立ち向かう。その正体に鬼沢はビックリ仰天していろいろと騒ぎになる。
 ひどい荒技を繰り出すバイソンのコンビにまたしてもびっくりする鬼沢だが、修羅場を抜けられる裏の近道があるのを思い出し日下部と直接事務室へ。事務室では特に屈強な社員の二人組が待ち構える。さながらゴリラみたいな見てくれに驚く鬼沢だが、すんなりとこれを捕らえることに成功。技の名前でもめる。バイソンはバリケードをこさえて合流。鬼沢がそれなりにやることを知ると、その場に残ってゾンビ社員を止めることを申し出る。
 鬼沢と日下部が社長室へ突入!

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「オフィシャル・ゾンビ」14

オフィシャル・ゾンビ
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オフィシャル・ゾンビ 14

※↓鬼沢や日下部たちが突入したビルのフロアマップです。
  オフィスビル「ベンチャーズ・ヒルズ」フロアマップ

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オフィシャル・ゾンビ 14


 まだ見習いではあるが、鬼沢にとってはじめてのオフィシャル・ゾンビのアンバサダーとしての仕事は、かつて番組収録のロケで訪れた個人経営の警備会社に取り憑く〝害悪〟の実態調査、ないしこの正常(清浄)化のミッションであった。

 テレビ局で落ち合った同じ顔なじみの芸人にしてアンバサダーの面々と即席のチームを組んで徒歩での移動、つつがなくこの目的地に到着。

 本人がいまだ納得がいかないままに、作戦自体はあれよあれよと実行に移されていく……!

 まさかのロッククライミングよろしくで五階建ての建物の壁を生身でよじ登って、この目標となる最上階にアプローチすると言う、ベテランのおじさん漫才師コンビと二手に分かれて、こちらはビルの正面玄関から臆面もなく堂々と内部に侵入!

 かくして一気にこの階段を目的地の五階まで駆け上がったクマとタヌキ、もとい、日下部と鬼沢だった。

 普通の人間からはその姿形が見えないのをいいことに何食わぬさまで階段からフロアに顔を出すと、そこは何故かもう真っ暗闇な状態だ。

 本来ならばまだ営業中の時間のはずなのだが……?

 階段の踊り場から一本まっすぐに続く廊下は明かりがすべて消されてしまっている。外からの夕焼けは北向きの窓からは入って来なかった。
 
 どうやら窓枠全体にそれ用のシールドが施されているらしい。

 ゾンビ化したケモノ、ないしバケモノの状態だからこの視界にさして不都合はないのだが。

 それでお互いに微妙な顔を見合わせる芸人さんたちだった。

「目的地に到着しました……! 気を引き締めていきましょう。ここからはちょっと不穏な気配を感じますので……」

「なんか真っ暗だなあ? ひょっとして、定休日だったりしてやしないか? だとしたらすごい間抜けなんだけど! わざわざ階段上ってきたからちょっと身体が熱くなってきちゃったよ、全身こんな毛だらけだから!! 誰もいないなら普通にエレベーターで来れば良かったんじゃないか??」

 鬼沢のいかにも平和ボケしたタレントさんらしいのんびりしたものの言いに、対してこちらは白けた顔で応じる日下部だ。

「いわゆるセオリーですね。エレベーターなんてヘタに使って、閉じ込められたらそれこそ目も当てられないじゃないですか? 見ての通りで、あちらはもうおれたちの存在に気づいていますから。明かりを消して気配を殺して、もう臨戦態勢ですよ……!」

「なんでわかるの? ただのお休みかもしれないじゃん??」

 あんまりピンと来ていないらしい気の抜けたタヌキに、はじめ小さなため息つくクマが、仕方もなさげに本音をぶっちゃける。

「まずはじめにここに突入したって時に、強めの〝ゴースト〟が二体いたじゃないですか? ここの玄関から入って正面のエレベーターホールのあたりに? あれです。アレが実は……」

「俺があっさりと片付けてやったけどな! 必殺のグーパンチと新技のハリセンで!! すごかったろ? あれから自分なりに特訓して、ちゃんと武器になるまで鍛え上げたんだから!! あんなのもとはただのハンカチだぞ?」

「まあ、それは認めますけど。あれから鬼沢さんなりに努力していたんですね? あとあのハリセンってのははじめて見ました」

 日下部のあまり気持ちのこもっていないようなセリフにひとりだけ得意顔して、えっへん!と胸を張るタヌキのゾンビにして先輩芸人だ。

「へっへ、コバヤさんと戦った時に偶然出したアレを改良したんだ! でもあのままだと危なすぎるだろ? いろいろ考え合わせた結果、ああなった。ハリセンなんていかにも芸人さんらしくてカッコイイじゃん! あれなら致命打になんかならないし」

「でもいざとなったら切れ味鋭いカタナのようにもできるんですよね? 弱いゴーストが相手なら、あれで十分だとしても」

「やりたくない! 俺は殺し屋じゃないんだから。それにまだアンバサダーになるだなんて言ってないし。そうだぞ、おまえが勝手に話を進めているんだからな?」

「でも結果的にそうなっていますよね? いい加減に覚悟を決めてください。さっきのゴーストを退治したのも立派なアンバサダーのお仕事なんだし。でも結果から言ってしまえば、失敗でしたね?」

「は、何が?? ちゃんとどっちも一発できれいに跡形もなくやっつけたじゃん!!」

 すっかりいい気になっていたのが思いも寄らぬ指摘をされて、不服気に反論する鬼沢に、すると日下部は真顔でこれまた思わぬ事実を言ってのける。

「だからそれが問題なんです。あれはいわゆる見張り役の囮で、敵が侵入してきたことを感知するためのトラップみたいなものだったんですよ。だから本来は触れずにスルーしてしまうのがベストでした。やっつけちゃったらおれたちの存在がバレバレですからね?」

「なんだよそれ! だったらはじめからそう言ってよ!! あんなに張り切って俺、バカみたいじゃんか!? それじゃバレちゃったからこんな真っ暗にして、むしろ待ち構えているのか、この俺たちのこと?」

 おそらくはそうです、と涼しい顔で答える日下部が化けたクマは、階段からまっすぐに続く廊下の先をじっと見やる。

 これに気まずげな顔でそちらを見やるタヌキだったが、おまけテンションがだだ下がりでブチブチと文句をたれはじめるのだ。

「ああ、あの廊下の突き当たりがこの会社の入り口なんだよな。確かこの五階のフロアをそこだけで占拠してるはずだから、いかにも羽振りがよさそうだけど、まさかこんな裏があるだなんて考えもしなかった……! それにあの社長さん、そんなひとにはちっとも見えなかったんだけどなー??」

 二手に分かれて向かっているもう一方のバイソンさんたちは大丈夫かな?と心配そうな文句もこぼす先輩のタヌキに、後輩のクマはまるで気に掛けた風もなく、さっさと暗い廊下を突き進む。

「大丈夫でしょう。おれたちよりもベテランの芸人であると同時に、手練れのゾンビのひとたちですから? この先で合流できるはずです。お互いに目的地は同じな都合? この先が入り口で、その手前にひとつ脇道がありますね?」

 この中規模なオフィス・ビルの単純な構造を考えたらば、もうおおよその想像はついているのだろうが、とりあえず後ろを振り返る日下部に、しょんぼりした浮かない面を上げる鬼沢は、それからやはり想像通りの返事を返した。

「ああ、さっきのエレベーターの入り口だろ。前のロケの時はみんなでそっちからここまで上がって来たから。でもそれ以外はそっちには何もないはずだぞ? て、あれ??」

 実際に道の半ばにあった脇道をのぞき込んで、その奥にあったエレベーターの扉を確認するふたりのゾンビたちだが、このエレベーターが何故だか起動していて、今しもその扉が開かれそうになるのに、ちょっと息を飲む……!

 ピーン……!

 到着を告げる電子音と共にその扉が左右に開かれる。

 するとそこだけが光りに満たされた内部には、どうやらふたりほどの人影らしきがあるようだった。

 それがものも言わずに外へと歩き出して迷うことも無くこちらに近づいてくるのには、ひたすらに目をまん丸くしてそのさまを見つめる鬼沢だった。ちょっと腰が引けてしまう。

「えっ、誰だ? エレベーターからこっちに来るぞ??」

 余計に緊張するが、隣の日下部が不意にふっとその緊張を緩めるのに、みずからも落ち着いて見直すことでそのふたりの人影の正体をそれと悟る。

 何のことはない。

 この建物の前で別行動を取っていたバイソンのふたりだった。

 そのおじさん芸人たちがしれっとしたさまで、今やゾンビとなったクマとタヌキの後輩芸人たちの前に再び現れる。

 思ったよりも早い再会で、おまけに意外なかたちだった。

 それだからコンビの中ではボケでネタを作る担当だと言う東田が、臆面もなくしてこちらに話しかけてくる。

「ほえ、ふたりともここにいたんかい? 先回りするつもりで、すっかり先を越されてもうたんやなあ? しかもどっちも立派なゾンビさんになってもうて、なんや見違えるわあ!」

「ほんまや! でっかいクマさんとタヌキさん! ええコンビやんけ? うらやましいわあ、見た感じごっつかわいげがあって、そのまんまテレビに出てもうても人気が出そうやもんなあ!!」

 いつもの関西弁でまくしたてる二人ともが背丈的にはそう高くないので、ゾンビになった後輩芸人たちをすっかり見上げるかたちとなる。

 そう実に大人と子供ほどの違いがあった。

 逆にこれを見下ろすかたちになる現状タヌキのバケモノの鬼沢が、ちょっと呆気に取られたかんじでものを言う。

「あれ、バイソンさんたち、確かこの建物の外から侵入するって言ってませんでしたっけ? なんで中から、しかもエレベーターから出てくるの??」

 そう言って心底不可思議そうに隣の日下部に視線を移すのに、当のクマ自身はそ知らぬそぶりで気のない返事だ。

「さあ、おれに聞かれても? 本人たちに聞いてくださいよ。ちなみにエレベーターを使っているのは、おれもビックリです」

 何やらどっちらけた表情で目の前のおじさんたちに視線を落とすクマに、つられてまた関西出身の芸人さんたちをマジマジと見下ろしてしまうタヌキだった。

 そんな微妙な空気を感じたらしい東田なのだが、そのクセまた無表情にぬかしてくれたりもする。

「あいにくと壁からは侵入できへんかった。屋上はこれと言って何ものうて、仕方も無しに非常口の階段から入ろうかと思ったら、なんやおかしな気配があったもんでのう? あえてエレベーターを使ってもうたんや。ちゅうか、むしろ意外な奇襲戦法やろ?」

「わいはやめとけっちゅうたんやけどな? 使えるんやし、めんどいゆうてうちの相方が? 結果オーライやったけど、中から攻めたオニちゃんたちのほうが早かったんやな!!」

「ああ、まあ……! でもバイソンさんたちはまだ変身してないんですね? 俺ちょっと興味があったんだけど、日下部は見たことあるのか、ひょっとして?」

 またお隣のクマに向かうタヌキに、だが問われたクマ自身は、はてとその太い首を傾げるばかりだ。

「いえ、おれも詳しくは知りません。ただどちらもかなりの使い手とだけは聞いていますが? それはさておき、今は本来の任務の遂行に集中しましょう。せっかく合流したんですから、ここからは一致団結したチームワークでですね?」

 見上げる小柄なおじさんたちもこれにうんうんと同調する。

「せや、みんなで変身してもうても、ごっついのばかりじゃこんな狭い建物の中では自由がきかへんやろう。せやからぼくらは必要に応じてやらせてもらうわ。ちゅうても、きみらみたいないかにもな見てくれしたゾンビさんとはちょっと毛色が違うから、いざとなったら笑わへんでくれよ?」

「ほんまやわ! はずいししんどいわ。後輩のおまけになりたてのゾンビさんに笑われるんはの! ちゅうてもそないに捨てたもんでもないとは思うんやけどな?」

「なんか気になるな? そもそも笑えるような見てくれなのかがちょっと怪しいんだけど、前のコバヤさんみたいなえげつないものでないことを願ってやまないよ……てか、日下部、ひとりでそんなさっさと行くなよ! チームワークなんだろっ!!」

 困惑顔で考え込む鬼沢だが、そんなことはまるでお構いなしにまたずんずんとでかい図体を大股で進ませる日下部だ。
 
 また慌ててこれに追いすがる鬼沢に、その後から関西出身の芸人さんたちもぞろぞろとくっついていく。

 めでたく全員集合。

 果たしてリーダーのアンバサダーに無理矢理に引っ張られる形で、目的地の入り口へと無事、到着する一行だった。

 いざ決戦の時は、近い……!

◇         ◇


 今回のターゲットがいると目される警備保障会社の入り口は、人気がなくやはり真っ暗なのが遠目にも見てわかった。

 それでも全面ガラス張りのエントランスの自動扉はしっかりと電源が入っていたものらしく、本来ひとからは見えないゾンビの鬼沢たちにも反応して、すんなりとこの道を開けてくれた。

 とりあえず敵地のこともあり、みなが息を殺してこの中へと入っていく。

 内部はどこも照明が落とされていて、真っ暗闇だった。

 この頃には闇に目がすっかりと慣れてきていた鬼沢は、慎重にあたりの様子を見回しながら、思ったことを小声で言葉にする。

「誰もいないのかな? やっぱり定休日だったんじゃないのか? なんかお化け屋敷みたいで落ち着かないよ。この先の受付のカウンターに美人の受付嬢がいたはずなんだけど、どこにもいないじゃないか? なんか拍子抜けしちゃうし、どっちらけだな……」

 口を開くなりしょうもないことをブチブチとこぼす先輩芸人のタヌキに、先頭に立つクマの後輩がやはりいつもの真顔で冷静に返してくれる。

「そうなんですか? それは残念でしたね、というか、その受付嬢さんならちゃんとそこにいるでしょう? 見えませんか??」

 言われて途端に、へ?と目をまん丸くする鬼沢に、背後からこの様子を眺めていたベテラン芸人コンビのボケ担当の東田が、それと指を差して指摘してくれた。

「ほれ、あのカウンターの奥の方、ひとが倒れておるやろ? 足だけこっちに見切れておるがな。おそらくはこのフロア中に満ち満ちておる邪気に当てられて、気絶してもうたんやないのか?」

「おお、せやな、確かにここに来てからまたえらいこと空気がよどんでおったから、もはや普通の人間には耐えられないのちゃうん? それが若い女の人じゃなおさらやんな!!」

 驚いたことをさも当たり前みたいにほざく関西出身の漫才師コンビたちに、生まれも育ちもバリバリ関東の鬼沢は、それこそがびっくり仰天してわめいてしまう。

「ちょっ、ちょっと! ダメだろそんなの!! 助けなきゃ!? カウンターの奥だな? あ、確かにいるっ……!」

 反射的にそちらに歩み出そうとする大柄なタヌキの肩を、だががっしりと掴んだクマがあくまで冷静なままでその真顔を左右に振った。

 その彼はおまけ落とした抑揚で言ってくれるのだ。

「ダメです。そのままにしておいてあげてください。この状況では介抱したところでどうにもなりやしません。返って目を覚まされでもしたら、鬼沢さん、一体この場をどうやって説明するんですか? あと、そもそもが今のこのおれたちの姿、あのひとには見えませんよ??」

「えっ、でも……!?」

 言われてハッとする鬼沢だが、背後の太いシッポをピンと立てて、それをブルブルと激しく震わせる。

 内心の動揺ぶりがはっきりと目に取れたが、それに東田もごく当たり前な体で言ってくれる。

「せやな? 日下部くんの言う通りや。どうにもならへん。それよりもこの邪気の源たる、悪玉のグールをどうにかせにゃ……! ここの社長さんなんやったけ? 思うたよりも手強いかもしれへんで??」

 ※お笑い漫才コンビ、バイソンのツッコミ担当、津川のイメージです(^^) やっぱりビミョーなのですが、挿し絵を描いているうちにそれなりにまとまってくるのでしょうか??

「そんな……! あの社長さんとほんとに戦わなきゃならないの? なんか気が引けちゃうよ。あと受付の女の子を見捨てるのも、テレビで名の知れたタレントとしてやっぱりどうかと思うし……あとで訴えられたりしない??」

 困惑すること著しい人気タレントのぼやきに、言えばまだ若手の芸人テレビタレントの日下部、今はクマのバケモノが言った。

「今はゾンビのアンバサダーなんですから、そんなの気にしないでいいですよ。それよりも先を急ぎましょう。この先にターゲットがいると目される、〝社長室〟があるはずですから……!」

 さっさと突き当たりを左に向かう日下部に、後からいやいやでこれにくっついていく鬼沢は浮かない顔だ。

 果ては何の気無しに見回した周囲の暗がりのさまに、ひいっと悲鳴をあげてしまう。

 暗がりのせいではじめまるでわからなかったのだが、受付を左に曲がった先の接客用の応接間にも、バタバタと倒れている人影らしきがあるのに気が付いたのだ。

 まるで死んだかのように動かないそれらにどうしたものかと浮き足立ってしまう小心者の芸人だ。

 本来ならすぐさま掛けよって介抱すべきところなのだが、他のゾンビたちはまるで我関せずでそちらを見ようともしない。

 それだからまた東田が狼狽する後輩に言ってくれる。

「せやから、そないに気にしてもしゃあないわ、鬼沢くん。この場合、ほっておくのが一番で、目を覚まされてもパニックになるだけやろ?」

「え、でも、せめて救急車くらいは呼んだほうが……!」

 視線をうろうろとさせてシッポがしゅんと垂れ下がるタヌキに、もうひとりの先輩おじさん芸人もあっけらかんとぬかした。

「ええて! それで救急隊員がのこのこやってきてもうてもみんなでバタンキューやで? 被害者が増えるだけやろ。まずはこのごっつ悪い空気をどうにかせにゃ! 大本を絶たないとどうにもならへんのや、倒れてもうてるひとらには申し訳あらへんけど、それはわいらの仕事やない」

「その通りです……!」

 後輩のクセにどこまでも冷静な日下部、クマがうなずく。

「そうなのか? ほんとにいいの?? けっこう倒れてるけど、みんな死んではいないんだな? う~ん……! まあ仕方がないのか、でもこうして見てみるに、この会社ってけっこう流行ってるんだ?」

 いよいよ頭の中が混乱してなんだかおかしな感心の仕方をするタヌキに、白けた視線でこれを見上げる東田だ。

「今触れるとこちゃうやろ? それよかここの社員さん、警備会社のわりにはみんなスラッとしたスーツ姿でおって、そないにいかついこともあらへんのやな? ぶっちゃけもっと筋肉もりもりの暑苦しい制服姿の野郎を思い描いておったんやが……」

「ほんまやの! むしろ華奢で弱っちい感じやんか?」

 床に倒れている客と社員のありさまをじろじろと見ながら後に続くおじさんたちに、そこは鬼沢が説明する。

「ああ、そっちのひとたちは接客のセールスマンさんたちですよ、実際の現場で稼働するボディガードのひとたちとは違います。俺が前に来た時は、もっとマッチョなひとたちばっかりだったから。この先が社員専用のトレーニングルームになってて、そこに絵に描いたような筋肉マンたちがひたすら汗を流していたから……! ちょっと引いちゃうくらいな」

「この先ですね?」

 商談室の突き当たりにあった、スタッフ・オンリーの注意書きが掛けられたドアのノブを、しっかりと右手で持ちながら聞く日下部だが、その答えを確認するまでもなくしてあっさりとこれを押し開けるのだった。

「……!? うわっ、なんだ……!!」

 開け放たれた扉の向こうの景色、かつて見た時とはまるで違うそのありさまに、ぎょっと目を見開くタヌキの鬼沢だった。

 その先にあったものとは……!? 

               ※次回に続く……! 

 

ノベルとイラストは随時に更新されます!

プロット②
 ドラゴン警備保障、入り口~
 クマとタヌキにゾンビ化した日下部と鬼沢がバイソンと合流の後、目的の警備会社に乗り込む。
 暗くて人気が無い状態。受付、受付嬢が邪気にやられて倒れているのに慌てる鬼沢だが、あとの三人は知らん顔。
 営業の接客室も同様でみんな倒れているが、そこには触れずに先へと進む。
 トレーニングルーム~バトル開始!
 トレーニングルームには警備員たちが邪気に毒されて正体をなくした状態で待ち構える。これにいつの間にか変身、ゾンビ化していたバイソンの津川と東田が立ち向かう。その正体に鬼沢はビックリ仰天していろいろと騒ぎになる。
 ひどい荒技を繰り出すバイソンのコンビにまたしてもびっくりする鬼沢だが、修羅場を抜けられる裏の近道があるのを思い出し日下部と直接事務室へ。事務室では特に屈強な社員の二人組が待ち構える。さながらゴリラみたいな見てくれに驚く鬼沢だが、すんなりとこれを捕らえることに成功。技の名前でもめる。バイソンはバリケードをこさえて合流。鬼沢がそれなりにやることを知ると、その場に残ってゾンビ社員を止めることを申し出る。
 鬼沢と日下部が社長室へ突入!

プロット①
 ※侵入する建物・オフィスビルの名称
  「ベンチャーズ・ヒルズ」

 クマとタヌキにゾンビ(亜人)化した日下部と鬼沢が、ビルの入り口から正面突破で内部に侵入。
入り口にいた強めの邪気を放つゴーストを鬼沢がグーパンチとハリセンで退治。後に五階の階段を上がりきったところで余計なことだったと日下部に突っ込まれる。
 建物の奥にあるエレベーターホールのエレベーターではなく、あえて手前の階段を使って、一気に五階まで駆け上がる。
 五階は真っ暗な状態。
 ゾンビ化しているのでそんなには不自由しないが、相手にも警戒されていることを自覚する。
 標的に向けて進行、途中、エレベーターを使って屋上から五階に降りてきたバイソンの東田と津川と合流。
 屋上は何もないことを聞かされる。堂々とエレベーターを使ったことに、鬼沢は内心あきれたさま。