#012
↑一番はじめのお話へのリンクです(^^) ノベル自体はもろもろの都合であちこち虫食いだらけなのですが、できるところからやっていくストロングスタイルでやってます(^^;)
NFTアートはじめました!!
OpenSeaで昨今はやりのNFTのコレクションを公開、こちらのノベルの挿絵などをメインにアートコレクションとして売り出していきます! NFTアートと併せてノベルの認知向上を目指していきます(^^) 世界に発信、まだ見ぬ需要を掘り起こせ!!
#012
公海上の上空を最大戦速で駆け抜けた大型の巡洋艦は、やがてその速度を落として目標のXゾーン、戦況が混乱した戦闘海域もこの最深部へと突入する。
試験運用も兼ねた主力エンジンの回転出力を落とすと、それまで艦内にやかましく響き渡っていたうなりと振動も一段落する。
これにより無機質な電子音が鳴り響くブリッジにオペレーターの声が響くのが、頭上のスピーカー越しにもそれと聞き取れる。
みずからのアーマーのコクピットのパイロットシートに腰を据える大柄なクマ族のパイロットは、目を閉じたままでじっと耳を澄ました。
「報告! 本艦、ただいまより当該の戦闘空域に突入! 全方位索敵、高度500、エンジン出力50に低下、機関安定状態を維持、周囲の状況にこれと目立った変化は見当たりません!」
「……うむ。高度そのまま、全艦、第一次戦闘待機から完全臨戦状態に移行。取り舵20、微速前進、周囲の警戒を怠るな!」
「了解! 全艦に通達、本艦はただいまより戦闘状態に突入、各自の持ち場にて任務の遂行をされたし。繰り返す、本艦はこれより全艦戦闘モードに突入、各自、周囲の警戒を厳にせよ!!」
「全艦、フル・モード! 艦長、メインデッキ、アーマー部隊、第一、第二、いずれも発進準備OKです!」
すっかりと聞きなじんだ声の中に、会話の最後のあたりではじめて耳にするようなものが混じったが、それが先日、新しく艦に乗艦した副官の犬族のものだと察するクマ族の隊長さんだ。
※LumniaWarRecord #012 illustration No.1 ※ OpenSeaのコレクション「LumniaWarReccord」にてNFT化。ちなみにポリゴンのブロックチェーンです(^^) イラストは随時に更新されます。
「はは、こんな声してたんだ。なんかまだ堅い感じだけど、さては緊張してるのかな? 見た目まだ若い士官さんだったもんね! それじゃこっちもまだ若い新人のパイロットくんたちは、やっぱり緊張してたりするのかな?」
そう目を閉じたままに、離れた別のメインデッキでみずからのアーマーで待機している、新人の部下たちに聞いてみる隊長だ。
するといきなりのフリに、これとはっきりした返事はなかったが、ごくり、と息を飲むような気配が伝わってそれと了解する。
余計な軽口はプレッシャーになるだけだろう。
実戦を前に皆、自分のことでおよそ手一杯なのだから。
それでいいやと納得していると、頭上のスピーカーから重々しげな声が響いてくる。
「皆、聞いているな? こちらは艦長のンクスだ。第一小隊、ベアランド少尉、用意はいいか? 先行する君たちの部隊に今回の戦闘はすべて任せることになる。本艦はアーマーがまだ手薄な都合、第二小隊は艦の護衛に残しておかねばなるまいからな」
ベテラン軍人の不景気な声色に、だがこちらはしたり顔して明るくうなずくクマ族だ。
おまけ肩を揺らしてハッハと笑った。
「あはは! 了解。ぼくらやってることはイタチごっこかモグラたたきみたいなもんだもんね? 終わりが見えない持久戦じゃ、戦力しぼっていくしかありゃしないよ。第二小隊のシーサーが我慢できたらの話だけど♡ そっか、あっちも隊員が新しく補充されたんだっけ? まだ見てないんだけどなあ……」
ちょっと太い首を傾げて考え込むのに、また頭上からは別の声が早口にまくし立ててくる。
これには閉じていた両目を開けてはっきりと返す隊長だ。
「ああ、少尉どの! 第三デッキの発射口、もとい、発進ゲートをオープンにします。外から丸見えになっちまうからいざって時のために注意しておいてくださいよ! あとそちらの発進シークエンスは特殊過ぎるので、後はデッキの若い班長どのにすべてを引き継ぎます! よろしいですか?」
「ん、了解! ドンと来いだよ♡ それじゃ、アイ ハブ コントロール! 新型機のお二人さんも行けるよね?」
また左右のメインデッキ、第一と第二のカタパルトでそれぞれアーマーを発進待機させている犬族たちに問いかけた。
すると今度はどちらもしっかりとした返事が返ってくる。
「りょ、りょーかいっ!!」
「いつでも行けます! 少尉どのが先にぶっ飛んだらこの後に着いて行けばいいんですよね? でもオレたちこんなしっかりとしたカタパルトははじめてだから、ドキドキしてますよ!!」
「ハハ! じゃあ発進のタイミングはこっちに合わせておくれよ、あとこっちのドライバーは不発もあり得るから、いざとなったら冷静に各自で判断すること! もたもたしてたら敵が来ちゃうから、先行して制空権を確保することは大事だよ?」
「了解!」
新人でもこのあたりはしっかりと心得ているらしい。
そんな歯切れのいい返答に満足してうなずくと、耳元のあたりでまた別の若い青年の声がする。
発進作業をブリッジから引き継いだクマ族のメカニックマンのものだった。
「ベアランド少尉、発進引き継ぎました! リドルですっ」
ただちに正面のモニターに四角いワイプが浮き出て、そこに見慣れた若い細身のクマ族の顔が映し出される。
見慣れた光景から、デッキの管制塔の映像だとわかった。
本来はブリッジの仕事をメカニックが兼任しているのだが、そこにちょっとしたひとだかりができているのが見てとれた。
すぐ背後から物珍しげにでかいふとっちょのクマ族のベテランメカニックマンまでのぞいているのに苦笑いが出る。
「ふふっ、そんな見世物じゃないんだからさ……!」
するとこちらは真顔で物々しげな物言いのメカニックの青年が、畳がけるようにまくし立てた。
「アーマーとのマッチング完了、マスドライブ・システム、目標と照準を設定、コースクリア! オールグリーン、いつでも行けます!! そちらも体勢はそのままでフロート・フライト・システムをプラマイゼロに、発射時のショックに備えてください! タイミングはそちらに任せますが、本格的な運用は今回がはじめてなので、出力はこちらで調整、まずは最大時の半分の50でいきます!!」
「ああ、了解っ、てか、電磁メガ・バースト式のマスドライバーでアーマーをかっ飛ばすなんて、このぼくらがはじめてなのかね? 砲弾やミサイルだったら聞いたことあるけど! でもどうせだったら100でやってごらんよ、遠慮はいらないから?」
軽口みたいなことを半ば本気で言ってやるのに、如実にワイプの中のひとだかりにざわめきが走った。
おまけ若い班長の顔が見る間に青ざめていく……!
「そ、そんな! 無茶言わないでください!!」
「自殺行為だろう……!」
悲鳴を上げるリドルのそれに、画面に映らないところからベテランの艦長の声がまじる。
これに座席の右側のスピーカーからも、おそるおそるにした声が聞こえてきた。
「……てか、そんなやっかいなやり方で出撃する必要あるんですかね? 無理せず自力で飛び立ったほうがいいような?? マスドライバーって、響きからして危ない気がするんですけど」
「お、おれ、絶対に無理っ! 衝撃で機体ごとぺちゃんこになっちゃうもんっ……!!」
左右からするおののいた声に苦笑いがますますもって濃くなるいかついクマ族の隊長さんだ。
「大丈夫だよ! そんなに華奢にはできてないさ、このぼくもこのランタンも! でもあいにくとでかくて頑丈なぶんにのろくさいから、こうやってスタート・ダッシュを決めないと戦略的に優位に立てないんだ。その場にのんびり突っ立って拠点防衛してるわけじゃないんだからさ?」
「いいえ、だからって無茶はしないでくださいっ、もう十分に無理はしているんですから! 出力は50で固定ですっ」
好き勝手にはやし立てる周りのスタッフの声を押しのけてリドルが声高に宣言する。
それにもめげずにまだ食い下がるベアランドだ。
「90! いや、だったら80に負けてあげるよ♡ 機体はそっちが整備してきっちり仕上げているんだから、できなくはないだろう? でなきゃ泣く子も黙るブルースのおやっさんの愛弟子の名がすたるってもんだし!!」
「お言葉ですが、師匠だったらこんな無茶、絶対に反対してますよ! アーマーはおもちゃじゃないんだから!! やってること大陸間弾道ミサイルの打ち上げと一緒ですからね? およそ人間技じゃありゃしないっ!!」
「了解、だったら75で手を打つよ、今日のところはね♡」
「っ!! わかりました、60で行きます! これ以上は引き下がりませんからね!!」
「毎度あり♡」
やかましい駆け引きの末にワイプの人だかりが消えて、正面モニターの明かりが一段落とされる。
ただちに秒読みが始まった。
「第一小隊、発進を許可する。さっさと出撃したまえっ!」
せかすような艦長のンクスの声を合図に、スロットルレバーを全開に押し開けるベアランドだ。
「了解! それじゃベアランド、ランタンっ、こよれり当該戦域に向けていざ発進!!」
轟音と共に緑色の大きな機体が巨大な巡洋艦の発進口から射出される! 風切り音を伴って空の彼方へと飛んでいくのだった。
それから若干のタイムラグを置いて、二機の機体がそれぞれに艦を飛び立っていく。
すべてがぶっつけ本番。
新人の隊長と新人の隊員による、新型機のみで構成された異色の編成チーム、この本格的な部隊運用がはじまった。
※次回に続く……!